HipHop,R&B,Soul,Funk,RareGroove,DanceClassics,Garage,House・・・など、私が気に入っているMixTape,MixCD,その他もろもろを紹介するブログです。
DJ S@S 「Cookbook - Page #2 The Spring Time of My Life」
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 えー、今週は「独り言」の方が絶対にメインになると思い、あんまりヘビーじゃない作品を選んだつもりですが、実は凄い深くってヤラれました・・・
 これも自宅掘りになるんでしょうが、内容的には普通なレベルかと思って、一応その作品の収録曲等を調べていたら、作品の中に実は粋なテーマが隠されていることが分かり、途端にその作品が好きになってしまった自分がいました・・・

 そんな訳で、今回の紹介です!!


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 今回は、90年代にミックステープを聴いてた方なら懐かしい「DJ S@S(サス)」さんの作品の紹介です!

 このブログを始めたころに、どうやら一度だけ紹介をしてたようですが、知らない方も多いかもしれないので、改めて紹介をしますね(^0^)

 S@Sさんは、日本語ラップファンなら懐かしい「Naked Artz(ネイキッド・アーツ)」というグループでDJをされていた方で、90年代後半はグループの活動と共に、仲間達と「Undaprop Wreckordz」というレーベルを立ち上げ、自身の作品を含め精力的にミックステープをリリースされていた方になります。

 S@Sさん自体の活動は90年代初めぐらいからDJ活動を始め、渋谷CiscoでHipHopバイヤーを経て、1996年には渋谷にあった洋服店「Group in the Dark」を立ちあげ、現在は「Stillas」という洋服ブランドのオーナー(デザイナー)として活躍し・・・どちらかというと、ファッション面でHipHopを支え続けている方だと思います。

 まず、Group in the Darkは渋谷の明治通り沿いのビルの上階にあり(電力館の前のビルにもあったような?)、場所的にはあまり目立たない場所にありましたが、渋谷のBには人気なお店で、割とBoot Campっぽいミニタリー系のテイストが強かった記憶があります。
 そして、お店ではNaked ArtzのK-ONさんなども働いていたそうで、彼ら周辺のラッパーやDJが出入りしてたようです・・・記憶だと走馬党系の面子やThink Tank(現Blacksmoker)の面子が出入りしてて、S@Sさんのブログによると、当時、お店に出入りしていたThink Tankの面子が、渋谷や原宿でお客さんをナンパし、そのお客さんをお店まで引っ張ってきていったそうです・・・イイ話ですね(^0^)

 ただ、音楽面も凄い重要な方で、Group in the Darkに集まっていたDJやMCなどを束ねて「Undaprop Wreckordz」を作った流れがあり、ミックステープ自体がマイナーだった90年代中期から後期にかけて沢山の作品をリリースしていた点は大きく、Undaのテープを聴いて育った方も多いかと思います。

 Undapropに関しては、個人的にはテープレーベルとして捉えていますが、音楽事務所的な要素もあったようで、S@Sさんがどこまでやっていたかは分かりませんが、アパレル業と並行して、仲間達の音楽活動をサポートしていた部分があったと思います。
 また、このUndapropに関しては、DJ Komoriさんでお馴染みの「Sugar Bitz」の前身的なレーベルになり、日本のミックステープシーンも影から支えていた部分があり、テープ側面でも重要なお方だと考えています。
 

 そんなS@Sさんですが、今回紹介をする「Cookbook」というタイトルで自身のミックスを出し続け、影響を受けた方が多いかと思います!

 内容的にはR&B的な作品が多く、それこそSugar Bitzに通じる音楽スタイルがあります・・・つまり、DJスタイルとしてのHipHopをベースにしつつ、幅広い視点で「歌モノ」をプレイしている感じで、Komoriさん等のDJスタイルの源流がS@Sさんになるのかな~と思います。
 ブログを読んでいる限りだと、S@Sさんの音楽の原体験がNew Jack Swingのようなので、作品においては、そのNJS的な活発で爽快なブラックミュージック感のようなものが生かされた内容になり、Cookbook自体は7までリリースされていたことを考えると、しっかりと売れていた(評価されていた)テープだと思います。

 では、1は数年前に紹介したので、今回は2を紹介しますね~ 
 なお、今回はレコが揃わなかったので借り物写真です・・・あと、1の紹介記事がヒドかったので、その内、工事をしますね・・・いつの作業になるんでしょう(^^;)


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 先ほども触れたとおり、このシリーズは「歌モノ」を中心とした作品になり、今回の2では「The Spring Time of My Life」という副題があり、春に聴いて気持ちイイ内容になっています。

 まず選曲的には、ど定番な「Tevin Campbell / Can We Talk」のような90's R&Bや、あのBabyfaceが在籍していた「Deele / Two Occasions」のような80's R&Bなど、幅広い歌モノを中心にプレイをしています。
 また、結構渋い選曲が多くって、一応、リリース当時の新譜になるのですが「Whispers / My My My」のようなレアカバーや、「Eric Clapton / Change the World」のようなロック/ポップスも取り上げ、流石ですね・・・

 選曲の方向性としては、イメージとしてMUROさんのTaste of Chocolatteのような質感があり、ブラックミュージックの甘さみたいのを、4月ぐらいの「暖かさ」でまとめている感じで・・・5月の「爽快さ」まではいかない位で留めている感じが絶妙です・・・
 こういった選曲でグルーブを作る感じは、正に「Sugar Bitz / DJ Komori」的なフィーリングがあり、決してマニアックにはならず、気持ちいいポップさが適度に入っていて、イイですね・・・この作品を聴いて、やっぱりSugar Bitzの源流はS@Sさんなんだな~と思いました。

 ただ、この選曲、もっとヤラれたのが・・・大半の曲を「Babyface」関連でまとめてきてて、それを知った瞬間、この人には勝てない・・・と思いました(^0^)

 最初は全然気づかず、選曲を調べてて分かったのですが・・・Babyfaceが在籍してたDeeleに始まり、Babyfaceがプロデュースした曲(Can We Talkもクラプトンもそうだった!)であったり、Babyfaceが書いた曲のカバー(My My Myがそうです!)など・・・実は「Babyface」が裏テーマだったようです!
 Babyfaceほど、ブラックミュージックが持つ甘さを、心地よいという意味での暖かさと、決して下品にならない活発さを表現できた人はおらず・・・そういったBabyfaceの良さを見抜いて、作品として表現をしているS@Sさんの腕の確かさにはヤラれます!!


 そんな訳で、選曲の深さと柔軟さがありつつ、誰でも聴きやすい内容に仕上げていて、中々の好作品です・・・今回、このテープを、ほぼ初めて真面目に聞いた訳ですが、ガッツリとその魅力にハマってしまいました(^0^)

 S@Sさんの作品は、割と入手がしやすいと思いますので、気になる方は探してみてね!!



<Release Date>
Artists / Title : DJ S@S 「Cookbook - Page #2 The Spring Time of My Life」
Genre : R&B、Soul、Rock、Pops・・・
Release : 1997年ごろ
Lebel : Undaprop Wreckordz UWT-007

Notice : MCゲスト、CD再発
 A面、B面とも、出だしでNaked ArtzのMiliさんが軽くイントロをしています・・・フリースタイルはしていないのでご安心ください??
 また、このシリーズは極小でCD再発があるようです・・・あまり見かけたことがないので、アレですが、そちらも探してみてね!




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<独り言>

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 今回に関しては、こっちが本題になりますかね・・・いつもの「釣果報告」とは規模が違いますよ(^0^)

 もう、この紙がでたら「セールに並んだ」になる訳ですが、昨日は、いつもお世話になっているユニオン下北沢クラブ店の「テープセール」に参戦してきました!!

 先週の記事では「本祭」と書きましたが、ユニオンはゴールデンウィーク前後に大型セールを組むことが多く、テープ馬鹿な私としては絶対外せないセールなので、こういう表現をしました・・・だって、楽しみな「祭り」ですから(^0^)

 んで、今回もそうでしたが、テープセールをやる店舗が下北しかなく、いつもお世話になっているN村さんからも「今回は結構貯めたのでヤバいかも?」という事前情報を頂いていたので、それに期待をして週末に向けてムカつく仕事をこなし、モチベーションを上げていました。
 また、後で披露をしますが、今回に関しては、週中の情報更新で「とんでもないテープ」が出ることが判明し、それで更に火が付いた感じで・・・個人的には、本当に「祭り」なセールでした!!

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 そんな訳で、当日は朝の7時に到着しました・・・えっ、7時!?

 ちょっと煽りながらの説明になりますが、今回は「ほんと欲しかったテープ」が出ることになり、かつ、そのテープが明らかに争奪戦になりそうな予感がしたので、7時には到着しました・・・前日、夜遅くまで残業していましたが、日々のサラリーマン生活が役に立つ瞬間ですね(^^;)

 セールというものは、正確に書くと「運」の部分も大きくありますが、どれだけ先にお店に入って、目当てのモノを抜けるかにかかってきます・・・特に、ほんと人気なモノが出ている時ほどその要因は大きく、ゲットすることの確実さを上げる為に、とにかく他の人よりも早く並ぶことが重要です。
 特に、下北クラブ店に関しては、過去、日本語ラップ系のセールで徹夜組が出るなど、セール時の品揃えのヤバさに起因してオープン前から戦いが始まることが多く・・・今回もその様相が強いかな?と思い、こんな早朝出勤をした次第です!

 そんな訳で、現場には7時ピッタリに一番乗りし、まだ肌寒い朝の空気のもとで、家を出る前に用意した新聞紙をお尻に敷いて、写真のような光景を眺めながら待ち始めました・・・整理券が配られる10時半までの待機です・・・

 この待機も重要ですね・・・一人で待つことを見越して、ちょっと温かい格好をしたり、座る用の新聞紙を用意したり・・・家を出る前から戦いが始まってます(^^;)

 また、他に並ぶ人がおらず、一人で延々と待つのはキツイです・・・しゃべり相手がいると時間が経つのが早いですが、一人で待ち続けるのは孤独です・・・なので、昨日は一人だったら、ズーッと聞いてなかったミックステープでも聞いてようかな~と思っていました。

 ただ、今回は嬉しい待機で、私が到着した数分後には、よくセールでお会いするCさんが早朝出勤(まさにでしたねw)され、ズーッと情報交換やお話ができ、助かりました・・・同じ趣味を持つ人との話は飽きませんからね!
 そして、その後も常連のIさん、そして初めてお会いした日本語ラップWikiの主催者のKさんなど、濃い面子が集まり、ドマニアックな話に華を咲かせ、気づいたら整理券を貰い、11時半の開店になっていた感じです(^0^)

 なお、この待ち時間での談笑って凄い大切で、お互いが何を狙っているかの話をし、そこで誰がどれをゲットするのかを打ち合わせ(?)したりもします・・・

 今回の一緒に並んだメンバーは、今回もボム出品があった日本語ラップアドバンス狙いで、私の狙ってる「アレ」は狙っている方がいなかったので、私に流れそうなのが分かり、一安心でした・・・
 同じものを狙っている人が一緒に並んでいる場合、その時は「運次第での勝負でいきましょうね!」になる訳ですが、狙っていない人が後ろに数名いる状況は、私が確実にゲットできる確率が上がるので、今回ばかりは助かりました!!


 そんな訳で、オープンの11時半になります・・・私が狙っているブツを狙う人が予想してたよりも少なく(いなかった?)、かつ、整理券なしで並ぶ人が多いかな?と思っていましたが、結果的には整理券組の5名でのスタートで、そこまで鉄火場感はなく、ピースフルな開戦でした・・・

 一番な私は、目的のテープがあるところまで小走りし、速攻で目的のテープを抜き、そして、他の欲しいテープもガツガツ抜き、終わったら参加者でゲット品の交換会(これも大切!)を行い・・・万々歳なお会計でした!

 では、煽ってた「ブツ」の紹介です・・・

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 分かる人が見たら「遂に出てきてくれましたか!」になるでしょう・・・このテープも無事に私の手元に届きました(^0^)

 このテープは、あのDJ Kiyoさんが1999年に岩手県の某所で行われたHipHop系フェス「Hippon Summit」で100本限定で配られたテープで、テープ業界では「幻の一本」として語られていたテープになります。
 
 私に関しては、数年前に、このイベントに参加した地元の方がこのテープをネット上で紹介されてるのを見て存在を知り、ズーッと探してたミックステープになります・・・
 ただ、このテープ、影も形も分からずに月日が過ぎるだけで、個人的には幻どころか「本当に存在するのか?」も疑いかねないぐらい存在自体が不明なテープで、ある意味「ミステリアス」な存在でした・・・

 このテープ、結果的に岩手という場所やフェスで100本のみに配布という諸条件の元に配られたので、結果的にテープが中古市場に流れる観点においては(地元の方には失礼な表現ですが)あまり良くない条件ばかり重なり、ヤフオクを含、た中古市場では一切出ることがなく、それどころか、Kiyoさんのテープなのに情報が全くでない状況でした・・・
 また、私においてはだいぶ後になって知った情報ではありましたが、2013年に某サイトでCDでの再プレス(それも150枚・・・)があり、それで「テープが存在したこと」は分かりましたが、それが刺激になってテープが放出されることもなく、つい最近まで本当に現物があるのかが分からない存在でした・・・
 
 それが、初めて目の前に出てきてくれました・・・幻ではありませんでした!

 そして、私としては、もう、何が何でもゲットしたい気持ちが前に出てしまい、朝の7時に並んでしまうぐらいに気合を入れ、昨日のセールに臨んだ次第です・・・ホント、無事に「幻」が「現実」になってくれて、嬉しい限りです!

 もう、このレベルのテープになると「文化遺産」級のブツになるので、一生をかけて大事にして行きたいと思います(^0^)
 そして、今回ばかりは、一緒に並んだCさん、Iさん、Kさんの協力、そしてコレを仕入れたN村さんをはじめとする下北クラブ店さんの尽力があってだと思います・・・皆さま、ありがとうございます!!


 なお、このテープに関しては、もうちょっと書きたいことがあります。

 まず、このテープ、表記の通り「ジャケットなし」の内容で購入しました・・・

 実は、このテープの存在を知った某サイトでもテープ本体のみ状態(=ジャケなし)で掲載されてて、ジャケがあるかどうかも謎でしたが、個人的には「ジャケなしかな?」と思っていたので、躊躇せずに購入をしました。
 購入した金額は書けませんが、普通な方からすると「えっ、テープでしょ?」と思う5ケタですね・・・ただ、個人的には想定内の値段です・・・考えてみれば、現物を掴み取った時点で値段を見ずに籠に入れてました(^^;)

 なお、ジャケに関しては、一応、購入後に聞いた某氏からの情報によると、どうやら「ジャケなし」で配布された説の方が濃厚のようです・・・
 元の情報が、かなり信ぴょう性のある方から情報のようなので、ジャケなしが標準にしたいと思いますが、もし、ジャケがあったよ~などの情報があれば、是非、教えてください!!

 ※追記 2015/04/27
   コメントを下さったtackyさんのお話だと、ジャケはあるそうです・・・
   ただ、ジャケなしでも相当レアなそうです・・・
   なんか、喉の小骨が取れた感じではありますが、
   絶対に手に入れてやると誓いました・・・シツコイ性格なので(^^;)

 また、今回のゲットにおいては、一つだけ恐れていたことがありました・・・それは、今回の出品に当って「Kiyoさんコレクター」の方が出動されるのでは?ということです。
 
 このブログをお読みの方だと、実際にKiyoさんのミックスを集めている方もいるかと思いますが、Kiyoさんの近年のミックスCDなどは、とにかく限定で枚数が少ないモノが多く、モノによっては超高額&争奪戦が繰り広げ、コレクター間での熾烈な戦いが繰り広げられています・・・
 それがあったので、朝の7時に並んだ経緯があります・・・Kiyoさんコレクターの方には申し訳ないですが、こればっかりは譲ることが出来ないテープなので、早起きしてゲットさせて頂きました・・・すみませんでした・・・

 最後にテープの内容についてです・・・

 まだ、サラッとしか聞いてないですが、肝心な内容もかなり良く、表現でいくと「流石Kiyoさん!」といった内容ですね!
 タイトルの「End of Summer」の通り、今年の晩夏は重宝しそうです・・・ありがとうございます(^0^)


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 そんな訳で、久しぶりに「超大物」を抜かせて頂いた報告でした!

 なお、他の釣果もゴツいのが多く、アドバンス系ではHasebeさんの「Adore」(名作!)や「JB Remixes」などをゲット!
 ミックス系ではDJ Ryowさんの恐らくパーティー限定ノベルティーGore-Texのパーティー限定テープ(ジャケ違いでしたw)、そしてこれも結構探してたLarry LevanのGoldでの来日プレイのテープ(!)など、かなり良い買い物が出来ました(^0^)

 来週以降、レコのセールが続きますが、今年はDisco12inchのセールがないので、セールに関しては本腰をいれないとイケないセールはないかな??
 ただ、GWも仕事で溜まったストレスを解消すべく、どこかで掘り掘りしてると思います・・・また、面白いのが買えたら報告しますね!

 ではでは、今回はコレで終わりです~ GWまで仕事を頑張りましょう!









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DJ Cash Money 「Now & Then - In Search of Disco Breaks」
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 先週の記事で「3年ぐらい探してたレコが見つかった」的な話をしましたが、そのレコを手に入れることが出来たので紹介出来る作品です!!

 まず、この作品、MUROさんのMixCDを追っている方で、相当マニアな方なら反応するレア品ですね・・・
 ただ、値段のレアりティー以上に、この作品については内容はかなりイイので、紹介が出来るようになるまで寝かせていました(^0^)

 聴けば聴くほど凄い素敵な作品なんだけど、意外と説明するのが難しく、ちょっと書くのが大変でしたが、この作品の背景と作品の内容を中心に紹介をしたいと思います~


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 今回は、アメリカのPhiladelphiaのレジェンドである「DJ Cash Money」のミックスCDの紹介です!

 まず、本来であれば製作者であるCash Moneyの紹介を先にすべきですが、この作品がリリースされた経緯などを先に紹介したいと思います・・・
 なお、私自身が以下で紹介するファッション関連の話は、情報がなく不明確な部分もありますので、ご注意ください。

 この作品は、あのNitro Microphone Undergroundの面子が立ちあげた洋服ブランド「Nitrow」と、MUROさんの洋服ブランド「Incredible」とのコラボ商品(Tシャツ?)を発売した際に購入者特典として作られたミックスCDになります。
 リリース時期は2004年ごろのようで、Nitro自体がMUROさんのモロ後輩筋になるので、こういったコラボが出来たんでしょうね・・・

  ※追記(訂正情報)2015/04/23
    コメントを下さった豆さんの情報によると、この作品は
   「Nitrow」と「Back Channel」と「Incredible」の3コラボで、
   マネークリップとコーチジャケットの特典だったそうです。
   詳しくはコメント欄をご参照ください。
   なお、恐らくになりますが、マネークリップなのでキャッシュマネーに
   依頼をしてたようです・・・なんて粋な事をするんでしょう!!

 洋服ブランドにおける「ノベルティー・ミックスCD」については、洋服ブランドの運営者・関係者が音楽アーティストである場合、ミックスCD自体が作りやすく、かつ、そんなにコストがかからないので、今でも活用されているノベルティーだと思います。
 流石にネット時代の今となってはCDにプレスして配るところは減りましたが、こういったCDは2003年ごろから確認ができ、ブランドでいくと、Shakazombieの二人が運営してたSwaggerとか、Nitrowとも関係が近いAgito、DJ MagaraさんのMac DaddyなどがノベルティーのミックスCDをよく作っていました。

 そして、ミックスを担当するDJも、このノベルティー自体がお客さんを取り込むために作るノベルティーなので、ある程度「名前」が知れたDJを起用することが多く、国内・国外の有名DJを起用することが多かったと思います。
 例えば、音楽とファッションに理解が深いMUROさんは一番の適任者で、様々なノベルティーミックス(CDリストのノベルティーを参照下さい)を作ったり、HipHop系だとDJ Hazimeさんなんかも良く作ってたと思います。

 ただ、これらのミックスCDは、ノベルティー配布なので元々のプレス数が限られているのと、レコード掘りの世界ではなく「ファッションの世界」で配布されていたことから、レコード市場に流れてくる数も少なく、結果的に「現存数が少ない」ジャンルで、中古ミックスCD市場では高嶺の花の一つになります・・・
 特に、MUROさんのような人気DJが担当したミックスCDは、コレクターを中心に人気が高く、価格もそうですが、セールなどで出るとすぐに売れてしまう傾向にあるため、レア度を更に押し上げている様相があります。

 そういった流れから、この作品もMUROさん関連のレア・ノベルティーとして認識され、市場では結構な価格で取引されている作品になります。

 ただ、この作品については、個人的には「作品の良さ」もあり、それも後押しになってるのかな~とも思っています。
 その作品の良さについては以下の作品紹介で触れますが、その「良さ」を表わすエピソードを一つ紹介をします・・・

 この作品に関しては、この作品を聴いたMUROさんが刺激を受け、これのアンサーミックスとして「Now & Then - In Search of Disco Breaks」を作ったそうです・・・写真の右側がMUROさんがアンサーで作った作品です。
 MUROさんがヤラれ、それが理由でミックス作品を作っちゃうぐらいですから、この時点でCash Moneyのミックスが間違えなしの太鼓判を押されたようなものですよね・・・私もその話を信頼し、やっとのことで3年ぐらい前にボチボチな値段(今よりは安いかな?)で買いました・・・


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 では、この作品の製作者である「DJ Cash Money」についても紹介しましょう!

 Cash Moneyは、アメリカのNYの下にあるPhiladelphia出身のDJ/Producerで、同郷のDJ Jazzy Jeffと共にフィリーの「レジェンド」としてリスペクトされている方になります。

 最近の活動はちょっと分からないですが、元々はJazzy Jeffの元でスクラッチ技術を培い、88年のDMCを優勝するなど、いわゆる「バトルDJ」の開拓者とされる方で、Cash Moneyのトランスフォーマースクラッチや2枚使いを聴いて影響を受けた方は大変多いかと思います。
 それまでスクラッチなどの技がDJミックスにおけるエフェクト程度にしか使えないと考えられてた流れにおいて、タンテ2台とミキサーとレコードだけで別次元の音楽を作ることが出来ることを示唆したり、DJミックスにおいてスクラッチや2枚使いが楽曲を盛り上げる方法論として活用できることを示唆した点は大きく、様々なDJに影響を及ぼしたと思います。

 まわりくどい表現だったので分かりやすい表現にし直すと、スクラッチや2枚使いがHipHopにおける「魅力」の一つとして世間に広めた功績がCash Moneyにはあると思います・・・

 この限りで一番分かりやすいのが、Cash Moneyにおいては「サビ擦り(フック擦り)」の美学をHipHop業界で広めた点ではないかと思います。
 バトル活動として並行して活動してたラップデュオ「Cash Money & Marvelous」の楽曲での華麗なサビ擦りは重要で、サビをスクラッチだけで彩ることが出来ることを証明した部分は大きく、彼がいたからこそ、HipHopのサビ部分で擦りが広まったと思います・・・曲数は正直そんなには多くないのですが、EPMDのDJ Scratchと並び、サビ擦りのレジェンドですね!


 そんなCash Moneyさんですが、何かの縁があって、この作品を作ったようです・・・

 この製作経緯については、なぜCash Moneyに打診があったのかを含め、分からない部分が多いです・・・
 ただ、先日のフイナムでMUROさんと対談をさせて頂いた中で、MUROさん自身はCash Moneyのミックステープに影響を受けた話をされてて、その辺の流れもあるのかな・・・どうなんでしょう?

 ちなみに、Cash Moneyのミックステープ、数はあまり確認できませんが数本あります・・・特に、オレンジ色のオールドスクールなどはコピーが色々な所に出回り、影響を受けた方は多いかもしれません。
 MUROさんもこの辺を聴いて影響を受けたのかな・・・これもどうなんでしょう??


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 では、作品の紹介をしましょう!

 この作品は副題に「In Search of Disco Breaks」とあるように、HipHopのドラムネタになりそうな「ブレイクビーツ」において、Discoなどを中心としたブレイクを調理した作品で、個人的にはドストライクな作品です。
 ちょうど先月に紹介した「Kenny Dope / Breakbeats」と同系統の作品で、DiscoラインのBPM早めでノリの良いブレイクが多い感じですかね?

 収録曲的には、ド定番な「Incredible Bongo Band / Apache」「20th Century Steel Band / Heaven And Hell」のようなクラシックや、Disco系ブレイクでは人気の高い「Gaz / Sing Sing」、そしてGarage寄りでブレイクとしては認識がなかった「New York Community Choir / Express Yourself」など、定番も深いところも幅広くプレイしています。

 そして、この作品においては、選曲以上に重要なことがあります・・・それは「2枚使い」です!!

 もー、渋い2枚使いが炸裂しまくりでヤバいんですよ・・・当然ながら擦りや2枚使いで飯を食ってきたDJなので、それが下手な訳がないのですが、ほんとヤバいです!!
 この作品のどこを切り取っても「2枚使い」がポイントになり、その2枚使いから発せられる「熱さ」が素敵で、何度も聴いてしまいます・・・

 まず、あえてになりますが、その「2枚使い」を分かりやすく表現する意味で比較をするのであれば、この作品と同様にブレイクビーツクラシックを擦り倒した「Kid Capri / 52beats」「豪快」と捉えるなら、Cash Moneyのこの作品は「淡々と」になってしまいます・・・

 つまり、カプリのようにその曲のキックなどをゴリゴリとスクラッチしながら入れていく感じは少なく、全体的に正確無比に淡々と入れていく感じになるのですが・・・個人的に感じたのが、手数の多さもさることながら、相対的に「原曲のブレイクの良さ」を生かした2枚使いを続け、ミックス全体のグルーブで「熱さ」を表現している部分があり、そこにグッときます!
 特にDiscoのような、元々BPMが早いブレイクは、そのまま聴いてもノレる訳ですが、その良さを「更に」光らせたり、その魅力に「気づかせる」ような2枚使いだったりで・・・選曲の選球眼の良さも含めて、素敵な2枚使いです!!

 その上で更に指摘できるのが、Cash Moneyの「仕事の渋さ」で、曲をしっかりと聴かせつつ「DJミックスのストーリー性」がしっかりとあることや、2枚使い自体の「技の渋さ」があるのもポイントです!

 まず、ストーリー性に関しては、序盤はBPM押さえめな曲を中心にプレイするのですが、段々とBPMが上がってくる展開で、それに付随して2枚使いも熱くなっていく感じで・・・それこそ、実質的にピークではApacheを選択しており、それに向けて盛り上がる展開をしっかりと作っているのが上手いです!

 特に、そのストーリー性の作り方は、全体的な選曲が上向きに設定されていることに加え、選曲のグルーブを落とさない曲の繋ぎ方もポイントで、Heaven and Hellであれば、冒頭のアカペラブレイクからはプレイせず、その後の楽器などが加わったあたりからプレイし、頃合いをみてアカペラブレイクに戻して2枚をする・・・のような、ミックスの展開を重要視した原曲の構成変更もあり、グッときます・・・
 その限りにおいて、ド渋なのが、New York Community Choirが序盤にプレイされるのですが、序盤がゆえにテンションを上げないためか、あえて「ピッチ -8」でプレイしている辺りにもグッときました・・・聴いてて、もっとピッチが速いブレイクだったよな~と思って、手持ちのレコを聴いたら-8なのが分かり、これにはビビりました・・・

 そして、技ですが、これは相当渋いです・・・ある程度、こういったブレイクを擦ったことがある方なら分かるかもしれないですが、擦りや2枚のアイデアがフレッシュで、ヤラれます!!

 分かりやすい例だと、Heaven and Hellの冒頭アカペラブレイクを、次にプレイする「The Whole Darn Family / Seven Minutes of Funk」の冒頭ブレイクと交互に2枚使いをし、ファンキーに進めていく辺りが流石です・・・こういう交互2枚使いを上手く決めることが出来るのは、技師としての実力が出ていると思います。
 また、もの凄くマニアックな指摘ですが、Apacheにおいては、曲の中盤のブレイクパートで、普通なら最初のキックで擦りながら2枚をすると思うのですが、そのキックの手前のハット音で擦りながら2枚をしているんですよね・・・そのハット音がスネアの位置になるので、それで擦っていると思われますが、この辺の発想と処理が渋くって、ヤラれました(^0^)

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 そして、この説明を踏まえて紹介したいのが、Cash Moneyの地元であるフィリーのOld Schoolクラシックである「Radiance / This Is A Party (The Micstro)」を選曲した上で2枚使いをしているのですが・・・この曲のプレイは、この作品を表す上で最も重要な曲になるかと思います!

 まず、ヤラれちゃうのが、カテゴリー的には「HipHopのOld School」2枚使いをする為の「ブレイクビーツ」として捉えている点がヤラれます・・・

 HipHopって、SoulやFunkやDiscoなどのブレイクが強い曲を2枚使いをすることでHipHopにしちゃうみたいな価値観があり、その意味ではジャンルの壁がないはずですが、Old Schoolも「ブレイクビーツ」の対象にしちゃう感覚は、私自身は持ち合わせがなかったので、結構ヤラれました・・・それも、この曲、相当マイナーな曲ですよ!
 また、話の焦点は少しずれますが、ミックスの最後の方はOld Schoolタイムがあり、写真右の「Kool Kyle The Starchild / Do You Like That Funky Beat」のような渋い曲をプレイしています・・・そこでは、2枚使いをしてないですが、曲のプレイの仕方が「ブレイクビーツ」を主眼点にプレイしてて、これも面白い感覚だな~と思いました。

 この点については、先月紹介したKenny Dopeも同じような事をしてて、現地の人にとったらOld Schoolをブレイクビーツとして捉えるのは普通なことかもしれませんね・・・

 ただ、我々のような外様のフォロワーは、つい、こういったオリジナルのブレイクビーツな曲を「ネタ」として考えてしまい、HipHopは「ネタを処理したモノ」と考え、Old Schoolをブレイクビーツとして捉えない流れがあると思います・・・少なからず、私はそうでした・・・皆さんはどうですか?
 まあ、冷静に考えると、Old Schoolの曲って、バンドに引き直しをしてもらうという意味での「サンプリング(ブレイクの引き延ばし)」はしていますが、基本的には軽快なFunkやDisco風味のトラックの曲になるので、ブレイクビーツとして成立するんでしょうね・・・おかげさまで、これを聴いて、Old Schoolは私にとってはHipHopでありながら、ブレイクビーツでもあり、Discoラインとしても捉えることも出来るようになりました(^^;)

 ちなみに、この話の流れで紹介すると、個人的な憶測ではありますが、このOld Schoolの曲での2枚使いにMUROさんがヤラれ、あのアンサー作品を作ったのだと思っています。
 つまり、MUROさんの作品では、2枚使いはしてないものの、ブレイクビーツ視点でOld Scoolの曲を選曲した流れがあり、Cash Moneyのミックスを聴いた上で、ブレイクビーツが持つグルーブをOld Schoolの曲に見出してプレイをしていたと・・・私は思っています。

 んで、話をRadianceに戻すと・・・渋い技と2枚使いが最強ですね!!

 まず、この曲(レコード)については、同じトラックでA面が歌、B面がラップという構成の曲になっており、ミックスの流れとしては歌の方から入り、割と早めにラップの方に切り替え、2枚使いの嵐が炸裂しています・・・
 これも、ミックスの流れ(グルーブ)を考え、歌の方から入ったのだと思いますが、こういった展開を考えてミックスしている部分は上手いですね~

 そして、2枚・・・もー、素晴らしすぎます!

 ラップする出だしの「♪You See Now・・・」の部分を執拗に2枚使いをしたり、中間ぐらいのトラックが変調する部分を熱く2枚使いをしたり・・・高レベルの2枚が炸裂しています!!
 その技のレベルの高さは中々説明がしづらいですが、Old Schoolの曲にありがちなトラック自体のノリはイイんだけど、明確なサビとかがないので聴いていると段々ダレてしまう部分を、Cash Moneyの2枚使いでファンキーに彩っている部分が光ってて、ホント素敵です・・・
 なんでしょう、この曲のCash Moneyのプレイを聴いて、この曲の本当の良さが分かった部分があり・・・私が標榜する「DJミックスすることで楽曲が更に光る」ことを素敵に達成しています!!



 そんな訳で、あまり深く説明が出来ませんでしたが、内容もピカイチな作品です!!

 カプリのような黒さは少ないかもしれないですが、2枚使いで押しきっていく「ファンクネス」は流石で、個人的には「やっぱりHipHopって、こうあるべきだよな~」と思いました(^0^)
 ただ、内容的にはマニアックな部類になっちゃうし、それ以上に値段も入手もアレだし・・・マニアな方のみが手を出すべきでしょうか??




<Release Date>
Artists / Title : DJ Cash Money 「Now & Then - In Search of Disco Breaks」
Genre : Soul、Funk、Rare Groove、Disco、Garage、HipHop(Old School)・・・
Release : 2004年ごろ
Lebel : Incredible/Nitrow No Number(CDマトリックスはSavage-034)

Notice : トラックリストについて
 作品には曲名しか掲載がなく、アーティスト情報がありません。
 ただ、作品の紹介準備をしている過程で、個人的にトラックリストを作ったので、下記に掲載をしますので、参考にしてくださいね!

Funkadelic / Get Off Your Ass And Jam
Uncle Louie / I Like Funky Music
New York Community Choir / Express Yourself
Archie Bell & The Drells / I Can't Get Enough of You
In Search Of Orchestra / Phenomena Theme
Johnnie Taylor / Ever Ready
Radiance feat Prize / This Is A Party
Radiance feat DJ R.C. / The Micstro
Incredible bongo band / Bongo Rock
Liquid Liquid / Cavern
David Matthews / Main Theme From Star Wars
Eastside Connection / Frisco Disco
20th Century Steel Band / Heaven And Hell
The Whole Darn Family / Seven Minutes of Funk
Jerry Carr / This Must Be Heaven
Gaz / Sing Sing
T-Connection / Groove To Get Down
Pleasure / Let's Dance
La Pregunta / Shangri La
John Davis & The Monster Orchestra / I Can't Stop
Incredible bongo band / Apache
Grand Wizard Theodore / Can I Get A Soul Clap
Lady B / To The Beat Y'all
Kool Kyle The Starchild / Do You Like That Funky Beat


Notice : ジャケ違いについて

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 この作品については、明確な確証はないのですが、ジャケが2種類4種類あるようです。

 作品が「Nitrow」と「Incredible」のコラボなので、そのどちらかのマークが右下に印刷されているようで、私の所持品は写真の通り「Nitrow」の方で、プラスチックのCDケースになります。
 ネットの数少ない情報だと、Incredibleマークの方はプラスチックのCDケースではない(デジパック仕様?)のようです・・・おそらく、NitrowマークならNitrowのお店だけで配布をするみたいな分け方をしてたんですかね??

 なお、この情報、明確な確証がなく、よく分からないので、何か情報がある方はコメント欄から情報提供をお願いします・・・豆さん、この辺はどうですか??

 ※追記(訂正情報) 2015/04/23
   豆さんからの情報ですと、「Nitrow」と「Back Channel」と「Incredible」の
  3コラボにつき、3タイプのジャケ(ブランドロゴ)があり、
  Incredibleのみ、別タイプ(ポリケース?)もあるそうで、
  結果的に4種類のジャケがあるそうです・・・
  全部集めてみる猛者な方がいたら是非!(^^;)
  なお、詳細はコメント欄をご参照ください!



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<独り言>

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 こんなに長い紹介をしたのに、まだ書くんかい!と思うかもしれませんが、1年に1回の行事なので許して下さい(^^;)

 え~、昨日の4月18日は「Record Store Day」で、色々なお店でイベントやセールがあったので、行ってきましたよ!!

 まあ、先に書くと、このRSDの中心って、新譜のレコードをお店限定で販売するみたいな部分が強いのですが、そっち系は毎年食指が動くのがなく、どちらかというと中古放出のセールでお世話になっているという感じで・・・裏を返すと、私としては「いつものセール」と変わらない1日だったりします(^^;)

 ただ、こういうお祭りごとは嫌いじゃないので、私の掘りを中心に、昨日の事を紹介をしたいと思います!

 まず、初陣は渋谷のHMVで、我らのMUROさんのレコ放出があるとのことで、並んでしまいました・・・
 昨年から放出が続いており、結構美味しい思いをしているので、今回もあるだろうな~と思い参戦です・・・ただ、MUROさん狙いの人は私しかおらず、個人的にはユルいスタートでした(^^;)

 今年のRSD、新譜系商品の人気が凄くって、HMVであれば開店時に100人ぐらいは新譜を買いに並んでおり、とてつもない熱気がありました!!

 残念ながら、中古狙いの人は少なく、かつ2Fの中古セールに行く人が一番少なかったことから、場内の安全を考え、先に通してくれたことで、オープン時の熱気の全ては分かりませんが、1Fのロックコーナーはもの凄いことになってたようです・・・
 また、2Fも限定品があり、大半の人がソレ狙いで来ていたので、レジがもの凄い行列になっていました・・・サ上のアレとか、和Jazzの再発とか、飛ぶように売れてて、その列を横切って中古を視聴しているのがちょっと恥ずかしかったです(^^;)

 んで、今回の独り言の結論になっちゃいますが、お店でレコードを買っている立場としては、こんなに盛り上がるのは凄い嬉しいです!!

 ネット社会の今となってはお店に出向いて商品を買うことは非効率と思われる側面もありますが、私としては、お店に出向くことは、モノを買うこと以上に何らかの「プラス」になることを与えてくれる行為だと思っています。
 それこそ、店内を探している間にかかってるBGMで他の音楽に興味をもったりすることがありますよね・・・昨日は、今年からHMVの店員さんになった長谷川賢治さん(!)がBGMで色々なレコをプレイしてて、それにヤラれましたが、こういう何らかの「プラス」があるから、私はお店に行っているのだと思います。

 特に、今の音楽って、歌謡曲なんかがそうですが、みんなの「話題」になる曲や事柄が少ないですよね・・・それは、音楽の希少性や有難さが、ネットなどの情報化と共に希薄になってしまっていることの表れで、話題がないが故に、参加者の共通項が見いだせず、盛り上がりに欠けてしまっていることだと思います。
 
 RSDは、その「話題」を作り、参加者に会話や楽しみを与える機会があり、音楽を盛り上げるという意味では素敵だと思います・・・

 現状では音楽を作る側がそれに合わせて商品と作ることと、それらを販売する各店舗の努力をしていること、そして、それらの商品や企画に興味を持って足を運んでくれるお客さんがいることで成立をしていますが・・・正直、全体的な統一感はまだ薄い部分がある(連携したイベントがないとか、地方のレコ屋さんを巻き込めてないとか)と思います。
 ただ、こういった記念日があることで、みんなの中で「会話」が生まれることは大変イイことです・・・今後、どうなるかは分からないですが、これからも続いて欲しいです・・・ 

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 そんな訳で、HMVのMUROさん放出では、お買い得なレコを中心に抜き(Classic Exampleが100円とは!)、渋谷ユニオン、新宿ユニオン、代々木ココナッツと巡り、用事があったので早めに切り上げました・・・
 釣果は写真の通りで、新譜は一切なく、中古だけで、ボチボチな釣果だったかな~と思います(^0^)

 個人的には、代々木のココナッツさんが熱くって、今回の作品紹介で登場したKool Kyleが100円(!)で買えたり、オマケのCDが最高だったり(YOKOさんがラップするとは!)、日本語ラップのセールが蓋を開けたら激熱だったり・・・流石ですね!!

 特にボムは、日本語ラップセールの流れで出品してた「一万円をコラージュしたジャケの12inch」(写真の手前のやつ)で・・・レコ自体にアーティスト情報がないことから、お店側もアーティスト名が分からずに出していましたが、コレには衝撃を受けました!!

 このレコードは、昨年から再発がされている「寺田創一」さんの初期作で、日本のHouse創世記の80年代末に作られたレコードの一つだと思われます・・・実物は初めて見ました!!

 今回の日本語ラップの放出、明らかに「アレ系」の方からの放出で、寺田さんのレコがあってもおかしくはなさそうですね・・・当時、殆ど手売りレベルで流通してたらしいブツなので、関係者じゃないと出ないブツですよね・・・

 んで、それを象徴する訳ではないですが、寺田さんのレコに関してはイイ話があります・・・

 これらのをリリースしていたレコは、寺田さん自身が自主的にプレスをしていたそうですが、自主プレスが故に大手のレコード取次店は取り合ってくれず、結果的に、そのレコードを万引きならぬ「万置き」してたそうです・・・つまり、商品をパクるのではなく、レコード屋さんの棚に、寺田さんが勝手に自分のレコードを置いてしまう行為です!!
 きっと、プロモーション的な意味でやっていたのかな~と思いますが、これに関してはイイ話ですね・・・こういうアンダーグラウンドな精神とユーモアさにはグッときます・・・ホント素敵ですね~

 んで、内容的には、A面ではRaw Sillkの声ネタを交えたEarly Houseな感じで、Houseが一周二周と回った現在では全然イケる内容で、これはラッキーな買い物でした・・・ちょうど、寺田さん再評価の流れがあったので、もっと値段をつけても良かったかもしれないですね~

 なお、ココナッツに関しては、あの狭い店内(失礼!)に、女の子の店員さんを除き、野郎ばかりがレコを掘り掘りし、大変「男臭い」感じもあり、それはそれで良かったです(^^;)


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 そんな訳で、私のRSD報告です・・・やっぱり、いつもの「掘り報告」と違いがないですね(^^;)

 今回のRSDでは、表記のようなスタンプラリーもあり、一応、集めてみましたが、どうやって応募するのかが分からないです・・・こういった点も統一感の無さの問題点かもしれないです。

 私としては、ブログでいつも紹介している通り、恥ずかしながら「Keep on Diggin' 365」の精神で掘りを続けているので、この日だけ特別なイベントだとは思ってはいません・・・
 それこそ、レコとかを掘っていると肝に銘じないといけなことですが、結局は「運次第」なので、その運が巡ってくるのを淡々と待ちながら、掘りを進めるだけです・・・

 ただ、ただ・・・レコードや、こういった音楽文化を愛する者として、少しでもみんなが喜んでくれる日があることには大賛成・・・今後も是非、みんなの力で続けていきたいものです!!


 そんな訳で、掘り報告でした・・・

 ちなみに、私のRSDは、実は今週じゃないんですよね・・・来週の「下北での本祭り」なんですよ・・・
 どんな出物があるかは分かりませんが、事前情報だと色々と出るらしいので、これに向けて精進をしたいと思います・・・N村さん、宜しくお願いします(^0^)

 あと、下北繋がりで残念なお話も・・・昨日、遅らせながら知った情報ですが、下北のYellow Popさんが閉店されるようです・・・残念です・・・

 メチャクチャお世話になったかと言えば、そうではないですが、あのお店の独特の空気感が好きでした・・・それこそ、下北らしいゴチャマゼな店内と品揃えが素敵で、意外なレコが安く買えて好きなお店でした・・・
 
 閉店までは何度かお伺いできると思いますが、遂に「あのテープ達」を買う交渉をしないといけないかもしれないですね・・・正直、定価だと手が出なかったので、そろそろ根性を出すタイミングかもしれないです・・・そうでないと、一生かけても揃えられない訳ですから・・・
 あと、川口のYellow Popさんにも「交渉したいテープ」がありましたっけ・・・これらもそろそろ、根性を出そうかな・・・テープに関しては、愛情を持って受け取りたい(=購入したい)と思いますので、宜しくお願いいたします!!


 ではでは、今週はこれにて終わりです~




 

DJ Jerry Bonham 「Remember the Party - Celebrating the 30th Anniversary of the Trocadero Transfer」
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 え~、前回のSpinbadの記事は結構考えて書いたので、疲れてしまいました・・・書き直そうと思ったのが1年位前で、そこからレコを集め始めながら研究をし、書く内容を整理していき・・・長期な重労働でした(^^;)

 そんな訳で、簡単に書けそうな得意分野を紹介・・・ただ、これはこれで聴き込むことが嬉しい悲鳴でした(^^;)


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 今回は、アメリカのカリフォルニアにあったクラブ「Trocadero Transfer」の誕生30周年を祝ったパーティーをライブ録音した作品を紹介します!

 まず「Trocadero Transfer」というクラブは、私も殆ど知識がないので不明確な部分も多いのですが、1977年にオープンし1990年始めぐらいまで営業をしていた老舗クラブで、西海岸のクラブシーンを支えたクラブとして人々に愛されていたようです。

 特に重要なのが、このクラブは「ゲイクラブ」で、西海岸のゲイシーンを支えていた部分もあるようで、イメージとしては西海岸の「Paradise Garage」や「Saint」といった感じのクラブのようです。

 ほんと、このクラブに関しては歴史的に解明されていない部分が多く、昨年、Redbullのサイトにこのクラブの紹介記事が掲載され、それでちょっと概要が分かってきましたが、西海岸のゲイシーンで影響度が高かったクラブのようです。
 Redbullの記事とミックスの内容を聴いた限りだと、どちかというとSaintっぽい感じ(白人の方が中心)のゲイクラブと想定されてますが、ゲイの人々が自身を解放する場として機能していたのかな~と思います。

 私自身はストレートなので、ゲイの方のことを明確に説明が出来ないし、説明する資格がないと思いますが、クラブを愛する者として「ゲイ」の方の存在は大きいと思います。

 それこそ、Paradise Garageがそうですが、日ごろ隠しているゲイという心を、誰にも振り回されることなく開放する場所としてクラブがあり・・・そういった方々がクラブを支え、そして育ててくれた点は大きいと思います。
 流石に、クラブで堂々とキスしている姿を見ると引いちゃったりする時もありますが、個人的にはそういった歴史的な背景もあるし、何よりもクラブという場であれば「堂々と自分を解放して楽しもう!」という姿に影響を受け、今の自分がいるのかな~と思います。

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 話をこのクラブに戻すと、音楽側面での歴史的な再評価は不明確ですが、これだけ長い年月に渡って営業をしてた時点で影響は大きく・・・閉店後も、今回紹介するCDの元となる「トリビュート・パーティー」が開かれており、西海岸のゲイシーンでの影響度の高さが伺えます。

 ざっくりと「トリビュート・パーティー」と書きましたが、これはそのクラブやパーティーを懐かしむ意味で行われるワンナイトパーティーですね・・・
 基本的にはそのクラブやパーティーでプレイされた曲を中心に盛り上がるパーティーで、同窓会要素もありつつ、そのクラブなりパーティーのグルーブを様々な世代が楽しむ場として機能していると思います。

 Trocadero Transferの場合は、その名も「Remember the Party」という名前で開催され、今現在は開催しているかは不明ですが、今回のDJを担当しているJerry Bonhamさんを中心に運営が行われているそうです・・・

 そして、今回のCDは、2007年10月に開催された30周年記念のパーティーを収録したライブ録音で・・・なんとパーティーの最初から最後まで収録した恐ろしい作品になります!!
 内容としてはCD8枚組/総時間10時間程度で、プレイしている曲はTrocadero Transferが全盛だった70年代と80年代のDiscoを中心にプレイし・・・Disco好きには堪らないですが、聴くのが大変な作品です(^^;)

 今となってはこういうクラブプレイの音源はYou TubeやSound Cloudなどで聴けるのが当たり前の環境になってしまいましたが・・・私個人としては殆ど聴きません。

 それこそ、大好きなParadise Garageの音源などはたまに聴きますが、それが「作品」として成立していなく、聴いてても集中して聴けないので、あまり聴いていません・・・きっと、そういう音源は「その現場で踊りながら聴かないと意味がない」と思っている部分もあるからかもしれません。

 ただ、今回の作品のように、作る側が思いを込めて作品にしたものは、それなりにリスニングに耐えうる「思い」が入っており、かなり聴きごたえがあります。
 それこそLarryのミックスCDがそうですが、その看板で出す以上、その看板の良さが分かる内容にしないと失礼になってしまう部分から、おのずと良い作品が生まれるのかな~と思います。

 この作品自体、どういう経緯で作られたかは不明ですが、きっと30周年という良きタイミングに開かれたパーティーの記念として、後世に残るようにと思って作ったのかな? どうなんでしょう??


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 そんな訳で、作品の紹介です!!

 この作品は30周年記念パーティーの模様をプレイの最初から最後まで収録した作品で、約10時間ぐらいのプレイが収録されています。
 DJはJerryさんがワンマンプレイをし、実際のパーティーがどういうタイムスケジュールで行われたのかは不明ですが、夜中にスタートして朝の7時~8時ぐらいに終わるみたいな感じになっています。

 出だしは、ゲイクラブらしくクラシック(!)からスローに始まり、そこから「Roberta Flack and Dannny Hathaway / Back Together Again」からスタート・・・もー、この時点でヤラれます!!
 一応、解説しておくと、タイトルから分かる通り「また、みんなで一緒に踊ろうぜ!」みたいなメッセージを込めてのプレイですね・・・こういう感じの「愛」が全編にあり大変素敵です!!

 この作品、2007年の録音ですが、現代的なHouseは一切プレイされず、徹底的に70年代~80年代の「Disco」がプレイされ、かつ、Back Together Againのメッセージプレイのような当時から引き継がれている「クラブの伝統」を意識したプレーが素敵で、グッときます!!

 選曲的には、当時から Trocadero Transferで愛されていた曲を中心にプレイをしているようで、割と「白人中心のクラブ的な選曲」「西海岸」という点で特色が出ており、結構面白い選曲をしています。

 それこそ、NY系のレーベルよりも西海岸系のレーベルの方が多くプレイされてて、MCAであれば「Rufus & Chaka / Do You Love What You Feel」や、Casablancaであれば「Donna Summer / I Feel Love」なんかがプレイされています。
 いわゆる「Garage」みたいな黒いグルーブは少なく、西海岸らしいアッパーで爽やかな曲と、白人ウケしてた「I Feel Love」のようなユーロ~ミュンヘン系のDiscoやHi-NRG系の曲が多く、結構選曲的には勉強になりました。
 また、結構深い曲もプレイしてて、系統的には西海岸に近いスタンスのTKから「Ish / Don't Stop」をプレイするなど、選曲の深さもあります・・・この辺は、ローカルヒット的に昔からプレイされていた曲かもしれないですね。

 また、選曲に関しては、こういった今でも愛されているクラブクラシックをプレイしつつ、このクラブのもつ西海岸らしさや白人らしさなんかを交えて、かなり幅の広い選曲をしていますが、それに加え、曲をプレイする姿勢が「クラブ」として選曲している点が大変素晴らしいと思います。

 つまり、目の前のお客さんを踊らす為の選曲で、グルーブが似ている曲を繋げてプレイしたり、アッパーな曲を光らせる為に山と谷を作ったり・・・プレイとしてメリハリがあるんだけど一貫した流れがあり、聴いてて思わず踊ってしまいそうなグルーブがあります!

 これはDJのJerryさんの力量だと思いますが、一夜を使い、お客さんを自分のグルーブにハメていく感じが強いと思います・・・いわゆる伝統的なワンマンDJの良さを出し、とにかく「選曲」でコントロールしているんですよね・・・
 ゲイ的な表現になりますが、DJとして大柄な男を少女のように踊らさせるかは大変重要で、Jerryさんはコレを選曲とグルーブだけでコントロールしており・・・ゲイでなくとも踊らずにいられないグルーブは最高です!!
 

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 そして、パーティーは恐らく朝まで続き、CDでいう7枚目ぐらいから「朝プレー」になり・・・これがメチャクチャ最高です!!

 先に選曲的な話をしておくと、日曜の朝方クラシックな「Thelma Houston / Saturday Night, Sunday Morning」や、ゲイクラシックの一つである「Grace Jones / La Vie En Rose」なんかをプレーし・・・気持ちいい朝を迎えています。
 また、西海岸ゲイ界の英雄でもあるSylvester関連の名曲を朝方は多くプレイしており、「Sylvester / Here is My Love」「Two Tons O' Fun / Just Us」のような染みる名曲がプレーされ、目頭が熱くなります・・・

 朝方は、恐らくTrocaderoクラシックであると同時に西海岸のゲイアンセムと想定される曲が多くプレイされ・・・踊っている人は最高でしょうね・・・
 明日に向かって勇気を得る者や、みんなと更に一体になる者、そして悲しみではない涙を流す者など・・・一夜をかけて踊り明かした者でないと響かない選曲とグルーブで、素晴らしすぎます・・・

 私も、クラブはまだ現役で踊りに行っていますが、やっぱり夜中から踊り始め、朝を迎えた時の特別な空気感は大好きです・・・
 
 この作品では、最初から目の前にいる観客を踊らせ、その果てに辿りついた朝なので、この空気感がリアルです・・・それも、その空気感を知っている者であれば、憧れるぐらい素晴らしい朝です。
 きっと、踊っている人たち全てが「笑顔」になっている感じがしています・・・クラブプレーという杓子定規だけでは通らない世界において、DJと観客が生み出したグルーブに導かれ、最終的に作られた「最高の朝」をダイレクトに切り取っており、大変素晴らしいです・・・



 そんな訳で、やや抽象的な説明が多かったですが、かなり良い作品です!!

 特に、このパーティーが持つポジティブさや方向性が表れ、それを上手くパッケージ化されている点は奇跡的で、クラブの良さを教えてくれる作品だと思います。
 こういったパーティーのライブ音源は、ネット上には星の数ほどあると思います・・・ただ、結果として、このパーティーのように成功・・・いや、DJと観客が一体化したことで「完成」されたパーティーは皆無に等しく、かなり貴重な音源かも知れません。

 購入に関しては、一時期は中古で結構ありましたが、日本に流れてきた総数が相当少ないので、欲しい方は結構探すのに気合がいるかも?
 欲しい方は頑張って探してね~ 




<Release Date>
Artists / Title : DJ Jerry Bonham 「Remember the Party - Celebrating the 30th Anniversary of the Trocadero Transfer」
Genre : Disco、Garage、Hi-NRG・・・
Release : 2008年4月
Lebel : Remeber the Party No Number


Notice : 日本流通の経緯、本文では書けなかったこと

 まず、今回の作品を調べる中で、日本でこの作品が流通した経緯が分かったので、メモとして記載をします。
 この作品、本来はアメリカのJerryさんのサイトのみで販売をしてたそうですが、日本の某ディスコ系評論家の大先輩が個人輸入して、それをユニオンに紹介したら、ユニオンが取り扱い、日本で流通した経緯があるようです。
 当時、ユニオンでの売価は1万弱(!)で、私は手が出なかったので、忘れた頃に中古で安く買いましたが、買った方は相当気合が入っている人でないと買わないかな?

 なお、その大先輩様のサイトにも、この作品の紹介があり、今回の紹介にあたり、パーティーのことや作品が作られた経緯などを参考にさせて頂いたのですが・・・どうしても、私が書くべきではないと判断し、一点だけ本文中には書かなかった内容があります。
 それは、このパーティーがポジティブなゲイパーティーではあるんだけど、その裏にはエイズで亡くなった友人たちへの弔いがあるということです。
 大先輩様も現地の方からその話を聴いて言葉を失ったと書いておられました・・・私も、その事実を知識として知っていはいましたが、責任を持って書ける内容ではなく、今回は「クラブで踊る」という視点のみで作品紹介をおこないました。
 このエイズで命を落とされた方がいる事実は、このカルチャーを語る上では避けられない話ではあります・・・
 正直、この作品を聴いているレベルでは、本文でも書いた「最高のクラブ音源」みたいなことを思ったので、正直にそのことを書きましたが、大先輩様の指摘でその背景があることに気づき、背筋が伸びました・・・
 最終的には、無責任にエイズの話を書くわけにはいかないので、今回は「クラブで踊る」という視点のみで書きました・・・ただ、読んでいる方におかれては、この作品であったり、ゲイを含むクラブカルチャーの陰にはエイズがある(今となっては「あった」という表現になるかもしれないですが・・・)ことを認識して頂ければ幸いです。

 なお、こんな時代だから、その大先輩様のサイトのリンクをつけるべきかもしれないですが、その記事自体がCD発売時の頃なので、今のお考えとは異なるかもしれないので、リンクはしないでおきます・・・すみません。





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<独り言>

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 この流れだと、私の不謹慎な日常(?)を書くのが失礼になりかねないですが、正常でいることの大切さもあるので、久しぶりの独り言です・・・

 レコードやテープを買っていると、簡単に見つかるモノもあれば、何年たっても見つからないモノもあり・・・日ごろの掘り活動では一喜一憂をしている毎日です。
 
 特に徹底的に探しても全然見つからないモノは、いくら探しても見つからないことが多く・・・どんなにお店を回っても、そしてどんなに長い年月をかけても見つからない事が多いです・・・

 ただ、そういった「メチャクチャ探しているモノ」は変なタイミングで見つかることもあり、それは「運」と言えるかもしれません・・・今回はそんな話です。

 昨日の土曜日、上司と一緒に仕事をしてて、帰りは絶対に飲みに行くんだろうな~と思って予定を空けてたら「用事があるから帰る」と言って帰っていきました・・・こういうのは凄い困りますね(^^;)
 もー、上司の為に特に用事作らずにいて、こちらも飲む気満々だったのに・・・30半ばのオッサンがフラれてしまい、俺は何をしたらいいんだと凹んでしまいました・・・

 もう、そうなると酒を一人で飲みに行くのは気分がのらないので・・・私の場合は残念ながら「レコ屋に行く」になります(^^;)

 たまに書いていますが、私にとって「レコ屋」は、レコードなどを買う場所でありながら、なぜか心が落ち着く「癒しの場所」であったりもします・・・
 人によっては「それは違うよ!」と思うかもしれないですが、私としてはなぜか癒しの場所で・・・今回の場合は「癒し」を求めて某ユニオンに足が向かいました・・・

 ただ、昨日に関しては、癒しを求めつつも、行っても何もないよな~と思いながら足をユニオンに向けていました・・・

 なぜなら、昨日の土曜に仕事が入るのが分かってたので、先週の土曜に結構ガッツリと掘りに行っちゃったからです・・・
 ユニオンって、結局のところ、回転率はかなりイイし、毎週ごとにセールがあるので、毎週行っても在庫がある程度変わっている訳ですが、ガッツリ掘った後は流石に内容は変わらないですよね・・・

 当然ながら、どの店も殆ど在庫は動いていなく、今回の作品紹介で出したいな~と思ってたレコがあればイイかな?程度で掘ってたので、私も本気ではなく、変な話、レコをめくってるだけで癒されるので、それだけで満足していました・・・
 これはきっと重度な病気(?)なので、皆さんは真に受けないでください(^^;)

 ただ、不思議なもので、こういう時こそ「何か」が起こります・・・

 先週、何も出物がなかった某ユニオンで、告知なしでDiscoの12inchがストックされています・・・
 とりあえず、何もないだろうな~と思いながら掘り掘りしてると、目を疑いました・・・3年ぐらい探してたレコが目の前に・・・えっ、目の前に・・・

 もー、久しぶりにぶっ飛びました!

 探してたのは「Radiance / This Is A Party」というOld Schoolのレコードで、某ミックスCDを紹介したい為にかなり探していました・・・
 それもこのタイミングですから・・・上司に裏切られ(?)、そして何も出物がないはずのレコ屋という2重の苦境からの遭遇ですよ・・・これはにビビりました!

 なんか、運って表裏一体で、悪いことの真裏には良いことがあり、悪ければ悪いほど、ひっくり返った時の良いことの幅が広がるんですかね・・・
 まあ、仕事を頑張ったご褒美で、レコ神様がココまで導いてくれたのかな~とも思いますが、発見できた嬉しさと安堵感を胸にレコをレジに持っていきました・・・

 そして、もう一発、話をいれると、こういう運がイイ時は、私のレコ運だと続くことが多いので、もう一軒ユニオンを攻めたら、今回、紹介をした「Ish / Don't Stop」や、微妙に欲しかったテープと遭遇・・・運がイイ時は運に身を任せるべきですね(^0^)


 そんな訳で、レコ掘りと運を語ってみました!

 ちなみに、Twitterでは、その時の状況を実況してみましたよ・・・Kurokiさん、暗黒さん、ありがとうございます!






DJ Spinbad 「That's My Sh??!!」(改定版)
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 え~、遂に重い腰を上げて、書き直してみました!!

 私の中では「これを超えるHipHop黄金期ミックスはなし!」と考えているテープで、このブログを始めた極初期にも紹介したテープです・・・

 ただ、当時の知識が浅はかで、事実誤認をしていた部分もあり、この作品の良さを全て紹介出来ていないと考えていて・・・だいぶ時間がかかってしまいましたが、改めて紹介し直したいと思います。
 紹介するに当たり、収録曲を掘り、かなり研究した上での紹介になり、久しぶりの気合の入った紹介になります・・・やっぱりレコを買わないと分からないことが多く、レコを買う度にSpinbadのヤバさを痛感していました・・・

 また、今回の記事においては、DJミックスが「ただ曲を繋いでいるだけ」の行為ではなく、そのDJの「技術」と「アイデア」と「センス」が融合することで生まれる「音楽」であることを伝えたく、かなり細かく紹介をしたいと思います。
 久しぶりの分析モードで文字数が多くなっておりますが、耳から聞いただけでは分からないことを中心に解説し、Spinbadの良さに加え、DJミックスの素晴らしさを語りたいと思います。

 では、いつも以上に気合の入った紹介したいと思います!!



(1)DJ Spinbadについて

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 では、書き直しなので、Spinbadの紹介から始めます・・・

 Spinbad(スピンバッド)はNYのクイーンズ出身のHipHop系DJで、今現在はアメリカでの活動をベースにしつつ、世界各国を飛び回るDJです。
 持ち味であるスクラッチ&2枚使いを駆使し、HipHopをベースにしながら様々な音楽をプレイし、聞く人を確実にロックできるDJの一人かと思います。

 DJに関しては80年代中頃、彼が少年時代にJazzy JeffやCash Moneyのプレイを聞き、DJに興味を持ったようで、インタビューによると「Jazzy Jeff & Fresh Prience / Live at the Union Square」を初めて聞いたとき、自分の道(=スクラッチャー)が決まった・・・そうです。

 そして、練習の日々を繰り返し、HipHopの黄金期をしっかりと体験し、90年代中ごろより、各種ミックス作品のリリースで名を上げ、ヘッズから信頼を得た流れがあります。
 Battle系の大会などにはほとんど出てなかったようですが、バトルDJ顔負けのスクラッチ&2枚使いと、アイデア満載の選曲とミックスが出来る数少ないDJで、彼のミックステープを通して、日本にもファンが大変多かったと思います。

 また、ヘッズ以上に業界からの信頼も厚く、一時期はNYの「POWER 105.1 FM」で帯番組を担当したり、TV番組に出演したりもしてて、ガッツリと「DJ」で仕事をしてるお方でもあります。
 ここ最近、日本にいるとSpinbadの評判を聴かなかったりしますが、恐ろしいぐらい海外の各国でプレイをしてて、それだけ信頼があるお方なのかと思います・・・


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 そんなSpinbad大先生においては、彼が製作した「ミックステープ」の存在が大変大きく、SpinbadのDJ活動自体を後押しになったのは明白で・・・ほんと重要な存在だと思います!!

 まず、彼のキャリアとしては、90年代中ごろに所属していた「Cold Cutz Crew」の一員として何本もミックステープを発表し、着実に知名度をあげていった経緯があり、これらのテープにヤラれた方は本当に多いかと思います・・・

 印象的な作品だと、確実に見捨てられていた80'sの曲のみを使用してコスリ倒した「The 80's Megamix」が有名で、これでシーンに「Spinbadのテープはヤバイ!」という評判を与え、そこから彼の名声が始まったと思います。

 80'sなんかは正にそうで、Spinbadに関しては、ミックスの内容のアイデアだったり、テープの構成力だったり、他のDJよりも結果としてイルなんだけど秀でている部分が大きく、かなり意識を持って「ミックステープ」を作っていた部分があり、それが作品のヤバさに繋がっていたっと思います。
 それは、ミックステープという存在を「DJの作品」であることを意識して作っていた点が大きく、単なる消費物ではない存在として作っていた点が大きいです・・・彼の言葉を借りれば「This is the DJ Tape, Not a Compilation」に繋がるかと思います!!

 そして、当然ながら、そのイルなテープは日本にも渡り、耳の早いリスナーや尖鋭的なお店のプッシュなどがあり、着実にファンを増やした経緯があります・・・

 特に、80's Megamixは、メチャクチャ重要で、HipHopブームが始まった90年代中頃にリリースされ、HipHopじゃない曲でもHipHopに仕上げることが出来、それがメチャクチャカッコよくなることを教えてくれ・・・HipHopの本来の自由さを教えてくれた一本だと思います。
 私個人も、80'sを高校生~大学生の頃に聞いて、ユニオンで確実に100円で売っているダメレコで、ここまでカッコよくテープを作ることに衝撃を受け、HipHopの本来の自由さと、その人のアイデア次第でカッコ良くなることを知り・・・ミックステープの魅力に気づかされた経緯もありました!

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 んで、今回紹介するテープは、その日本での人気に裏打ちされて作られたテープと言ってもイイかも知れません。

 今回のテープは、あの渋谷Manhattan Recordsが企画したミックステープで、通称「2000本三部作」の最初の一本になります。

 99年4月にリリースされた作品で、既に一部では知られた存在だったSpinbadのテープとあって、2000本という恐ろしい本数ですが、飛ぶように売れ、割と早いタイミングで売り切れたテープだったと思います・・・

 ミックステープって、DJ側が主導になって作っているイメージがありますが、当時は国内でリリースする人は少なく、かつ内容が良い作品を作れるDJが少なかったので、レコ屋さん主導で作るテープも少なくはありませんでした・・・
 それこそ、同じ渋谷の名物店の一つであったCisco Recordsのノベルティーテープなんかもそうですが、お店側が積極的にプッシュや企画をして、シーンを盛り上げていた流れがあり、Spinbadもそういった流れで紹介されていたかと思います。

 んで、この作品が評判だったことから、その後もR&Bモノの「Needle to the Groove」、ダンクラモノの「The Classics」とリリースが続き・・・既にスピ中毒だった私は、どのテープも発売直後に購入し、悶絶していました・・・(^^;)

 その中で、今回の第1作は死ぬほど聞いたテープで、このテープがあったからこそ、私が今でも「ミックステープ」を愛している理由になるかと思います!!

 なぜ、この作品が良いかは、以下で可能な限り紹介をしますが・・・本当に影響を受けたテープです・・・

 このテープがリリースした頃は、大学生になりたてで、実家から遠くにあった大学の校舎に向かうのに良く聴いてたり、当時、家で飼っていた犬を散歩させるときに聞いてて・・・気づいたらその良さに気づかされたテープだったと思います。

 個人的には、この犬の散歩が重要で、ウチの犬は死ぬほど散歩を生きがいにしてたので、夜に散歩をしながら聞いてた訳ですが・・・散歩の時にミックスを聴いていると、そのミックスの世界に入りやすく、良いテープはその魅力に取りつかれてしまいます・・・
 その中で、Spinbadのこの作品は、HipHopという意外とストーリー作りが難しい題材で、内容のノリの良さをキープしつつ、心をひきつけるストーリー性が最高で・・・気づいたら、そのミックスのグルーブに乗せられ、犬も困るぐらいにノリノリになっていました(^^;)


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 そんな訳で、以下ではこの作品の良さを多角的に紹介したいと思います!!

 ただ、この作品のヤバさを紹介しようとなると、実際に聞きながらでないと分からない部分も多く、今回、私が紹介したいと思う部分の大半が、その「ミックス」を聞きながらでないと理解することが出来ない部分が多いと思います・・・

 このブログのポリシーとして、そのミックスの良さを「言葉で表現したい」という考えがあり、この時代にあり得ないぐらい音源引用をしていませんでした・・・これは、収録曲の紹介の際になるべくオリジナル盤のレコードの写真を載せていることもそうで、私の中で「掘る」という行為にリスペクトがあるので、守っていたことの一つになります・・・
 ただ、今回ばかりは、テクニカルな部分を中心に説明をしたいので、音を聴かないと厳しいな・・・と書いてて思いました・・・

 そんな訳で、今回は音源を聞きながらの紹介の方が良いと思い、自分の中の禁止事項を破って、このテープの音源をフルでアップしてみました!!

 裏の説明としては、Spinbadのサイトに、割と昔のミックステープの音源がアップされているのに、コレだけはなぜかアップされてなく、そういった流れがあれば上げてもイイかな~と思い、数年前にMP3化したデータをアップしてみました。
 今回は、初めてMixcloudに登録し、以下で紹介する説明も、そのアップした音源の時間に合わせて紹介をしたいと思いますので、聞きながら私の紹介を読んで頂ければ幸いです・・・

 なお、音源に関しては、真面目にMP3化(?)してないので、お聞き苦しい部分があると思います・・・その辺はご容赦ください。


『Side A』

DJ Spinbad / That's My Sh??!! Side:A by Mixtapetroopers on Mixcloud


01 Das EFX / Mic Checka (Remix)
02 A Tribe Called Quest / Bonita Applebum
03 Redman / Tonite's Da Nite
04 Common Sence / Soul By The Pound
05 Lords of the Underground / Chief Rocka
06 Black Sheep / Flavor of the Month
07 Poor Righteous Teachers / Rock Dis Funky Joint
08 Poor Righteous Teachers / Shakiyla
09 D-Nice / Call Me D-Nice
10 Lords of the Underground / Funky Child
11 Akinyele / Ak Ha Ha! Ak Hoo Hoo?
12 Off & On / Trends of Culture
13 Das EFX / They Want EFX
14 Marley Marl feat Craig G / Droppin' Science
15 Special ED / I Got It Made
16 Black Sheep / The Choice Is Yours
17 Mark the 45 king / 900 Number
18 A Tribe Called Quest / Scenario
19 Naughty by Nature / O.P.P.
20 Naughty by Nature / Hip Hop Hooray
21 Boogie Down Productions / Duck Down
22 Nice & Smooth / Hip Hop Junkies
23 Cypress Hill / How I Could Just Kill A Man
24 Redman / Time 4 Sum Akshun

『Side B』

DJ Spinbad / That's My Sh??!! Side:B by Mixtapetroopers on Mixcloud


01 Nice & Smooth / Funky 4 You
02 Gang Starr feat Nice & Smooth / DWYCK
03 Run DMC / Down With The King
04 Leaders Of The New School / Case Of The P.T.A. (Remix)
05 Zhigge / Toss It Up
06 Run DMC / Beats to the Rhyme
07 Boogie Down Productions / I'm Still #1
08 Ultramagnetic MC'S / Ease Back
09 Showbiz & AG / Soul Clap
10 LL Cool J / Mama Said Knock You Out
11 Public Enemy / Bring the Noise
12 Special ED / Come On Let's Move It
13 Eric B. & Rakim / I Know You Got Soul
14 Rob Base & EZ Rock / It Takes Two
15 Super Lover Cee & Casanova Rud / Romeo
16 Slick Rick / I Shouldn't Have Done It (Blend)
17 Big Daddy Kane / RAW (RAW '91)
18 Eric B. & Rakim / Let the Rhythm Hit'em
19 LL Cool J / Jingling Baby
20 EPMD feat LL Cool J / Rampage
21 Leaders Of The New School / Sound of the Zeekers
22 Slick Rick / Mona Lisa
23 Biz Markie / This Is Something For The Radio
24 Public Enemy / Welcome To The Terrordome
25 Showbiz & AG / Party Groove
26 Pete Rock & C.L.Smooth / Creator
27 Big Daddy Kane / Warm It Up, Kane
28 Chubb Rock / Treat 'em Right
29 De La Soul / Saturdays
30 Black Sheep / Strobelite Honeys





(2)作品について

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 では、作品の紹介にいってみましょう!

 とりあえず、A面から聞き始めると、最初にザラザラとしたノイズが入ったり、最初のDas EfxからATCQへのミックスで、ありえないぐらい音質が変わったりしてますね・・・
 一応、補足をすると、ノイズは私の録音のせい(音量の調整をマニュアルでしていた)で、後半はSpinbad先生のイルマティックなセンス(?)の賜物でしょうか・・・以下、Spinbadのイルな部分を中心に、深く話をしていきたいと思います!!

 この作品は、先ほども触れたように、HipHopの黄金期と呼ばれる「80年代末~90年代初期」の曲で選曲をした作品で、人によっては「HipHopクラシックミックス」「黄金期ミックス」と呼ばれる作品になります。

 多分、今となってはこの点も指摘しないといけないと思うので、この点から紹介しましょう・・・

 黄金期という言葉を説くと、その文化や音楽が「一番栄えていた」時期をさす言葉になり、HipHopにおいては80年代末~90年代初期の楽曲を指すことが多いです。
 事実に即すると、売上的には00年代初期とかの方があるのですが、HipHopという音楽が持つ「ノリの良さ」が一番色濃く出た時期の曲がこの時期に該当し・・・何年経過してもその曲の魅力が古びない、いや古びないどころかその魅力に勝てない曲達が多いので、敬意を表して黄金期と呼んでいる流れがあります。

 それこそ、上の写真に上げた「Shobiz & AG / Party Groove」「The 45 King / 900 Number」のような曲は、未だに聞けば、即座に電気が走って首を振ってしまうような曲が多く・・・こういった曲を中心に選曲をした作品になります。
 
 もうちょっと深く説明すると、この時期のHipHopは「サンプリング」を中心に楽曲製作をされた内容で、サンプリングという行為が進化してた途中ぐらいの時期なので、とにかくノレて、インパクトのある使い方をすることが多く・・・他の時期のサンプリングしたHipHopよりも「ノリの良さ」や「黒さ」が目立つ楽曲が多いかと思います。
 つまり、70年代とかのファンキーなブラックミュージックの良さを、サンプリングという形で引き継いだ時期の曲とも言え・・・難しいことを考えずに、体が反応してしまう曲が多い時期かな~と思います。

 そんな曲達をSpinbad先生がミックスし、とてつもないグルーブに仕上げているのがこの作品になります。

 いつもの紹介に従って、先に「選曲的」な話をしておくと、先ほども紹介したShowbizや45kingのようなド定番をプレイしつつ、全体的には「割と渋い曲」を多く使って、ドファンキーなミックスに仕上げているのが、この作品の特徴になると思います。

 それこそ、トラックリストを見ただけで、HipHopに詳しい方であれば「渋いな~」と思うでしょう・・・律儀にA面から聞き始めてた方なら、聞こえてきたであろう「Lords of the Underground / Chief Rocka」「Brack Sheep / Flavor of the Month」などは選曲的に「いいところを突いてくるな~」と思う内容ですよね?
 この手の黄金期ミックスを作る時、その作るDJの趣味とかによって大きく左右される部分が多いのですが、この作品においては、とにかく「ノリの良い曲」を有名無名を問わず選曲をしている感があり、結果的にこういった渋い選曲になっているのかな~と思います。

 ただ、今回においては、選曲面の話は実は二の次で、以下で紹介する「スクラッチと2枚使いで奏でるグルーブ」「オリジナリティーに富んだミックスのアイデア」、そして「選曲のグルーブの高め方」が、単純なんだけど複雑に織りなし、結果として生まれる「作品のストーリー性」が重要になってくると考えます・・・

 そのため、選曲の話は、かなり渋いところを突いているのですが、今回は深く追求する必要がないかもしれません・・・
 むしろ、使用する楽曲の「使い方」と「配置の仕方」が絶妙で、これがSpinbadのセンスの良さになってくると思います!

 以下では、それらの点をもっと深く掘り下げていきたいと思います。



①スクラッチと2枚使いで奏でるグルーブ

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 A面から律儀に聞き始めた方なら、既にスクラッチや2枚使いが半端無いことに感じつつあるかと思います・・・
 ただ、一聴しただけでは理解できない部分があると思うので、詳しく紹介をして行きたいと思います。

 Spinbadに関しては、いわゆるターンテーブリスト出身と言っても過言ではないぐらいスクラッチ系のスキルがあるDJで、その上でアイデアと選曲力に優れているという説明が一番分かりやすいかと思います。
 なので、説明をしていくにあたり、A面(Side A)を例にとってスクラッチ系の技の解説をしていきたいと思います。

 では、例示としてA面13:40ぐらいから始まる「Lords of the Underground / Funky Child」から「Akinyele / Ak Ha Ha ! Ak Hoo Hoo ?」の流れを紹介しましょう・・・ある程度、スクラッチとかが分かる人なら「ヤバい・・・」と思うラインでしょう!

 まず、前曲の「D-Nice / Call Me D-Nice」でも展開良く2枚を行い、ラップが上手く切れてインストになった部分から、Funky Childの華とも言えるイントロホーンを華麗に擦り、そのグルーブとテンションを引き継ぎつつ、Funky Childに流れていく流れは、いつ聴いても悶絶です・・・

 個人的には、Spinbadのスクラッチは、まるでチャンバラ映画で、大人数の悪役を斬って斬って斬りまくっていくような、リズミカルでありつつ、聴いていると次第に引き込まれ、結果として大変気持ちいいグルーブを出せるDJだと思っています。
 なんでしょう、擦っているだけで、擦っている音に「表情が生まれている」感じで・・・まるで、ジャズミュージシャンのインプロゼーション・ソロを聴いているような擦りで・・・ほんと引き込まれます!

 ちなみに、この部分、深い話を入れておくと、あえてインストのホーンイントロで擦って、そこから直ぐにラップが入っている本編にスクラッチカットインで繋いでおり、最高です・・・楽曲の方だと、ホーンイントロにラップが入っていて、この流れだと合わないので、インストから擦ったと思われます。


 また、次の曲のAkinyeleも、繋いだ瞬間から勢いを止めずに始まるスクラッチ込みの2枚使いの激熱さといったら・・・最高ですね!!

 Funky Childから、確実にノリをキープしつつタイミング良くカットインしてくる部分もヤバいですが、この2枚使いスクラッチの「キレキレ感」もSpinbadの魅力の一つだと思います。
 先ほども指摘した、スクラッチに多彩な表情がありつつ、とにかくスピーティーに斬っていく様は気持ちいいですね・・・これも、チャンバラ映画に例えると、何十人もの敵役が襲ってくるシーンで、敵の攻撃を冷静に交わしつつ、スピーディーに斬っていく感じですね・・・
 その上で、Funky Childから続く、ファンキーなグルーブを一切落とさないどころか、Akinyeleに繋いで擦ることで、更にグルーブのスピード感を増やしている辺りも流石です!!

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 そして、今度は、話の流れから「2枚使い」をもう少し深く掘り下げたいと思います。

 先ほど、スクラッチに「表情がある」みたいな表現をしましたが、2枚使いにも該当し、表情があるどころか、2枚使いをすることでプレイした曲の印象が良い方向で変わる2枚使いが多く、ヤラれます!!

 例えば、先ほど説明したFunky Childの前の曲である「D-Nice / Call Me D-Nice」であれば、前曲からノリをキープしつつ、スパッとカットインし、そのまま2枚使いでグルーブを高めています・・・
 また、13:20のところで「♪Taking out you suckers and you don't know how I did it♪」というラインでもの凄い2枚使いを簡単に決めてます・・・

 また、D-Niceはかなりマイナーな曲なので、少しメジャーな曲であれば、23:45から始まるMarly Marl全盛期のクラシック「Marley Marl feat Craig G / Droppin' Science」であれば、ド頭の「ゲ、ゲ」という擦りフレーズを巧みに2枚とスクラッチを交えて、昇華させていきます・・・
 「ゲ」の2枚使いのスピードの速さもさることながら、スクラッチの強弱とタイミング、そして素晴らしいアイデアでメロディーのようなグルーブを作り、 Droppin' Scienceのブレイクの良さを光らせています!

 では、少し解説をしましょう・・・

 まず、Spinbadの2枚使いに関しては、スクラッチと同様にバトルDJ顔負けなスキルがあり、相当上手いと思います・・・特に、D-Niceの2枚使いは、早いジャグリングをしつつ、2枚使いをするポイントをずらしていき、曲のラップとドラムを効果的に出しているプレイが凄すぎです!

 恐らく、こういった技の部分って、聴く側がスクラッチなり2枚使いが出来ないと理解できず、分からない人だと「なんか凄いな~」で終わってしまいますよね・・・私も凄いスクラッチなどが出来るわけではないですが、Spinbadに関してはかなり上手いと思います。

 ただ、ここで指摘したいのが、その「上手い」部分を超えて、Spinbadの2枚使いはDJミックスにおいて「プレイした曲を光らせるために効果的に使われている」点だと思います。

 2枚使いって、結局はプレイする曲の元々の構成を「改ざん」する行為で、それが2枚使いの醍醐味なんだと思いますが・・・プレイの仕方によっては、元々の曲を良くすることも悪くすることも内包した行為だと思います。
 まあ、単純に2枚使いが下手だったら悪くなることの方が多いかと思いますが、スクラッチや2枚使いに自信のあるDJ程、その技の精度に注目が集まりがちで、プレイする原曲の存在感を消してしまうこともあり・・・上手ければ良いとは言い切れない行為かな~とも思います。

 その限りにおいて、Spinbadの2枚使いは、プレイする曲との「融合っぷり」が半端無く、2枚使いをするだけでプレイした曲が良くなる部分が大変多いと思います!

 その一例としてD-Niceの曲を例にした訳ですが・・・先ほど指摘した2枚使いをズーッと聴き続けると、元々の曲に入っているかのような融合っぷりで・・・逆に原曲を聴いて違和感を覚えるほどの融合っぷりだと思います!
 また、 Droppin' Scienceにおいては、頭のブレイクだけで1曲を作り上げて別の曲(原曲を更にカッコよくさせるリコンストラクトの意味で)に仕上げており、融合どころか進化までさせてしまっています!!

 DJプレイの醍醐味は、プレイの仕方やスクラッチ&2枚使いをすることで、プレイした曲がカッコ良くなるのが重要で、その有機的な実例の一つだと思います・・・D-Niceがこんなにも光るとは思わないですよね!!



②独創性に満ち溢れたアイデアの数々

 Spinbadに関しては、パッと聴くと「もの凄いスキルがある人だな~」と思う方が多いかと思います・・・

 それも間違えではないのですが、そのスキルの裏側にはSpinbad独自の「アイデア」が多彩で、これがあることでミックスを更に深めています!
 難解な部分もありますが、総じて「実はシンプル」な部分も多く、Spinbadが「スキルのDJ」ではなく「アイデアがある上でスキルがあるDJ」であることを紹介したいと思います!!

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 まず、比較的分かりやすいアイデアから行きましょう!

 引き続きA面で、「Black Sheep / The Choice Is Yours」をスピーディーに2枚使いを入れながらガンガン盛り上げ、定番の3バース目に入る直前(28:25~♪Pick it up、Pick it up・・・のところ)で谷を作ってスクラッチカットインを入れてくるのが「Mark the 45 king / 900 Number」です!
 Black Sheepで作ったグルーブを更に引っ張る展開の作り方が上手く、900に入った瞬間の「首の振らせ方」は上手いですね・・・これはグルーブを繋いで行くための「繋ぎのアイデア」でしょうか?

 ただ、個人的には、この次の繋ぎの方がグッときます・・・

 「A Tribe Called Quest / Scenario」に繋いでいくのですが、900が4小節経過したところでScenarioの「♪Here we go Yo~」をカットし、段々と擦りを増やしながらこのフレーズを足していき、最終的には900を切って、そのフレーズのトランスフォーマーでScenarioに流れるという展開です。

 まず、この部分は、実は意外とプレイするのが難しい900 Numberを生かす措置だと思います・・・900って、カットインなどでボムらせると速攻性のある曲ですが、ダラダラとプレイすると途端にグルーブが萎れてしまう曲だと思います。
 その意味で、早い段階でScenarioのフレーズを擦ることでバウンスするグルーブを維持しているかと思います・・・これは「曲を生かす為のアイデア」ですね。

 また、Scenarioのプレイの仕方も上手く、これも「曲を生かす為のアイデア」が光っています・・・

 Scenarioって、意外とプレイするのが難しい曲で、頭のメロディーフレーズからブっこむのなら、先ほどの900と同じように、グルーブに谷を作ってブっこむしかないですよね・・・
 また、Spinbadのように「♪Here we go~」の部分から入れていくのであれば、カットインにしろ、ミックスにしろ、合わせる曲のグルーブとメロディーが合わないと、意外と入っていかない曲だと思います。
 その中で、Spinbadは後者の方法を取った訳ですが、先ほども触れた900の良さを光らせる措置を取りながら、Scenarioに効果的に繋げるようにし、さらに繋げたScenarioも頭からバウンスするように設計されたのが、この繋ぎになると思います!

 この一連の流れ、僅か1分30秒の間(!)なのですが、プレイした「曲を生かすアイデア」も、そしてその橋渡しとしての「繋ぎのアイデア」も溢れた部分で、とにかくグルーブを落とさないプレイが分かると思います。

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 ではでは、他のアイデアも説明しましょう・・・ずーっとA面ばかり説明してたので、そろそろB面でも紹介をしましょう!!

 Spinbadって「言葉使い」が異常に上手いのもポイントで、これもアイデアに溢れている部分かと思います。

 分かりやすい例として、上の「LL Cool J / Jingling Baby」から「EPMD feat LL Cool J / Rampage」への繋ぎで紹介してみましょう・・・タイムコードはB面の29:05あたりです・・・
 
 まず、結果的にどう繋いでいくかというと、それぞれのサビを上手く活用した繋ぎで、LLの「♪jinglin baby, Go 'head baby」とEPMDの「♪~~slow down baby」において、LLの「(Go 'head) baby」の部分を、EPMDの「(slow down) baby」に差し替えて、サビ終わりにEPMDに流れるという展開です!
 
 こうしたラップなりサビなりで、同じ言葉や語感が近い言葉を利用して次の曲に繋ぐ術は、このB面で強く爆発しており、個人的にはこのLL→EPMDの部分が最強だと思います!!
 この部分は、更に付け加えると、EPMDに曲が変わったら、LLのバース(2バース目)に繋がっているのにもグッときますが、結果的には「言葉を使ったアイデア」に加えて、先ほど説明した「曲を生かすアイデア」「繋ぎのアイデア」も含まれており、最強です!!

 理由を説明すると、まず、Rampageの繋ぎの悪さを、いかにプラスに持っていくかがあると思います・・・

 Rampageって、先ほどのScenarioと同様に、イントロに印象的なフレーズがあり、それで突っ込むのは上手くやれば容易いが、ビートから繋ぐのが意外と難しい曲だと思います・・・また、DJ Scratchの最強な擦りから繋げるのも難しいですね。
 これはEPMDの殆どの曲に言えるのですが、私の考えだと、ラジオやライブなどで頭から曲をプレイする前提で作られているため、意外とDJで繋ぎにくい曲が多いと思います・・・EPMDのヒット曲であれば、Crossoverはまだプレイされますが、このRampageやHeadbangerって意外とプレイされないのは、EPMDの繋ぎの悪さがあるからだと思います。

 その中で、いかにグルーブを繋げるかという課題に、Rampageのイントロを使わずに、先ほど説明した「サビの言葉」で繋ぐ方法で対処しているのですが、奥深く聴くと細かい技が分かり、結果的にグルーブを生かした繋ぎを行っています。

 例えば、Rampageのサビと言えば、DJ Scratchの最高な擦り(フック擦りの最高峰ですよね!)がある訳ですが、それを上手く避けて「~(slow down) baby」の部分を使ってるのにはビビりました・・・実はグルーブを繋げるという意味では、Scratchの擦りは「壁」になってしまい、それを上手く避けてミックスしています。
 また、LL側も配慮があり、あのサビの部分だけ上ネタがなく、ビートのみになっているので「グルーブの谷」が出来てるんですよね・・・おそらく、上ネタがあるところで同じことをしても、音がぶつかってしまうのもあるし、一度グルーブを落として、Rampageに繋いだ時の爆発力を生かす為に行っていると思います。

 アイデア的な話は以上にしますが、最後にもう一つ指摘を・・・

 説明をした900→Scenarioも、LL→EPMDも、文章の量だけみれば「複雑なのかな~」と思いますが、実はかなりシンプルな技ではあるかもしれません。
 Scenarioの擦りは真似が出来ませんが、発想したアイデアは意外と単純です・・・Spinbadの場合、以前力説した80's MegamixでのManeater2枚使いもそうですが、意外とシンプルな方法なんだけど、それが最高に光り輝くようなDJプレイをしています・・・この点もSpinbadを語る上では外せません!!

 なお、言葉遊び的な部分だけだと、更にありますね・・・それは、次の話してちょこっと入れておきます。



③グルーブの作り方の上手さ

 次は①と②でも断片的に紹介をしていましたが、Spinbadに関しては曲を繋いでいくことで生まれる「グルーブの良さ」が異常に良いのが素晴らしすぎます!

 ①と②の説明において、曲と曲を「繋ぐ」という部分では、必ず前の曲のグルーブを繋いだり、次の曲のグルーブを引き延ばす為の措置が取られていると説明しました。
 そして、この観点で数曲を流れで聴いてみると・・・全てが繋がっており、曲と曲をかけ合わせることで生まれる効果を最大限に発揮していると思います。

 以下では、①と②の説明で足りなかったことを捕捉しつつ、そういった曲をミックスしたことで生まれる「グルーブの良さ」を紹介します。

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 それでは、この話はB面で行いましょう・・・ちょうど、ド頭からの部分なので、一番分かりやすいかと思います。

 僅か5分ぐらいの流れなので、とりあえずB面の頭から聴いてみてください・・・

 どうですか、かなり早い展開で曲が進んでいきますが、とにかく「ノセられちゃう展開」になっていますよね・・・
 
 多分、このテープが好きな方だと、この部分の展開の良さが印象的だと思う方が多いですよね!

 実質的に写真の4曲だけで構成していく流れなのですが、気づいたらSpinbadの流れ(グルーブ)に乗せられちゃう展開は素晴らしく、Spinbadの良さが分かる部分かと思います!!
 ほんと、気づいたらその流れに乗せられてしまう部分で、細かいことを気にしないでも楽しめるミックスになっていますが・・・背景には相当スキルとアイデアがつまっていますので、その点も加味しながら紹介をしたいと思います。

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 まず、1曲目は「Nice & Smooth / Funky 4 You」から軽快にスタートするのですが、ド頭から渋い事をしてます!!

 曲の後半にあるSmooth Bのパートである「♪His cuts ~」という言葉から軽く擦り、その部分からミックスしはじめ、頃合いをみて勢いのあるGrag Niceのパート(1バース)に戻し、曲を走らせます・・・

 ここの部分から、Spinbadのアイデアが炸裂してて、「♪His cuts ~」の部分を擦ったり、その直後の歌詞で「♪Teddy Tedd is gonna make it real funky for you」のTeddy Tedd(Awesome 2の一人/お目付役でもあり、バックDJを担当してた人)の部分を「Spinbad」という言葉に差し替え、そのままGreg Niceのパートになだれ込みます。

 まず、言葉遊び的な指摘だと、「♪His cuts ~」の部分を擦っている時点で「ヤツが擦る」みたいな意味にしており、そのまま、Greg Niceのパートになる前の部分も、その部分を受けて「Spinbadはお前に本当のファンキーを与えてやる!」みたいなライムに変化させ、本編に流れ込む構成を取っています。

 ミックステープの父であるKid Capriもそうでしたが、Spinbadもこういった「言葉づかい」はホント上手く、ヤラれます・・・

 「♪His Cuts」の部分もそうですが、強調したい言葉をあえて擦ったり、自分の名前を入れて、歌詞の意味を自分に手繰り寄せたり・・・歌詞が分かる英語圏のDJだからこそ出来る業であり、聴いている人を意味だけで引き込んじゃう部分もあり、間違えないです!!
 
 そして、そいうった言葉の意味を出しつつ、実は「スピード感」をつける為の構成になっているのも注目です。

 この曲のオリジナルを聴くと、じつはイントロからGreg Niceのファーストバースまでがあまりシマリのない展開で、Spinbadとしては、最初っからトップギアで行きたいので、最初に「♪His Cut~」の部分を持って来て、そこからGreg Niceのパートに戻す構成にしたのだと思います。
 つまり、実質的にビートレスなイントロを利用せず、最初っからノレる展開を用意して、Greg Niceのパートでトップギアに入るように「曲の構成」を変えているのが、この部分です。

 この作品においては、そのスピード感(=グルーブ)を増す為に、2枚使いやスクラッチを入れたりしてるのですが、この「構成変更」も多用してて、メチャクチャ効果が発揮されています。
 ①のスクラッチの部分で紹介したFunky Childの入り方もインストからオリに入ってきたりしてましたが、その曲を良くするための「構成変更」は多用してて、これもSpinbadの魅力になっています。


 んで、Greg Niceのバースが終わらない所で、大胆に「Gang Starr feat Nice & Smooth / DWYCK」にカットインし、Greg Niceのパートに繋ぎ、スピード感を維持したまま、ミックスが進みます!

 まず、Greg Niceのパートで繋いでくるアイデアもありますが、カットインの時点で渋くって、DWYCKにおいてPremierがGreg Niceの名前を擦ってる部分の元ネタからカットイン・・・まるで、カットインした後に、終わった曲の方で擦っている感じもあり、構成的に上手いですね。
 
 また、ここでもイントロブレイクを使った2枚使いを披露するのですが、表情の付け方が絶妙ですね・・・僅か15秒ぐらいの間に計3回の2枚使いをしていますが、全て違う部分で擦ってて、スピード感を増し方が上手すぎです。
 特に、2回目のスネアでの入り方が予期せぬタイミングで入れてくるので、聴いてる人の背筋を伸ばすような効果があり、2枚使いで聴く人を引き付けちゃうあたりは上手すぎです・・・

 ここまで、僅か2分(!)ぐらいの間でしたが、これほどまでに技とアイデアが詰まっています・・・そして、その技とアイデアが、選曲のスピード感(グルーブ)を増す為の措置であったことが分かります。
 なんでしょう、最初っから「首を振らす」為の展開にしてるんですよね・・・そう、ガン上げする為ではなく、首を振らして次への展開を考えた構成だと思います・・・

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 そして、説明はこんなに長いのに、経過は約3分、やっと3曲目です・・・

 Greg Niceのバースの最後の「♪Peace out Premier take me out with the fader」の「Peace out Premier」の部分を「Hey Yo ! Spinbad」に差し替えて、次の曲の「Run DMC / Down With The King」にカットイン・・・ここの展開も素晴らしいですね!
 
 まず、言葉的には「よう!Spinbad!(ミキサーの)フェーダーを切って、次の曲にいこーぜ!」みたいな言葉にしたと同時にカットインして次のRun DMCにいってるのが渋いっすね・・・ほんと、言葉の使い方が上手いです!
 ここで指摘するのも変なタイミングですが、A面は後編集はほぼなしのガチンコミックスですが、B面はオンタイムのミックスで出来ない事のみオーバーダビングしてて、こういった声乗せは後処理です・・・でも、そのセンスの良さと融合っぷりが比類しません!!

 そして、グルーブ的な話も重要で、DWYCKで散々首を振らせておいて、そのグルーブを維持しながら、ProduceをしたPete Rockらしい首の振らせ方にシフトアップさせているのも上手いですね・・・

 最初の2曲は、ほぼベースラインやドラムラインで引っ張ってた曲ですが、3曲目ではベーストラックは同様の引っ張り方を含みつつ、上ネタのホーンが引っ張りをプラスにし、もっとグルーブを引っ張る展開に急シフトさせてて上手いと思います。
 淡々と首を振らせてたのが、この曲でカットインするだけで、盛り上がりのグルーブをステップさせており、ここはSpinbadの「選曲の組み立ての上手さ」が出ていると思います!!

 この項では「グルーブの良さ」として説明をしていますが、その根幹にあるのがSpinbadの「選曲の組み立ての上手さ」になります。

 Spinbadのミックスは、プレイしている曲を2枚使いやスクラッチで彩ったり、次の曲にミックスする際の繋ぎ方だったりで、曲単位でノリの良さをキープしている感が強いのですが、実は、それにプラスしして、戦略的に曲を選曲して、それを組み合わせていくことで、ミックスのグルーブを高めている部分が非常に強いです。
 分かりやすい表現だと、HouseのDJのように、数曲単位で流れを作っていく方法論ですね・・・例えば、ある曲を盛り上げる為に、その数曲前から盛り上げる為の「階段」みたいのを仕込んでいく選曲で、曲と曲を繋ぎ合わせることで生まれるグルーブを生かしたミックスになるかと思います。

 この点、結構面白い点なので、もう少し説明を加えましょう・・・

 HipHopって、クラブプレーとミックス作品とではDJの方法論が多少異なりますが、割と「ブっ込み」な盛り上げ方が主になるのかな~と思います。
 例えば、ある盛り上がる曲をプレイする際に、ある程度グルーブを落とし、お客さんを焦らした上で盛りがる曲をブっ込むみたいなことはしてて、それは先ほど説明したHouse的な盛り上げ方とほぼ大差はないですが、その「階段」の勾配の差には開きがあると思います。
 つまり、Houseは割と緩やかな勾配とすれば、HipHopはかなり急な勾配のようなイメージで、その点においてはHipHopのミックスは選曲の積み重ねで勾配を作ることはあまりない(意識していない)かと思います。

 話をSpinbadに戻すと、そういったHipHop的な階段の登り方も当然しているのですが、House的な階段の登り方も同時にしており、これがSpinbadの魅力です!!

 その上で、このB面序盤のミックスに話を戻すと、グルーブを一段高める意味で選曲したRun DMCの後は「Leaders Of The New School / Case Of The P.T.A. (Remix)」をプレイするのですが、コレを光らせる為の選曲であったと思われます。

 プレイとしては、Run DMCの2バース目で、ProをしたPete RockがSucker MC'Sの名文句をライムしたあと、Suckerのインストにスイッチし、後のせのスクラッチをかぶせつつ、早い展開でLeadersにミックスしてますが・・・この展開でLeadersを聴くと、思わず踊ってしまう展開が仕込まれており、大変上手いです!!
 事実として、このLeadersは長めにプレーし、その後にプレイする「Zhigge / Toss It Up」も同じグルーブで繋いでいき・・・いわゆる「ダンサー大喜び」な状況を作っており、この展開に持ち込みたい為に、選曲を戦略的に組み合わせていたと思われます。
 
 この項で紹介している選曲の結論になりますが、この僅か4曲のミックスは、ミックスのスタートから、どうやってシフトアップをして、短時間でピークに近い状態に持っていくか?を実践したラインだと私は考えています。

 さーっと、聴くと流れてしまうかもしれないですが、スクラッチや2枚使い、そして曲の構成変更などのアイデアを駆使し、最初からスタートダッシュさせてピークに近い状態にもっていき、Leadersあたりで完全に引き込んで踊らしちゃう感じになっており・・・こういったグルーブの作り方はホント上手いと思います。
 その限りにおいて、実は「選曲」というのが重要になっており、曲を戦略的にかみ合わせていくことで生まれるグルーブを、最大限に活用しているのがSpinbadの良さで、これがSpinbadの「グルーブ」づくりの骨子にあることが分かるかと思います。

 なお、この作品、深く聴くと「Fu*k」などのカオスワードは消されてて、実はラジオ等でプレイする前提で作られたと思われる節もあり、Spinbadの売り込み用のテープだったとも思われるので、相当「作り込んだ」感もあります。
 特にB面はオーバーダビングでスクラッチやブレンドをやっていて、かなり作り込んでいるのが分かったり、このB面最初も営業用の引き込みルーティーンとも思える部分があり、かなり完成されたものではあると思いますが、Spinbadが「スキル」の人ではなく、「スキルと選曲が出来る人」であることが分かる部分として理解がしやすいラインだと思います。




④ストーリー性の素晴らしさ

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 では、最後に、この作品の総括をこめて、Spinbadの「ストーリー性の素晴らしさ」を説明したいと思います・・・場所としてはA面の最後あたりで、34:00辺りからの紹介です。

 とりあえず、ザーッと聴いてみると、HipHopが好きな人なら、絶対にヤラれる流れだと思います・・・特にRedmanの入り方はヤバすぎで、首フリまくりですね!!
 実際には、上記の写真のような曲がプレイされ、このテープが好きな方だとこのラインが好きな方も多いと思います・・・私は、この部分が聴きたい為に、何度も遠回りして家に帰ったことがあるぐらい好きなラインです!!

 まず、おさらいになりますが、Spinbadに関しては、①では超絶なスクラッチと2枚使いを駆使してプレイした楽曲の良さを光らせ、②では多彩なアイデアを駆使してグルーブを維持したままグルーブを繋ぐことを指摘しました。
 そして、その①と②を駆使しつつ、③では選曲を戦略的に立ててグルーブを引っ張っていく上手さを指摘しました・・・最後の④では、その③の発展的な話になります。

 ミックステープ時代のSpinbadの作品は「This is the DJ Tape , Not a Compilation」と標榜しており、ミックステープという存在が「DJの作品」であることを強く意識していて、作品としての完成度が異様に高いのが多いです。

 それは、作品のアイデアだったり、スクラッチや2枚使いの素晴らしさが如実に出ているのですが、Spinbadにおいては「作品のストーリー性」の作り方が大きいと思います。
 全てのSpinbad作品には該当がしませんが、③で指摘した選曲の組み立てを全体で行っているようなもので、まるで「一本の映画」を見たいるような感じがあります・・・つまり、選曲にメリハリがありつつ、印象的な流れをつくり、聴く人を飽きさせない展開を作っています。

 この「ストーリー性」ですが、なかなか表現が難しく、私が書いている作品紹介でも上手く伝えられない部分かもしれないですが・・・DJミックスにおいては一番大切なことだと考えています。

 なぜかというと、DJミックスという行為は、ただ順番に曲をプレイすることでは生まれないマジックを施す行為であり、選曲の進め方やプレイの仕方で「プレイした曲を更に輝かせる」行為だと思うからです。
 特にストーリー性という視点は、知らない曲でもその流れで聴くと良く聞こえるみたいな効果があったり、段々と気分を高揚させて爆発させたり・・・正に映画のような展開を作り、普通にその曲だけを聴いていただけでは感じられない事を聴かせてくれる方法だと思うので、凄い大切です・・・

 その中で、このSpinbadのこの作品では、ミックスの流れとして最高潮なオーラスとして見事なまでに大爆発をさせており、最高に盛り上がります!!

 ①~③の技術が上手く活用されつつ、戦略的に選曲をし、とにかく盛り上がる展開に落とし込んだストーリーが絶品で、こういうストーリーを描くことが出来るSpinbadの非凡さが出た内容になっています。
 特に、この部分は深く聴くと細かいギミックを多く含んでいるので、その部分を解説しつつ、素敵なストーリー性の演出の仕方を解説していきたいと思います・・・

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 まず、はじめに、A面の全体的な流れを紹介しましょう・・・

 A面は立ち上がりは割とユックリと進みますが、段々とグルーブを上げ、①で紹介した「Lords of the Underground / Funky Child」や②で紹介した「Mark the 45 king / 900 Number」あたりなどで軽いピークをつくり、聴いている人を引き込みつつ、小出しにピークを作り、飽きさせない展開になっています。
 いわゆる「山と谷」の展開を織り交ぜ、段々と山を登っていくストーリーにしており、こういうのは聴いてて飽きないし、プレイした曲に知識がなくてもノセられちゃいます・・・実際、A面は渋い曲でグルーブをキープしつつ、盛り上がる有名曲でガツっとピークを作っていて、大変上手いですね!!

 その上で、A面最後の部分を説明をしましょう・・・説明は34:00位から始まる「Boogie Down Productions / Duck Down」→「Nice & Smooth / Hip Hop Junkies」の辺りから始めます。

 まず、Duck Downに繋げていく背景として、900 Number→Scenarioに展開し、割とドラムやベースラインが男臭い展開にして「マッドに踊らす」流れになっているのがポイントです。
 Scenario自体を長くプレーし、そういったグルーブに路線変更しつつ、カットインで「Naughty by Nature / O.P.P.」→「Naughty by Nature / Hip Hop Hooray」と繋ぎ、首も体も動かされる展開にしています。

 その上でDuck Down→Hip Hop Junkiesをプレイしていくのですが、ピークを作る布石として大変上手い配置だと思います!

 先に結論を書いちゃいますが、いかにして最後の「Redman / Time 4 Sum Akshun」をボムらせるか?を選曲とミックスでこなしていく中で、この辺りではピークを作るために「谷」を作っていると思われます。
 Naughtyメドレーは、プレイされればヘッズは大盛り上がりですが、このまま盛り上がり続けると、Redmanが爆発しないので、ノリはキープしつつ、ちょっとマイナーな曲を入れて、ストーリーとして「小さなブレイクダウン」を作っています。

 ただ、このDuck Down→Hip Hop Junkiesの部分、相当な「技」が光っています!!

 まず、Duck Downであれば、ノリをキープするためHip Hop Hoorayからビートミックスで繋げ、本編に流れていくのですが、サビ部分での処理が渋すぎです!!

 1バース目をそのままプレイし、1バース目のサビに入ったらKRSが「♪Duck!」とラップしている部分で2枚使いをしていますが、ここでは、次を見据えた「構成変更」を実は行っています・・・原曲を知らない人だと全く気付かない構成変更です。
 サビの2枚使いは、1バース目のサビではなく、2バース目のサビ前の「♪Don't Stop the Criss・・・」の部分を使っての2枚使いをしています・・・これは、2バース目のサビ終わりが長めのインストになり、これにHip Hop Junkiesのアカペラブレンドを仕掛ける為の構成変更になっています!!

 話的には「Hip Hop Junkies」のアカペラブレンドを基軸に指摘すべきですが、これはDuck Donwのアイデアがないと成立しません・・・

 私もDuck Downのレコを買うまで、この部分はインストにスイッチしてブレンドをしてたのかな?と思っていた(以前の紹介を参照)のですが、コレにはヤラれました・・・原曲の構成を見抜いた上での処理にビビります・・・

 Spinbadの構成変更は、ミックスのグルーブを高めるために行っているのですが、それと同時にSpinbadの楽曲の良い部分を見抜く耳の確かさも重要なんですよね・・・そこを見抜いた上で、Nice & Smoothをかぶせて、ピーク前の谷にしてきているのが上手すぎです!!
 また、Hip Hop Junkiesの原曲とかけ離れた感じのブレンドになっていますが、それが意外性もありつつ、Greg Niceのラップにガッツリかみ合ってて、この辺のセンスもイイですね・・・ブレンドに関してはB面で炸裂してて、オーバーダビング処理のブレンドではありますが、かみ合わせのセンスは抜群です!!

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 そして、ブレンドの話がまだ続きます・・・

 「Hip Hop Junkies」のアカペラブレンドの話から続けると、1バース目のサビの直前で、Duck Donwのインストを切り、タイミング良く「Cypress Hill / How I Could Just Kill A Man」のインストを入れていきます・・・引き続きブレンドをしてくるわけですね!!

 これはラッキーなのが、「Hip Hop Junkies」のアカペラが純粋なアカペラではなく、スナップ音が入ったアカペラなので、Duck DownのインストをからCypressに変えても、そのスナップ音が「つなぎ」になってグルーブが落ちなかったり、サビ直前にGreg Niceのカッコいいパンチラインがあるので、それに合わせてスクラッチカットインが出来・・・恐ろしいまでの融合っぷりですね!
 もちろん、Duck DownのビートとCypressのビートのグルーブが近いことや、Spinbadのレコードチェンジが異様に早い(僅か2拍!)点もポイントですが、ミックスの流れを一切切らない形で、こういうアイデアをブチ込んでくる点は凄いです・・・それも、実は結構単純なアイデアなのにもヤラれますね!!

 また、この後に「Cypress Hill / How I Could Just Kill A Man」の本編(ラップしている曲)に行くのですが、その進ませ方も上手いですね!

 まず、ブレンドはHip Hop Junkiesの2バース目でも行われていますが、Smooth Bのラップの部分は、Cypressのビートにおける基本的なループトラックでブレンドしてきます・・・これは、Smooth Bのラップを生かすためでもありながら、あえて「Cypressのサビ」を聴かせない為の措置だと思われます。
 実際に、Smooth Bのラップの中盤ぐらいでインストを切ってますが、これはサビのビートが始まっちゃうぐらいインストをプレイしてたので、ビートを戻す為に切ったんですね・・・ここではラップを聴かせることが主になっているので、その限りではCypressのサビのビートは不必要になるからです。

 そして、Smooth Bのラップが終わった直後に、Cypressのサビのトラックが流れるようにインストを設定しているのも渋いですね・・・ここの部分も凄い大切です!

 このブレンドの部分は、割と流れ/グルーブを重視してブレンドしてるので、とにかくスムースな流れを求めている部分です・・・それは、実はピークに持っていくために、盛り上がっちゃう部分をあえてカットするための作業で、いわゆる「タメ」を作るための措置だと思います。

 そのため、Cypressのサビが想定される部分をカットしつつ、Cypressの本編に繋ぐために一番良いタイミングでサビに流れ、そこからの本編へのスクラッチカットインに繋がり・・・この構成力とアイデアはヤバすぎですね!!
 この辺の構成力の高さは③で紹介した話に繋がりますが、ピークになりかねないCypressのビートを、その躍動的なグルーブは利用しつつ、ブレンド部分ではあえてサビのビートを出さないことで、本編に繋いだ後にグルーブが上向きになるように設定されているのが上手いですね!

 実際に、Cypressにスクラッチカットインしたあと、首を振り始めている自分がおり・・・こういう細かい配慮が上手いな~と思います。

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 そして、Cypressの本編に流れていき、結果的にはド定番な2バース目の「♪Time 4 Sum Akshun」のラップ部分からカットインで「Redman / Time 4 Sum Akshun」に行くのですが・・・ここで「選曲のストーリ性」が発揮され、大爆発を引き起こしています!

 まず、指摘しないといけないのが、この部分においては「お約束」に近いCypress→Redmanの繋ぎをしています・・・

 少し脱線をして「お約束」の意味合い的な話を入れておくと、Aという曲の後は必ずBという曲に繋ぐという意味で、その繋ぎが定番化したが故に、聴いているリスナー側も「その展開」を待っているという意味になります。
 例えば、Kid Capriにおける「Maze / Before I Let Go」からの「Fatback Band / I Found Lovin'」とかがそうですね。

 このCypress→Redmanの部分も、ある程度HipHopを聴いている人だと鉄板なお約束で、Cypressの2バース目にあるラップが、Redmanの曲のサビネタになっているので、プレイの仕方を間違えがなければ必ず盛り上がります。
 
 この限りにおいて、Spinbadが取った手法は、このお約束を利用しつつ、他のDJ達が真似できない爆発をさせるにはどうしたらいいか?という点を、Spinbadがもつスキルとアイデアを活用し、ここの部分で説明したい「ストーリ性」を駆使して、大爆発を起こさせています!

 そのストーリー性の大まかな流れは、Duck Down以降はひたすらグルーブを引き延ばすプレイをし、あえて「上げない」ストーリーを作り、Redmanというボムが爆発するように仕掛けられた演出になります・・・
 つまり、Redmanで爆発するように、選曲の流れやミックスを調整して、ストーリーとして「タメ」の時間を作っていたんですね・・・

 これこそがDJミックスや選曲の腕の見せ所になりますが、誰しもが盛り上がれる曲をポンとプレイするよりも、聴いている人を焦らしたり、沸々と盛り上げていった上でプレイした方が絶対に盛り上がります・・・
 それは、変な表現ですが、散々仕事を頑張った後に飲むビールが、普通に飲むよりも美味しいのに近い発想だと思います。

 ただ、単純に「上げない」ストーリーかと言ったら、そうではなくて、Spinbadのこのラインには「効果的に上げない」ストーリーが埋め込められていると思います・・・

 それこそ、ブレンドを交えてストーリー作りをしている点が一つですが、私としては「期待感」の存在が大きいと思います!!

 その意味を紹介するために、以下で流れのおさらいをしましょう・・・

 まず、選曲的にも若干マイナーなDuck DownとHip Hop Junkiesを入れて、ストーリーの谷を作りつつ、完全にグルーブを繋げたミックスや、ブレンドという聴いている人を驚かせるミックスで、聴いている人を離さない展開にしています。
 この流れを飛行機の離陸に重ねると、飛行機が飛び立つ滑走路まで移動している感じですね・・・何度も飛行機に乗っている人には面倒な時間になりますが、飛び立つ予感を感じて結構ドキドキする時間ですよね・・・

 そして、ブレンドの後はCypressの本編にスクラッチカットインをしますが、流れ的にはRedmanに繋ぐ過程に向けて「ギアが入った」展開にしています。
 それは、まるで飛行機が滑走路に入り、離陸に向けて急加速していく感じでしょうか・・・そして、加速がマックスになった瞬間にRedmanに行くという展開になっています。

 そう、このCypressの本編に入って「ギア」が入る感じが凄く効果的で、それが「期待感」の表れになっています!

 Cypressは、結果的にブレンドという形でインストを使い、そこからグルーブを一切切らずに本編に進んでいく2段構造になっていますが、これが凄いポイントになっています。

 まず、ブレンドの部分はDuck Downから続いているビートのグルーブを使ってノリの維持だけをしていると書きましたが、実は「Spinbadのグルーブに引き込んでいる効果」があったと思います。
 知識があるリスナーなら「おおっ、ブレンドだ!」となってミックスに注視をするだろうし、このブレンド自体が完成度の高さと、グルーブの繋がりっぷりが半端無く、ブレンドと気づかなくってもミックスのグルーブに引き込まれています・・・実は、ミックスとしては上げないミックスではなく「グルーブに集中させる」為の措置としてブレンドを使ってた部分があります。

 そして、Cypressの本編にミックスし、ラップが始まるとお約束に進むことを「期待させる」ストーリーに仕向けていると思います・・・先ほどの表現でいくと「滑走路に入り急加速した」という意味合いになります。

 この背景において、ブレンドの部分でサビのビートをあえて使わなかったのは、こういった「期待感」を効果的に引き出す為の措置で、ラップが入ってからのミックスに更に引き込まれてしまう感じはヤバいですね・・・
 そこには何かが始まるみたいな期待感があり、更にSpinbadのグルーブに引き込まれてしまい、気づいたら首を振りながらラップしてしまい・・・Redmanに繋いだ瞬間の「キタキタ感」はヤバいです!
 また、この部分は曲を知っている人ならモチロンですが、曲を知らない人でも「何かが始まる」みたいなグルーブを出してて、それがオーラスに向けた緊張感みたいのも伴ってて・・・更にRedmanの良さを引き出しています!


 Redmanにカットインしてからは、2枚使い祭りを駆使して超ハイテンションなグルーブが続きます・・・この「爆発」を説明するために、コレだけの文字数を使いました・・・

 論旨をまとめると、この部分では一定のノリをキープしつつ、グルーブの谷を作ることで、Redmanが爆発するための下地を作っているのが表層で、その中にはお約束の繋ぎを爆発させるためにグルーブに集中させ、かつその流れで期待感をも生みだすストーリーを作っており・・・最高です!!

 はっきり言って、私が書いた説明がなくっても、聴いてるだけで「ヤバい!」と思う部分ですが、Spinbadの技術とセンスの先にある「ストーリー作り」が有機的に作られていることが伝われば良いと思います・・・

 そして、本当はこれも説明すべきですが、約45分のミックスの中で、この「ストーリ作り」が生かされており、通しで聴くとSpinbadのミックスの世界に引き込まれてしまう感じ唯一無二で、Spinbadが「ミックステープの魔術師」であることが分かるかと思います!!



 
⑤まとめ

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 いや~、長ったらしい説明になりましたが、どうでしょうか??

 今回の作品紹介においては、これ以上に紹介したい箇所がありましたが、これ以上説明を増やすと分かりにくくなってしまうので、あえて紹介をしなかった部分も多いです・・・
 なので、なるべく論旨だけをまとめるようにしましたが・・・ちゃんと伝わったでしょうか??

 おさらいじゃないですが、SpinbadのDJを形容すると以下の点に集約されます。

 ①超絶なスクラッチ&2枚使い
 ②実はシンプルなんだけど効果的なアイデア
 ③曲と曲を繋げることで生まれるグルーブの良さ
 ④そのグルーブの良さで生み出すストーリー性の素晴らしさ


 抽象的な表現もありますが、こんな素養があり、SpinbadのDJがヤバいんだと思います。

 今回、紹介文を書くにあたり、昨年ぐらいから収録曲のレコ集めを始め、それを元にミックスの内容と照らし合わせていく作業の繰り返し・・・気づいたら「研究」という作業を行っていました。
 そういった過程があったので、今回の詳細な説明が出来たと思います・・・ミックステープを真剣に語ろうと思うと、語る側も掘らないといけないな~と痛感させられた作品でした・・・

 そして、今回の作業を通して、大きな声で伝えたいことが一つあります。

 それは、この作品は「アナログ」で作られていることです。

 結果的に、B面はMTRを使ったオーバーダビングをしていますが、基本的に「アナログ」的な手法で作られた作品になっています。

 これは、今の時代だから伝えることですが、セラートがない時代に、アナログのみでここまで高度なミックスが作れ・・・比類出来ないミックスに仕上がっていることは、今の時代の反省材料の一つになる思います。
 例えば、④で説明したブレンドなどは、今の時代においては、ある程度は苦労せずに出来ちゃう内容ですが、Spinbadが試行錯誤を繰り返しながら、作り出したあのブレンドの「厚さ」は真似できないと思います・・・つまり、苦労をしたが故に生まれた「グルーブ」なんだと思います!

 あんまり、この点を深く追求するのは意味がないのでアレですが、アナログだけでこんなにも深いミックスが作っていた事実・・・これは今の時代だからこそ忘れては行けない事実だと思います!!

 
 最後に、入手状況について補足です・・・テープ自体は2000本もプレスされているので、結構探しやすいテープだと思います・・・
 ほんと、このミックスだけは「神」級のレベルの高さなので、是非、テープで聴いてヤラれてくださいね!!



<Release Date>
Artists / Title : DJ Spinbad 「That's My Sh?? !!」
Genre : HipHop
Release : 1999年4月
Lebel : Cold Cutz Crew No Number


Notice : 旧記事について

 この作品紹介は、以下の記事で一度紹介をした作品になります。ただ、以下の記事では作品紹介において事実誤認があった部分もあり、今回、新たに書き直しましたが、作品紹介において参考となる部分はあったので、一部訂正を入れながら、そのまま記事を残しておきます。気になる方はご参照ください。

 DJ Spinbad 「That's My Sh?? !!」(旧記事)




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<追伸>
 今回、記事の性質上、独り言を入れると記事がブレるので、今回は独り言は無しです・・・
 ただ、収録曲の大半のレコを買いましたが、使ったレコは1/6位で、何のためにレコを買ったんだろう・・・う~ん、きっとSpinbad愛の為なんでしょうね(^^;)