おっ、久しぶりの「素晴らしきシリーズ」ですね・・・たまにはイイかな?
今回は久しぶりに「本」に関する紹介です!!
お暇な方はお付き合いくださいね~
1.はじめに まず、突然ですが、今回から3~4回に分けて、いわゆる
「Disc Guide(ディスク・ガイド)」 の紹介を行いたいと思います。
なぜ、紹介することになったかを説明すると、
昨年末に引っ越し をして、引っ越し先に持ってきた「本」を置く場所が無いことに気付き、家族会議の結果、持っている本の大半を処分することにしたからになります。
これらの本、特にディスク・ガイドは、気づいたらあまり読まなくなってしまい、前の住まいでも自然と段ボールに詰めて保管していました・・・
そして、改めて段ボールに詰まったディスク・ガイド達を見ると、今の私には「もう必要ではないかな?」と思うようになり、必要とする方の手に渡ったほうが良いと判断し、断腸の思いで処分することに決めました・・・
これらの本は、ある意味で私の音楽遍歴が詰まった本なので、手放すのは少し寂しいですね・・・
ただ、ここで貧乏根性が出てしまうのは、ブログを運営している性(さが)で、簡単に売ってしまうのはもったいないので、これらをブログで紹介し、紹介が終わった時点でユニオンに売ろうということになりました・・・
紹介記事自体は暇な時に書いていきますので本当のお別れはいつかは分かりませんが、お世話になった本なので、感謝の気持ちを込めて紹介したいと思います・・・
そして、本編を始める前に、
「Disc Guide(ディスク・ガイド)」 のことを簡単に整理しておきたいと思います。
ディスク・ガイドは、
ある特定の音楽ジャンルにおいて過去の名曲や重要曲を紹介する本 になり、DJ関連の音楽が好きな方なら必ず読んでいる本かと思います。
例えば、新たに興味を持った音楽ジャンルがあったら、「どういう曲があるのかを知りたい」や「カッコイイ曲を探したい」と思いますよね?
ディスク・ガイドはこういったニーズのためにあるもので、ある意味で
「そのジャンルを勉強するため」 に存在するものかと思います。
私自身、DJ的な趣味を始めた高校生の頃からディスク・ガイドを活用し、様々なジャンルと出会い、そのジャンルの深いところまで勉強しました・・・
それこそ、どんなカッコいい曲があるのかを知り、日々のレコード探しの際に役立ていました・・・
その結果が、私の場合は、今のレコードコレクションだったり、ミックス作品の収集に繋がっているのだと思います・・・
ただ、ディスク・ガイドって不思議なもので、ある程度そのジャンルのことを覚えてしまうと、あまり手に取らなくなるんですよね・・・
そのためか、近年はディスク・ガイドを読まなくなり、気づいたら段ボールに詰め込まれていました。
一時期は、スーパー銭湯の風呂上りにビールを飲みながら頭を空っぽにしてディスク・ガイドを読むのが好きだったけど、それも遠のいてしまいました・・・
うん、この表現でいいのかどうか分からないけど、きっと私は「ディスク・ガイドから卒業させてもらった」のでしょうね・・・
2.「和モノ」について そして、ディスク・ガイド紹介の第1弾に選んだのは
「和モノ」 です!!
多くの皆さんが和モノのディスク・ガイドを購入し、色々と勉強されたのではないでしょうか?
私自身、
和モノの良さに気付いたのは2006年ごろ のようで、優秀なDJ達が紹介した和モノの曲にヤラれてしまい、一時期は熱心に和モノのレコード、さらには和モノのテープを購入していました。
その際、私の横に常にあったのは和モノのディスク・ガイドでした!!
まず、「和モノ」という言葉~音楽ジャンルを整理すると、
日本で生まれた過去の音楽、特に70年代から80年代の歌謡曲やポップス等 を指していて、私としては
「DJカルチャーの中で生まれた音楽ジャンル」 だと考えています。
それこそ、DJの音楽は海外の音楽が主になるので、それらを「洋モノ」と表現するのであれば、その対義語として「和モノ」という言葉が生まれ、定着したのだと考えています。
ただ、私がレコードの趣味を始めた1990年代後半は、和モノとされる日本の過去の音楽は誰にも注目されない存在で、DJの音楽が好きな人の中では、大半の人は
和モノを「ダサいもの」 と考えていました。
それは人によって色々な理由があるでしょうが、当時は「海外=最先端」みたいな考えが強く、そのため「国内=時代遅れ」と思い込んでいた人が多かったため、和モノの曲を評価しない流れが生まれたのだと思います。
ただ、今回紹介するディスク・ガイドによって、和モノは大きく生まれ変わりました。
そう、
和モノのディスク・ガイドによって、和モノは「DJで使える曲」として再評価され、本来それぞれにあった楽曲の魅力をさらに光らせることに成功 したのです!
私自身、2006年より前は和モノの良さにそこまで気づいていなかったですが、2006年以降に刊行された和モノのディスク・ガイドを読み、大いに影響を受けました。
そして、そのディスク・ガイドに登場したDJのミックス作品を聴き、「ああっ、和モノってダンスミュージックとして使えるんだ!」と知り、プレイした曲を熱心に買い集めるようになりました。
それこそ、写真の山下達郎さん、角松敏生さん、竹内まりやさん等はディスク・ガイドやミックス作品を通してその良さを深く知り、気づいたら大好きなアーティストになっていました。
つまり、私は、今回紹介する和モノのディスク・ガイドがあったから、
これまで気付かなかった70年代~80年代の日本の音楽の魅力に気づいた のです。
これは、私だけの体験ではないと思います・・・皆さんの中でも、同じ体験をした方は多いですよね!!
また、私は元々音楽ジャンルでいう「Disco(ディスコ)」が好きだったことから、和モノに興味を持ち始めた後は、和モノでもDiscoっぽい曲が好きになり、その結果、当時のディスコ向けのプロモ12inchを熱心に探すようになりました。
和モノについては、その人によって独自の方向に進むことが面白い点で、私の12inchのように、その人によって求める和モノが異なりますよね・・・
これは、むしろ広がりがあった良いことで、今回紹介する和モノのディスク・ガイドでは、それぞれの本で紹介する曲や方向性が異なっており、和モノという世界自体が縦にも横にも広がっている証拠が、今回紹介するディスク・ガイドから読み取れます!
近年になり、
70年代~80年代に活躍した様々な日本のアーティストに注目が集まって います・・・
その注目は日本国内にとどまらず、全世界から熱い視線が注がれています・・・
もちろん、評価されているアーティストの演奏力や歌唱力、さらにはそのアーティストにしか出せないグルーブが評価されていることが一番でしょうが、私としては、その背景には
今回紹介する「ディスク・ガイド」が大きく影響していた と断言したいです!!
そして、
ディスク・ガイドは、そこまで注目が集まらなかった和モノの音楽を注目させたように、「音楽の常識を変える力」がある と信じています!!
そこで、今回は、和モノを紹介するディスク・ガイドを時系列で紹介しながら、これらの点とDJの視点で重要だった点を交えながら、それぞれのディスク・ガイドのことを紹介したいと思います。
なお、私が持っている本が前提なので、だいぶ偏りがあることを御承知おきください・・・
3.1990年代 「和モノ」前夜のディスク・ガイド (1)みうらじゅんのフェロモンレコード 発行 1994年 Tokyo FM 出版
著者 みうらじゅん
まず、いきなり変化球で恐縮ですが、個人的に大好きなディスク・ガイドです!!
こちらは、あの「みうらじゅん」さんが、マイブームの1つだった
「フェロモンレコード」 を、テーマ別に紹介した1冊になります。
フェロモンレコードは、本書では
「聞きたいレコード以外に、見るという目的でバカなレコードやエロなレコードを集め始めたもの」 と記されており、つまり
「ジャケが面白いレコード」 を意味しています。
いかにも「みうらじゅん」さんらしい切り口ですね・・・なお、紹介しているレコードはジャケだけ見て買っているので、中身は殆ど聴いていないそうです!
そして、本書の中身は、写真の「キャバクラ」「フェロモン顔」といったように、あくまでも「みうらじゅん」さんの視点でテーマを設け、そのテーマに見合うジャケのレコードを紹介しています。
紹介しているレコードの音楽ジャンルは、日本の歌謡曲や演歌のような日本産のレコードを中心に、内容によっては海外のレコード等も紹介されており、なかなか面白い内容になっています。
前述したように、90年代は和モノがあまり評価されなかった時代だったこともあり、このディスク・ガイドのように、和モノをある意味で「お笑い」視点で紹介していることのほうが多かったと思います。
もちろん、90年代にも様々な和モノ系のディスク・ガイドはあり、大変価値のあるものや今でも使えるものもありますが、こういったお笑いの視点だったり、当時を懐古するような視点でアイドルや歌謡曲を紹介するものが多かったと思います。
つまり、この頃は、まだ「DJ視点」で和モノを選んだディスク・ガイドは無かったと言えます・・・
【参考記事】・みうらじゅん 「みうらじゅんのフェロモンレコード」 (2)Discなう!!VS レコードやくざ 発行 1998年 ジャングル・ライフ
著者 矢倉邦晃、吉村智樹、内門洋、魂列車1号
こちらをディスク・ガイドとして紹介していいのかどうかは分からないですが、なかなか面白い本なので、紹介しますね!
この本は、1990年代に関西発のフリーペーパーとして人気だった「JUNGLE☆LIFE(ジャングル・ライフ)」において連載されていた記事をまとめた本で、あまり有名ではないですが、中々熱い内容となっています!!
このフリーペーパーのことは、私自身は殆ど知らないのですが、インディー系の音楽を紹介する有名なフリーペーパーだったようで、関西圏の方だと馴染みがあるのかも知れないです・・・
そして、この本は、
音楽やレコードに特化した2つの連載を書籍化したもの になり、1つは矢倉邦晃(やぐら・くにあき)さんと吉村智樹(よしむら・ともき)さんによる
「Discなう!!」 という連載、もう一つは内門洋(うちかど・ひろし)さんと魂列車1号(たましいれっしゃいちごう)さんによる
「レコードやくざ」 という連載になります。
まず、後者の内門洋さんは後に有名レコード店「BALLROOM RECORD(ボールルーム・レコード)」のオーナーとなるお方で、名著「レコード・バイヤーズ・ダイアリー」を書かれたことで有名ですね。
そのためか、後者の部分はレコード狩りに関する対談が中心となり、なかなか面白い内容です・・・小西康陽さんとの対談(!)もあり、グレイトです!!
ただ、和モノのディスク・ガイドとしては、
前者の「Discなう!!」が今となっては非常に価値のある内容 です!!
この連載は、1995年10月から1997年12月に連載されていて、当時のJポップのヒットチャートに対して矢倉さんと吉村さんが対談するという内容になります。
正直、この本をいつ購入したかは記憶がなく、買った時もザーッと読んだ程度だと思います・・・
ただ、今回の紹介記事を書くにあたり改めて読み直したら、当時リリースされたJポップのシングル曲等を深く紹介していたり、さらに、今回のテーマである「和モノ」に繋がる視点が多いことに気付き、大変面白く読ませてもらいました!!
それこそ、矢倉さんはモダンチョキチョキズのリーダーを務められたお方で、2000年ごろにリリースされた70年代~80年代の国産テクノポップスを紹介するシリーズ「テクノ歌謡」の企画に携わったお方で、もー、この時点で「分かってらっしゃる」お方ですね。
そして、吉田さんは関西を中心に活動するライター・放送作家さんで、矢倉さんに負けないぐらい知識のあるお方になります。
対談の具体的な内容は、90年代にJポップのシングル盤を指す「短冊CD」を中心に、当時のヒット曲、両氏が気になった国内の楽曲を独自の視点で評価しあうもので、その評価が今となってはなかなか勉強になります。
紹介する曲は、それこそ小室ファミリーの曲が多いのですが、アイドルだったり、マイナーなロックバンドだったり、
90年代中頃のJポップを色眼鏡無しに評価しているところ が素晴らしいです!
やっぱり、当時は当時で、
和モノを「DJ的な視点」、つまり「自分の視点」で楽しんでいた先人 がいたわけで、この本はその断片が掲載されたものだと思います。
それは、
自分が面白い/カッコいいと思ったものを、世間の評価に関係なく「面白い!」「カッコいい!」と評価すること です。
そして、この評価は、本を読んだ人に
「新たな発見」 を与えるものになります・・・
それは、「あっ、こういうことが面白いんだ!」「この曲って、こういう視点で聴くとカッコいいね!」といった気づきを与えるものです・・・
その意味では、この本も「ディスク・ガイド」なんだと思います!!
なお、矢倉さんによる「ジミー竹内のDrum Drum Drum」シリーズを詳細に紹介するコラムがあったり、後で紹介する和ラダイスガラージのメンバーだったトニー吉田さんによる寄稿記事があったり、和モノ的な資料も満載です!!
4.2000年代 「和モノ」を開花させたディスク・ガイド (1)Light Mellow 和モノ 669 / Special 発行 2004年 毎日コミュニケーションズ ※初版(左の669と記載されているもの)
2013年 ラトルズ ※増補版(右のSpecialと記載されているもの)
監修 金澤寿和
選者(執筆者) えこりん・まつい、大槻健彦、金澤寿和、栗本斉、波多野寛昭、除川哲朗
そして、ここからが和モノのディスク・ガイドの立役者の登場でしょうか?
私としては、
この(1)のディスク・ガイドと、次に紹介する(2)のディスク・ガイドがあったからこそ、DJの世界「和モノの可能性」で広がった と考えています!!
まず、このディスク・ガイドは、有名音楽ライターである
「金澤寿和(かなざわ・としかず)」さん が企画・監修をしたディスク・ガイドで、いわゆるCity Pop(シティー・ポップ)の名作等を丁寧に紹介したものになります!
金澤さんは、ロック、ソウル、ジャズ・フュージョン等の70~80年代の都会的な音楽を好むライターで、洋楽・邦楽を問わず、様々な作品のレビューを担当したり、レコード会社とタッグを組んで過去の名作を再発する企画を立てたり、今でも精力的に活動されているお方になります。
そして、この本は2004年に初版が刊行され、しばらくは絶版だったのですが、シーンの動きに合わせて2013年に増補版という形で再び刊行され、現在でも多くの方に読まれているディスク・ガイドになります。
初版が出た頃は知る人ぞ知るディスク・ガイドのような位置づけで、こういった和モノが好きだった方はこの本に飛びつき、この本をきっかけに、さらに和モノを深堀した方が多いと思います。
私自身は、和モノに興味を持った後に「このディスク・ガイドが凄い!」との情報を得て、2011年にやっとこの本に巡り合え、5600円で購入しました・・・今思うと、なかなか攻めた値段で買っていましたね・・・
そして、本書の内容は、2004年版の時点で完成されており、ほんと素晴らしいディスク・ガイドです!!
紹介しているアーティスト名を挙げたら、山下達郎さんや角松敏生さんを始め、男性・女性、有名・無名、そして時代も70年代、80年代、さらには同じグルーブをもつ90年代~00年代の作品を紹介しており、金澤さんが提唱する
「Light Mellow(ライト・メロウ)」 という都会的な気持ちよさを内包したグルーブを持った作品を丁寧に、的確に紹介しています。
また、作品の紹介だけでなく、角松さん本人にインタビューをした記事を掲載したり、アルバムに未収録のシングル盤を紹介する等のコラムも充実しており、読み物としても大変面白い内容です。
そして、このディスク・ガイドで最も重要なのは、
これまで注目されなかった日本の過去の音楽を「自分たちの視点で楽しむこと」を提案 したことだと思います。
これこそ、
DJ的な視点 ですよね!!
本書の書き出しでは、このディスク・ガイドは、80年代のイギリスで生まれた音楽ジャンルRare Groove(レア・グルーブ)や、その影響をダイレクトに受け、日本で発展させた90年代のFree Soul(フリーソウル)が持っていたDJ視点の音楽の楽しみ方、つまり、ノー・ジャンルの新しいリスニング・スタイルが根幹にあることを示しています。
その上で、金澤さんが提唱する「Light Mellow」という視点で70年代以降の日本の音楽を紹介していることが示されています・・・・うん、金澤さん自身の姿勢が「DJ=自分の視点」がしっかりとあることが分かる書き出しですね!
また、これらの音楽を
「和モノ」 と銘打ったところも絶妙ですね・・・
和モノという言葉がDJ業界や音楽業界でいつから使われるようになったのかは定かではないですが、個人的には、現在の「和モノ」という音楽ジャンルを指す言葉はこのディスク・ガイド以降に定着したと考えています。
特に、このディスク・ガイドが、今から約20年前に発行された本なのに、2004年の時点で、今と変わらない「和モノ」という音楽ジャンルの在り方が示されていることが素晴らしいです!!
ほんと、このディスク・ガイドはクラシック中のクラシックです・・・今でも購入しやすいものなので、ぜひ、お読みくださいね~
(2)Japanese Club Groove Disc Guide 発行 2006年 宙出版
選者 石野卓球、DJ Crystal、ECD、クボタタケシ、MURO、D.L、小西康陽、Sami-T、曽我部恵一、宇多丸 等
そして、このディスク・ガイドが刊行された頃にDJの世界に入っていた方であれば、このディスク・ガイドに衝撃を受け、そこから和モノの世界に入っていった方が多いのではないでしょうか?
このディスク・ガイドは、国内の有名DJやアーティストが国産の楽曲でDJプレイで使える10曲を紹介したもので、
「和モノはDJで使える!」 という点を明確に打ち出したものになります。
まず、このディスク・ガイドが素晴らしいのは、
日本におけるDJ業界の動きを踏まえつつ、ジャンルによって異なる和モノの解釈を丁寧に整理している点 だと思います。
本書では、前述した有名DJやアーティストが気に入っている和モノを10枚紹介するページを中心にしながら、和モノをテーマとした対談やインタビューを掲載することで、これらの整理を上手く紹介しています。
例えば、HipHopにおける「ネタ」という視点であればMUROさんが石川晶さんのレコードを紹介していたり、宇多丸さんとミッツィー申し訳さんがJポップの魅力を語る対談を掲載したりして、前述した整理を分かりやすく紹介しています。
私の記憶なので正確ではないかもしれないですが、2000年代前半から全てのDJシーンで「和モノ」という視点が少しづつ芽吹きはじめ、このディスク・ガイドが刊行された後ぐらいから、徐々にDJシーンで和モノの人気が高まっていったと思います。
その意味では、
和モノの人気に火が付くタイミング でこのディスク・ガイドが刊行されたことは、今後のDJシーンの中での「和モノ人気」を後押しした部分もあったかと思います。
そして、私がこの本を読んで一番衝撃的だったのは
「ダンスフロアーで光る和モノがあること」 で、現代的なHouseの曲のように踊らすことができる和モノがあることでした。
このことは、本書のテーマの一つとも言えます・・・
そのため、本書では、このことを明確に紹介するため、実際に和モノでのDJを実践していた
「DJ Crystal(クリスタル)」さん が登場します。
もー、Crystalさんから和モノの影響を受けた方は大変多いですよね!!
Crystarlさんは、現在は「XTAL(クリスタル)」というお名前で活動するHouse/Dance Music系のDJ/Producerで、このディスク・ガイドが刊行される前にリリースしたミックス作品
「Made in Japan Classics」シリーズ が話題となり、このディスク・ガイドでは
「和モノでどうやって躍らせるのか」 を分かりやすく紹介しています。
当時の私は、段々とHouseの踊りに目覚めた時期で、Crystalさんが角松敏生さんや竹内まりやさんの曲を
「工夫次第で、ダンスミュージックに化かすことができる」 という指摘にビックリし、急いでCrystalさんの作品を聴いたら、それが本当だったことに大変驚きました・・・
私自身、
和モノの曲で「踊れる」とは思ってもいなかった です・・・
ただ、このディスク・ガイドを読み、この工夫を実践したミックス作品を聴いていたら、自然と和モノの曲で踊っている自分がいました・・・
これこそ、ディスク・ガイドの魅力である「気づき」を与えてくれた瞬間なのかもしれないですね!
なお、その後、しばらくの間はCrystalさんが私の先生役となり、Crystalさんが選曲したレコードを捜索する日々が続きました!!
【参考記事】 ・DJ Crystal 「Made in Japan Classics vol.01 - Disco Tokio」 ・DJ Crystal 「Made in Japan Classics vol.02 - Ordinary Love Story」 ・DJ Crystal 「Made in Japan Classics vol.03 - A Long Summer Vacation」 (3)The DIG presents Chronicle Series - Japanese City Pop 発行 2006年 シンコーミュージック
監修 木村ユタカ
そして、変化球も1つ・・・これはディスク・ガイドの「補習用」でありながら、最高のディスク・ガイドとなっております!
この本は、
2002年に発行されたディスク・ガイド「The DIG presents Disc Guide Series - Japanese City Pop」 の続編となるもので、
このディスク・ガイドに収めらたCity Pop周辺のアーティストの70年代~80年代のインタビューや、当時の様子をまとめたコラム記事を掲載したもの で、資料的価値が非常に高いものになっています。
まず、2002年に発行された「Japanese City Pop」は、前述の金澤さんの「Light Mellow」と並び、City Pop系のディスク・ガイドとして有名ですよね。
このディスク・ガイドも大変人気で、
2020年に増補改訂版 が刊行されており、このディスク・ガイドを読んで日本の過去の音楽に興味をもった方が大変多いのではないでしょうか?
ただ、ディスク・ガイドって、紹介する作品のことは丁寧に説明しているけど、そのアルバムが作られた頃の時代背景や、そのアルバムを作ったアーティストの遍歴等までを詳細に追うことはできないので、そういったことは別に調べる必要があります。
そこで、このディスク・ガイドの監修者である
木村ユタカさん は、
ディスク・ガイドで紹介したアルバムを「点」としたら、その点を繋げて「線」にするためのサブ・テキストが必要だろう と考え、この本を企画されました。
内容は、今現在、
City Popが好きな方なら「絶対に勉強になる」内容 になっています!!
それこそ、山下達郎さん人脈でCity Popの名作を多く残した村田和人さんのインタビューだったり、City Popの関係者を整理した人名図鑑等が掲載されており、ほんと資料的価値が高いです。
特に、古くより音楽雑誌を出版していたシンコーミュージックの本だけあって、City Popが作られた70年代~80年代の記事の再録が秀逸で、写真の77年のヤング・ギター誌より「シティ・ミュージックって何?」という記事を掲載しています。
記事では南佳孝さんや山下達郎さんのことが言及されており、当時のシーンで「City Pop」がカテゴライズされ、しっかりと紹介されていたことにはビックリです・・・
なお、こういった記事ばかりでなく、記事に合わせてディスク・ガイド的な紹介も充実しているので、こういった「補足本」を読むこともお勧めしますよ~
(4)和ジャズ・ディスク・ガイド Japanese Jazz 1950s-1980s 発行 2009年 リットーミュージック
著者 塙 耕記、尾川 雄介
そして、こちらは「和モノ」というジャンルから考えたら、ちょっとだけ外れるかもしれないですが、DJの魅力の一つである
「掘る」 という視点を胸に抱きながら、知られざる和ジャズの魅力を丁寧に伝えた名ディスク・ガイドです!!
このディスク・ガイドは、ディスクユニオンのジャズ系店舗の店長や再発プロジェクトに携わっていた
塙 耕記(はなわ・こうき)さん と、高円寺の有名レコード店Universoundsのオーナーである
尾川 雄介(おがわ・ゆうすけ)さん が作ったディスク・ガイドで、50年代から80年代に日本のジャズ・ミュージシャンが作った作品、つまり「和ジャズ」を紹介したものになります。
まず、私自身の話からすると、ある時期から
ディスク・ガイドは「自身の勉強のために買う本」 と考えるようになり、あまり馴染みのないジャンルでも、信頼できる人・信頼できる出版社が作るディスク・ガイドであれば、積極的に買うようになりました。
それは、信頼できるディスク・ガイドを買えば、そのジャンルに詳しくなくても読めばしっかりと知識が吸収でき、その後のレコードやテープを掘ることに役立った経験があるので、そのジャンルに興味があったら、こういったディスク・ガイドを買うようにしていました。
その中で、この和ジャズは、個人的にも待望の1冊として待っていたもので、発売直後に購入したものになります。
内容は、アーティストごとに重要作品を紹介し、途中では作品に関するコラム、有名アーティストのインタビュー、写真家・内藤忠行さんの貴重な写真等を挟み、和ジャズの魅力を丁寧に紹介しています。
これは誤った情報かもしれませんが、日本の古くからのジャズファンはどちらかというと海外のアーティストを好む傾向が強く、日本のジャズ・アーティストの作品をそこまで評価しなかった流れがあったかと思います。
そのため、和ジャズをしっかりと整理した資料やディスク・ガイドはあまりなく、かつ、DJで使える等の視点で過去の作品を整理したものは、このディスク・ガイドが出るまで皆無だったと思います。
どのへんが「DJ」かと言われるとなかなか難しいところですが、説明文を読んでいると、どこか
クラブ・カルチャー以降の感覚で各曲の良さを解説 しているんですよね・・・
それこそ、本筋のジャズのファンなら、もしかしたらモダン・ジャズ的な作品/アーティストのみを紹介するところを、1970年代ぐらいのジャズ・ロック、1980年代ぐらいのフュージョン等も均等に紹介しつつ、それぞれの演奏の上手さ以上にその曲がもつグルーブを評価している点等が、私たちにとっては分かりやすい解説だったと思います。
また、
「掘る」という姿勢 が、このディスク・ガイドの背景としてあることも忘れてはいけません。
日本の音楽と言えど50年代の日本産のジャズとなると、分からないことが多いそうで、その点は著者の塙さんも尾川さんも骨を折られたのだと思います・・・冒頭の「帯コレクション」だけでもその苦労が分かります。
どのディスク・ガイドもそうですが、こういった本を企画し、執筆している方は、
骨を折りながら過去の音源を掘っている のです・・・
そして、その苦労を自慢にせず、あくまでも
「過去の音楽への尊敬」を込めて紹介 しています・・・
そういった苦労を知った上でこのディスク・ガイドを読むと、その掘りの凄さ、いや堀りの素晴らしさにヤラれてしまいます!
その後、和ジャズというジャンルが評価されるようになったわけですが、その背景には、このディスク・ガイドが後押しをしたことは言うまでもありません・・・
やっぱり、ディスク・ガイドには「音楽の常識を変える力」があるのですね!!
5.2010年代 「和モノ」の魅力を広げたディスク・ガイド (1)和モノ A to Z - Japanese Groove Disc Guide 発行 2015年 リットーミュージック
監修 吉沢dynamite.jp、Chintam
選者(執筆者) 金村章次、川西卓、駒木野稔、関口紘嗣、珍盤亭娯楽師匠、珍盤亭ジャズ太郎、やまのぼる
ここからは、2010年代に発行された和モノ系のディスク・ガイドになります。若干、発行時期は前後しながら紹介します。
まず、最初は
「DJによる、DJのための和モノのディスク・ガイド」としては、最高峰の1冊 になります!
このディスク・ガイドは、現在もDJとして活動されている
吉沢dynamite.jp(よしざわ・ダイナマイト・ドット・ジェーピー) さんと、Spice RecordsやHMVでバイヤーを務められた
Chintam(チンタム)さん が中心となって作られたディスク・ガイドになります。
作られた背景としては、吉沢さんやChimtamさん、さらにはこのディスク・ガイドの選者(執筆者)でもある関口紘嗣さんや川西卓さん等が参加していたパーティー
「Groovy和物Summit(グルービー・ワモノ・サミット)」 が母体としてあり、このパーティーの趣旨である
「和モノの曲でDJをして盛り上げること/踊ること」 を強く意識した内容になっています。
そう、
とにかく「DJで使える和モノ」 を紹介したディスク・ガイドになっております!!
そのためか、今となっては「和モノ A to Z」という看板で過去作品の再発やコンピレーションの発表等を行うぐらい、和モノ界の影響度が非常に高いものになっています。
ただ、私としては、このディスク・ガイドが
「吉沢dynamite.jp」さんが作ったディスク・ガイド であることが最も重要です!!
なぜなら、私は、
吉沢さんを通して「和モノが大好きになった」 からです!!
House/Dance Musicのラインでの和モノの先生がCrystalさんであれば、HipHopのラインでの和モノの先生は吉沢さんになり、吉沢さんを通して様々な和モノの良曲を教わりました!!
特に、吉沢さんのミックス作品を通して様々な曲を教わり、初期の名作の1つである
「Super 和物 Beat 番外編 - ニュースクール 歌謡ダンスクラシックス!」 や、国民的バンドの楽曲を大胆に選曲した
「ミックス '78~'90」 では、展開のある選曲やツボを突いた2枚使い等のDJプレイにより、それまで地味に聞こえた和モノの曲が突然輝いて聴こえました!!
これは聴いてみないと分からないかもしれないですが、
吉沢さんのDJを通した和モノの曲はとにかく「光っている」 のです!!
その吉沢さんが作ったディスク・ガイドなんだから、最強も最強ですよね!!
このディスク・ガイドでは、こういった「DJをすることでプレイした曲が輝くこと」を前提にした紹介が多く、大変参考になります。
また、紹介する曲のBPMも記載されていたり、プロモのみのレコードもしっかりと紹介していたり、DJとして実用的な部分も大変多いです。
4の(2)で、DJ Crystalさんの言葉として、和モノの曲は
「工夫次第で、ダンスミュージックに化かすことができる」 と紹介しましたが、このディスク・ガイドは、そのことを大前提にしており、大変価値のあるディスク・ガイドになっています!
【参考記事】 ・DJ 吉沢dynamite.jp 「Super 和物 Beat 番外編 - ニュースクール 歌謡ダンスクラシックス!」 ・DJ Victoria 「ミックス '78~'90」 (2)和ラダイスガラージ BOOK for DJ 発行 2015年 東京キララ社
編著 永田一直
選者(執筆者) 永田一直、モカ、ブラックドーナッツ、bobu、珍盤亭娯楽師匠、KAZU、キングジョー、中村保夫
こちらは和モノ系DJの中では有名なパーティー
「和ラダイスガラージ」 によるディスク・ガイドです!!
まず、和ラダイスについては、このパーティーの主催者である
永田一直(ながた・かずなお)さん のことも交えて紹介したいと思います。
この
「和ラダイスガラージ(わらだいす・がらーじ)」 というパーティーは、90年代よりテクノ系のProducer/DJだった永田さんが、2011年頃より開始したパーティーになります。
それまで、永田さんの中で別のものと考えていたテクノ的なことと和モノ的なことを、DJとして一緒にできないかを考えた結果、このパーティーが立ち上がり、段々と協力者が増えて発展していったそうです。
特に、このパーティーでは、和モノで踊ることを前提にしつつ、
クラブという場だから表現できる「オルタナティブな方向性」 が魅力なパーティーとなっているようです。
それこそ、パーティー名の「和ラダイスガラージ」が、80年代のNYのダンスシーンを支えた
名クラブ「Paradise Garage(パラダイス・ガラージ)」 から引用されていることから、
クラブミュージックとしての「ダンス性」と「妖しさ」 を兼ね備えたDJが、このパーティーの魅力の1つだと思います。
私自身、このパーティーには参加したことはなく、同パーティー、そして前身のパーティーとされる「ギラギラナイト」のミックステープを聴いたレベルになりますが、ダンス性と妖しさが入り混じった内容にヤラれ、「和ラダイス」という世界観に納得した部分がありました!
そして、この点は、このディスク・ガイドにも色濃く反映されており、
他のディスク・ガイドでは紹介されないような曲 も多く紹介されています。
それこそ、マニアックなタイトル、一見したら踊れない内容(ジャケ)の曲等を「日本のエレクトロ」「午前5時」「アナーキー」といった独自のテーマで整理し、それぞれの執筆者がチョイスした曲が紹介されており、大変素晴らしいですね!!
例えば、「ディープ・メロウ」というテーマでは、写真の「新宿ゴールデン街」という曲を紹介する等、読んでて「この曲、このジャケでDJできるの?」と思う曲が、多く紹介されています。
ただ、和ラダイスの選曲って
「なぜか踊れる」 んですよね・・・
この「なぜか」を上手く説明することができないのが悔しいですが、その「なぜか」がこのディスク・ガイドに上手く反映されています。
内容的に通向けであることは確かですが、興味がある方は是非読んでくださいね!
(3)珍盤亭娯楽師匠のレコード大喜利 発行 2016年 東京キララ社
監修 和ラダイスガラージ
選者(執筆者) 珍盤亭娯楽師匠、永田一直、カズ、モカ、ブラックドーナッツ、MOCHO、コレ兄、達磨、JAZZ太郎、ファンタスティック・ピッチングマシーン(FPM)中嶋、ヨシノビズム、中村保夫
そして、次は、(2)の第2段とも言えるディスク・ガイドで、現在の和モノシーンを盛り上げている第1人者が中心となるディスク・ガイドです!!
こちらは、あの
「珍盤亭娯楽師匠(ちんばんてい・ごらく・ししょう)」 さんが、自身も参加する和ラダイスガラージのメンバーや、自身の弟子筋のDJ達と共に作ったディスク・ガイドになります。
紹介する和モノの曲やテーマ設定の方向性は、第1弾の「和ラダイスガラージ BOOK for DJ」とほぼ同じですが、珍盤亭娯楽師匠さんの持ち味を前に出した内容になっており、
「珍盤亭娯楽師匠」の世界観 を紹介する内容と言っても過言ではありません。
DJシーンの側面から和モノに入った方からすると、珍盤亭娯楽師匠さんは絶対的な存在ですよね・・・
的確な選曲とDJプレイ、そして珍盤亭娯楽師匠さんにしかできないマイク使いとライブパフォーマンスを見たら、誰でも盛り上がります・・・
特に、珍盤亭娯楽師匠さんにおかれては
「祭り」と「DJ」の融合 が重要だと思います!
それこそ、珍盤亭娯楽師匠さんが盆踊り的なローカルな夏祭りでDJプレイをしてガッツりと盛り上げている姿は、和ラダイスに共通するオルタナティブな方向性を、しっかりとしたエンターテイメントに昇華していることに外なりません!
そして、このディスクガイドでは
「音頭」 というテーマが冒頭にあり、全国各地の有名無名な「●●音頭」を紹介することで、日本古来のダンスミュージックを、現代のダンスフロアーに盛り上げる術(すべ)が紹介されており、最高ですね!!
なんでしょう、「掘る」という行為/言葉を考えた時、単純にレコードを探すことだけでなく、
使い方を探すこと も重要だと思います・・・
その
「使い方をどうするか」こそ、DJの魅力 なんだと思います・・・
なお、蛇足ですが、珍盤亭娯楽師匠さんは相当なディガーとして有名で、
数年前に関西へのレコードの旅を実施した 際、人を圧倒するレコードが積まれているレコード屋さん「Freak Out」さんの店頭で、カオスな在庫量の和モノテープを掘っていたら、珍盤亭娯楽師匠さんらしきお方から声をかけられ、さらに店内の奥に進まれていったのが印象的です・・・
その時、珍盤亭娯楽師匠さんの背中を見て思ったのは、やっぱり現役で掘られているDJの背中は、どこか「掘り師の色気」があるなぁと思いました・・・
そして、これは補足になりますが、(2)と(3)のディスク・ガイドは、刊行直後に一部の販売店限定で上記のミックスCDがオマケで付いていました。
こういったミックスCDは、ディスク・ガイドの補足資料みたいな役割があり、大変良いですね!!
また、このディスク・ガイドの発行元である東京キララ社の中村保夫社長は、自身も和ラダイスにDJとして参加しつつ、DJ関連の本を多く企画されてて、大変素晴らしいお方です・・・
特に、中村さんが執筆された「新宿ディスコ・ナイト - 東亜会館グラフィティ」は、日本のディスコの語られなかった一面をしっかりと紹介した価値のある1冊だと思います・・・これからも頑張ってください!
(4)ラグジュアリー歌謡 (((80s)))パーラー気分で楽しむ邦楽音盤ガイド538 発行 2013年 DU Books
監修 藤井 陽一
選者(執筆者) 岩渕尚史、佐藤清喜、白木千絵、末廣英之、鈴木哲哉、鈴木望、関根圭、関美彦、藤井陽一、田中雄二、馬飼野元宏
そして、こちらは、一見すると「どうかな?」と思う和モノを、的確に紹介している素晴らしいディスク・ガイドです!!
まず、このディスク・ガイドは、いわゆる
「80年代アイドル」の曲 を多く紹介したものになり、その延長として
アニメや特撮系の曲 、さらには、
レコード以降になる90年代前半のアイドル系の曲 を紹介したものになります。
これらの曲は今まで紹介した他のディスク・ガイド中でも断片的に紹介されていましたが、このディスク・ガイドでは
「これらの音楽の楽しみ方」 を再定義した上で、愛をもって紹介している点が素晴らしいです!
そして、その楽しみ方は、タイトルの
「ラグジュアリー歌謡」 という言葉に集約されています!
まず、監修者の
藤井陽一(ふじい・よういち)さん は、大阪のForever Recordsやディスクユニオンに務められていたお方で、以前より80年代アイドル系の楽曲をプッシュされていたようです。
そして、藤井さんは
「ラグジュアリー歌謡」 というものを、本書の中で以下のように評しています。
おもに80年代のバブリーな予算と楽曲のクォリティが幸せな正比例をしている音楽。テレビドラマ、アニメ、CMなどのブラウン管から浴びた、お茶の間感覚の親しみやすいもありながら、洗練された楽曲。どうしても漂ってしまう上品さ(極嬢とダンディズム)。アイドル歌謡でありながら、洋楽志向のジャパニーズ・ポップスだけがもつ、カフェでなくパーラーな感覚……。そうした要素を「ラグジュアリー」という言葉に込めたつもりです。 この指摘は、このディスク・ガイドを成立させる上で非常に重要で、この感覚が分かり、途端に私の中で
新たな扉 が開きました・・・
それは、上手く説明ができないですが、
どこか恥ずかしさがあるこれらの曲の魅力を、「ラグジュアリー歌謡」という言葉によって、その恥じらいが消えたこと です・・・
私自身、1980年生まれで、このディスク・ガイドで紹介している曲達は、子供ながらに耳に入ってきた曲なので、懐かしさもあるけど、どこか「古くて恥ずかしいもの」と捉えていた部分があります。
特に、アイドルの曲やアニメの曲はそうで、鼻歌で歌えるのにこれらの曲を心の底から「好きです!」とは言えない感じがありました。
ただ、このディスク・ガイドを読んで、そういった恥ずかしさは自然と消え、ある意味で「ラグジュアリー歌謡」という美しい音楽として、80年代のアイドル等の音楽と接しられるようになったように思えます。
その結果、私の場合は、80年代のアイドル系のコンピテープをミックステープとして買ったりする等、私の掘り人生に新たな扉を開いてくれました!
また、このディスク・ガイドの素晴らしい点は、
これらの楽曲を作った「裏方」 に焦点を当てた部分だと思います。
例えば、アイドル系の作曲・編曲を多く担当した山川恵津子さんとシンセサイザー・プログラマーである森達彦さんの対談が掲載されたり、私世代には懐かしい乙女塾のQlair(クレア)のプロデューサーだった篠崎恵子さんへのインタビューが掲載されていたり、コラム的な部分も大変充実しています。
こういった日本のアイドル業界を支えてくれた方を紹介することで、藤井さんが紹介したい「ラグジュアリー歌謡」という世界をより深く紹介しています・・・
ここ数年、80年代のアイドルの音楽に注目が集まるようになった中で、これらの音楽が表面的な煌びやかさだけではないことを示したこのディスク・ガイドは、非常に価値のある1冊です!!
(5)WA B・O・O・G・I・E - 1980s Japanese Boogie / Funk / Modern Soul / Fusion 発行 2019年 SPACE SHOWER BOOKS
著者 Groove Curators
選者(執筆者) AZ、COOL G、DJ NOTOYA、LADY-K、NOR-1、Norio、Willie、Yasushi、小俣隼人、やる夫
最後は、今でも買いやすいディスク・ガイドで、今の和モノ人気の流れに一番合っているディスク・ガイドです。
こちらは、和モノの中でダンサンブルな要素を兼ね備えた曲を
「和ブギー」 と定義した上で紹介したもので、海外や国内での和モノ人気を踏まえたディスク・ガイドとなっています。
そのためか、たとえば韓国のNight Tempoさんのインタビューが掲載されていたり、最近の和モノ人気を踏まえた作品の紹介があったりと、大変分かりやすいガイド・ブックになっています。
ここまでくると、これまでに紹介したディスク・ガイドで紹介した曲とだいぶ重複してしまうのですが、和ブギーの根幹にあると思われる「黒さ」、
つまりDJが求める「ダンサンブルなグルーブ」 が含まれた曲を多く紹介しており、大変素晴らしいディスク・ガイドになっています。
それこそ、もはや鉄板ともいえる山下達郎さんを丁寧に紹介しつつ、その次では山田邦子さんの曲を紹介する感じが、いかにもDJらしいですね・・・
一般的に
「ブギー(Boogie)」 と言う言葉/音楽を考えると、私としては
「聴いているだけで自然と踊ってしまう曲」 だと思っていて、紹介されている内容を読むと、この点に準じた紹介が多く見受けられます。
ただ、個人的には、(1)の
「和モノ A to Z」が「DJプレイをするため」のディスク・ガイド であれば、この
「WA B・O・O・G・I・E」は「DJプレイを楽しむため」のディスク・ガイド のように感じました。
例えば、「あのDJがプレイした曲の詳細を知りたい!」と思った時に、このディスク・ガイドを読めばプレイしたアーティストのこと、曲のことが分かりやすく紹介されているので、ある意味で「和モノ系DJを楽しむためのガイド・ブック」として機能している部分があるかと思います。
そして、このディスク・ガイドについては、あるDJのことを紹介せずにいられません!
そのDJとは、過去より和ブギーを押していた
「DJ Notoya(のとや)」さん です!
Notoyaさんは、近年、アンダーグラウンドなミックス作品として「Tokyo 1980s」というシリーズをリリースし、このディスク・ガイドで紹介されているような和ブギー系の楽曲を上手く紹介していました。
アンダーグラウンドな作品なので、一部の愛好家の目にしか留まらなかったのは事実ですが、これまでのDJ Crystalさんが示したHouse的なDJ、吉沢さんが示したHipHop的なDJとは違う、どこかレイドバックしながらも踊れる部分が大変評価されたのだと思います。
その結果、このディスク・ガイドに結びつき、このディスク・ガイドの刊行後にオフィシャルなミックス作品として
「Tokyo 1980s Victor Edition (Boogie, Funk & Modern Soul From Japan)」 をリリースできたことは、ミックス作品を愛する立場としては、大変嬉しいことでした。
このCDがメジャーでしっかりとした形でリリースできたことは、
アンダーグラウンドで頑張っていたDJ達の信念が評価されたこと も意味すると思います!
Notoyaさんには、他のメーカーでこういったミックス作品をリリースしてほしいです・・・ぜひ!!
6.さいごに バーっと思うことを書いてみましたが、いかがだったでしょうか?
こうやって時代順に並べると、
今の「和モノ」の世界的な評価が、日本のDJや好事家達によって支えられていたこと が示せられたかと思います??
少し話題が外れますが、最後なので補足しておきたいことがあります。
ここまで和モノが一般的になった背景には、繰り返しになりますが、
これらの和モノを独自の視点で再評価した「DJ」の存在が非常に大きい です。
そして、その再評価の過程で、今回紹介するディスク・ガイドの存在が大きいのは明白ですが、さらに重要なのは、
そういったDJ達が「和モノってカッコいいんだぞ!」と胸を張って紹介していたこと が大きいと思います!
特に、このことを一番明確に示したものとして、
和モノを推したDJ達が作った「ミックス作品」 は、非常に効果的だったと思います。
そのミックス作品は、どれもアンダーグラウンドに近い形でリリースされたものになり、今回の記事で紹介したDJ Crystalさんや吉沢dynamite.jpさんに加え、今でも和モノ・キングなMUROさん、さらにはECDさんやMr.Melodyさん等は、早い時期から和モノを良さをミックス作品に落とし込み、幅広く紹介していきました。
その後、和ラダイス関係者やNotoyaさん、さらにはやる夫(ビート会議) さんや名の知れぬ多くのDJ達が、和モノを題材としたミックス作品をリリースし、さらにDJ業界で和モノ熱を高めていきました。
これらは2000年代中頃からの動きではありますが、このミックス作品を聴き、多くの方が
「和モノってイイじゃん!」 と思ったはずです・・・
また、この熱は一部のメディアも共感しはじめ、
メディアを通して「和モノってカッコいいんだぞ!」とDJ達が紹介したこと も大きいと思います。
それこそ、宇多丸さんがパーソナリティーを務めていた「TBSラジオ ウィークエンド・シャッフル」では、宇多丸さんもメンバーだった申し訳ないとのメンバーによる和モノ系ミックスが放送されたり、近年では、珍盤亭娯楽師匠さんが「TBSラジオ 伊集院光とらじおと」で、和モノを紹介するコーナー(アレコード)に参加していました。
あっ、TBSだと、それこそ小堺一機さんと関根勤さんのラジオ番組「コサキンDEワァオ!」で、微妙だけど味のある曲を「コサキンソング」と称して流してたり、伊集院光さんのラジオ番組「日曜日の秘密基地」では、おバカな歌謡曲を「おバ歌謡」として紹介するコーナーがあったり、TBSにはもともと素養があったんだ・・・
この辺のメディアの動きとDJカルチャーが結び付いた結果も、今の和モノ人気を陰で支えていたのだと思います。
このほかにも、
Dimitri from Parisのような海外DJが達郎さんや角松さん等を積極的にプレイしていた ことや、さらにさかのぼると
1990年代末にはDJ達が遊びで和モノミックスを作っていた 等・・・いや~、お伝えすることが多いですね!!
このブログのポリシーは
「DJが選曲し、DJミックスすることで、プレイした楽曲がさらに光る」 であり、このブログでは、このポリシーに従って様々なミックス作品等を紹介してきました。
そして、このことは、今回紹介した和モノのディスク・ガイドでも同じことが言えると思います。
和モノを光らせた先駆的なDJの皆様には、最大級のリスペクトを贈りたいです・・・ありがとうございます!!
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<独り言>
今回の記事を書いていて、余談的なことを体験したので、久しぶりに「独り言」です!
まず、
昔読んだ本を改めて読んだら、その本に「何かが挟まっている」こと ってないですか?
それこそ、本を買った時のレシートだったり、何かのメモだったり・・・何らかの「紙」が挟まっていることがありますよね。
ただ、このことは、わりと不意打ち気味に来るので、ビックリすることが多いですよね~
そんなビックリ体験を、先日、久しぶりに体験しました・・・
それは、記事の作成に向けて紹介するディスク・ガイドを読んでいたら、4の(3)で紹介した
「The DIG presents Chronicle Series - Japanese City Pop」 の本の間に、栞のような形で写真の
「飛行機の搭乗券」 が出てきました・・・
これは2013年10月に宮崎に出張した時の搭乗券で、見つけた瞬間「よく10年近く前のものが入っていたな!」と驚きつつ、当時の色々な地方を回っていた頃の思い出が蘇り、少し嬉しくなっている自分がいました!
また、2013年はこのブログをフル回転で更新していた頃なので、きっと当時の独り言でその宮崎出張のことを書いているかな~と思ったら、しっかりと書いていて、それを読んで、さらに嬉しくなっている自分がいました・・・ちなみに、その記事は以下の記事で、まさかのLord Finesseの紹介記事の独り言でした(笑)
・Lord Finesse 「Vol.2 - R&B Classics」 考えてみれば、当時は、飛行機出張の時は機内でやることがないので、買ったばかりの本を読むことが多かったので、きっとこの本と共に出張に行ったんでしょうね・・・
なんか、昔の仲間と再会したみたいで、嬉しさと恥ずかしさが込み上げてきますね・・・
なお、このことを体験したら、急に思い出したことがあり、蛇足の蛇足を・・・・
今後紹介するディスク・ガイドで、
ブラックミュージックに関する最重要な某ディスク・ガイド を20年近く前に某ブックオフで買ったら、村西監督でおなじみの
「ダイヤモンド映像」の会社用メモ用紙 が出てきて、ビックリした記憶があります!
世代的には、私よりちょっと大人な方(40代中頃以降)だとグッとくる会社名ではないでしょうか・・・こういう出会いも、きっと「掘ること」の魅力なんでしょうね~
なお、メモには手書きで
「Genobia Jeter(ジェノビア・ジェター)」 という80年代に活動していた女性シンガーの名前が書いてあります・・・
前の持ち主様は、このド渋なアーティストをなぜメモったのかな・・・とりあえず、そのシンガーの紹介があるページに、このメモを挟んでおきました!
では今回はこれで終わりです! 次回をお楽しみに~
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コメント
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2022/08/18 URL 編集
mixtapetroopers
コメント、ありがとうございます!
ピラニアブラザーズに反応してくれるのは嬉しいです(^0^)
作られた元・ユニオンの御大はお元気かな・・・元気で暮らしているといいな~
では、今後ともよろしくお願いします!
2022/08/28 URL 編集