HipHop,R&B,Soul,Funk,RareGroove,DanceClassics,Garage,House・・・など、私が気に入っているMixTape,MixCD,その他もろもろを紹介するブログです。
Masanori Ikeda 「New Balearic House」
masanoriikeda

 今年の前半でリリースされ、話題になった一枚をご紹介です。 
 Houseが好きな方にはもちろん、HipHopリスナーにもアイデア部分でお勧めできます。


8ae69507c576f848.jpg DSC06208.jpg

 DJの池田正典さんは、今までは「Mansfield」として、小西さん周りで活動していた方で、Brazilとかの旧譜をかけていたorganっぽい感じのする方と認識していました。
 ただ、これが出た時、かなり面喰いました・・・だって一筋縄にはいかないHouseなんですから!!

 まあ、MansfieldとしてはBreakBeats的な楽曲も多かったり、池田さんの名物ミックスシリーズ「Spin Out」(写真右、レアなプロモテープ版!)でも割と跳ねたミックスをしてたり・・・、そして2004年に発刊された「Double Standard」では、氏のセレクションが旧譜よりも新譜(ElectroとかHouseとか)の方に重点がおかれ、「2003年はDJを始めて、新譜だけでDJをした」とのことだったので、突然こんなスゲーHouseのミックスCDを出してもおかしくはないかなと思います。 
 実際に氏のDJ活動の変遷を追ってないので、あれですが、趣向がちょっと変わったんでしょう・・・某DJのように、こっちの方が儲けられる・・・な感じではないと思います。

 そして、この作品を聞いて、氏のDJとしての力量やセンス、アイデアが凄い・・・と唸ってしまい、いま注目しているDJになりました・・・です。


DSC01390.jpg DSC01391.jpg

 では、実際の作品の紹介の前に、ちょっと前振りな説明をしたいと思います。

 パッと聞くと「Chill感のあるProgressive House」のミックス作品・・・なのですが、ミックスされている楽曲には「ある工夫」がなされており、それがこの作品の「肝」になってきます。

 ある工夫というのは、この作品に収録されている楽曲は、ジャンルでいくと「Trance」の曲が中心で、本来はもっとBPMが早い元曲を、ターンテーブルでピッチを極端に落としてプレイしてます!!
 そうすることで、パキパキでピッチの速いTranceが遅くなるわけですが・・・コレが意外な雰囲気になり、ボトムがしっかりとあるHouseっぽい音になります。

 つまり、通常はBPM140程度のTranceの曲を、BPM120前後まで落として、Balearicな雰囲気の踊りやすい&リスニングしやすいHouseに再構築する・・・という、そんなの思いつかないだろ!という技法で作られています!!

 以下で詳しくご紹介します・・・


 まず、この作品なり、上記の技法&聞かせ方は、突然できたわけではなく、実験活動があって初めて成立したと思われます。

 いつ頃から、この方法論を使用したかはわからないですが、有名なのは恵比寿「Liquid Loft」で開催していた「Tokyo Balearic」というイベント(上記フライヤー)がポイントだと思います。
 なにが出発点なのかはわからないですが、資料によると「Tranceにもいいレコードがあり、それをピッチダウンしたら面白いんじゃないか」というのがあったようですね・・・


 トランスって派手でメロディーライクな浮もの、ピッチの速いビートをメインにしているので、個人的な志向もありますが、長時間聴くというよりも、短時間でパッと盛り上げる的な趣向があると思います・・・それこそトランスのパーティーで、DJが1時間ぐらいで交代するのはコレが理由じゃないかと思います。
 別に悪いわけではないですが、Houseの現場を愛してる側からいうと、長時間踊り続ける「気持ちよさ」と、踊り続けた後に訪れる「喜び」が体感できないのかな~(あんまりトランスのパーティーに行ったことがないので確認できないですが・・・)と思ってしまいます。
 特に、ピッチが速すぎると、House的な「音に体を委ねる」踊り方はできないっすからね・・・ 
 ただ、トランスの浮ものなりメロディーラインには結構同調できたりするのもあるので(さすがにavex的なのはきついですが)、嫌いにもなれなかったりします(^^;)

 それで、BPM140前後のTranceの楽曲BPM120前後にピッチダウンしてプレーすることで、Houseラインの流れにし、Tranceのメロディー的なところを利用していく・・・ってのが出発点じゃないかと思います。

 確かに、ピッチダウンなり、ピッチアップをして、曲の印象がガランと変わり、ピッチを上げ(下げ)した方が、本来の曲よりも好きになったりするので、アウトではない考え方だとおもいますが・・・「下げる」ってことはなかなか思いつかないですよ・・・ 
 この範囲のことにおいてでは、個人的にはMUROさんが「Jaki Graham / Heaven」をピッチアップでかけていて、元曲は地味な印象しかなかったのに、ピッチを上げただけで、こういう風になるのか・・・と痛感され、結構ピッチはいじる方になりましたが、下げるって行為はほとんどしないですよ・・・だって原曲が崩れることが多いんですもん! 
 この点は本当に勇気のいる行為で、DJという音楽家にしか出来ない行為かな~と思います!!


 んで、BPMが早いはずのトランスの曲を実際に落としてみると・・・普通なら浮もののメロディーが平坦になってしまったり、曲が崩れたりするところが、この作品の場合は・・・メロディーがレイドバックした感じになり、聞いてると・・・「あれ、なんかいいぞ・・・」みたいな心地よさがあります。
 まさに、タイトルのとおり「Balearic」に「なってしまった」んでしょうね・・・もはやタイトルの「Tokyo Balearic」という音楽スタイルになってしまいました!!

 きっとこの辺りは偶然の副産物じゃないかと思いますが、こういった発見を行う、発見を見逃さないことこそ重要だと思います。


 ちなみにBalearic(バレアリック)の説明もちょっとしておきましょう・・・・

 大雑把にいえば「ダウンテンポでチル感があるダンスミュージック」ってところで、いまや観光地化してしまったイビザがあるスペイン・バレアリック諸島で80年代末に生まれた音楽ジャンル(?)です。
 意味合い的には、音楽ジャンルと言うよりも、Larry Levanにおける「Garage」のように、一種の「音楽の聴き方」と言った方が正確で、自然に恵まれた環境が生み出す「心地よいメロディー」が、現代的なHouseやTechnoのビートと融合した感じの曲を指すかな~と思います。
 う~ん、フィーリングとかグルーブの問題なので、なかなか説明しづらいですが、心の解放を引き起こすチル感がある音楽ジャンルって言えばいんですかね~(^^;)


20100814_1008796.jpg  pdt 6000 

 そんなわけで、この「Tokyo Balearic」というスタイルは、出だしでチラッと触れたパーティーの開催を通して、更に進化していったようです。

 特にこのクラブでの実験活動においては以下の点が重要になります。
 

 まず、この「Tokyo Balearic」というパーティーにおいては、池田さん以上に重要人物がいます・・・誰かというと「DJ Marbo」さんです!!
 個人的には、Marboさんが絡んでたことを知り、私の中で「Balearic」の意味が貫通しました!!

 Marboさんのことをチラッと触れておくと、あの「DJ Harvey」の同志として、80年代末のから活動をしているお方で、当時の「Balearicの意味」をしっかりと知っているお方なんですね!!
 まあ、BalearicとHarveyは一直線では結ばれていないですが、UKのDance Music(Club Music)の流れにおいては、Balearicの考え方(いいものだったらなんでもOKとか)が、Harveyの選曲やプレイが影響を受けている・・・と私は考えているので、その真横にいたMarboさんも同じ感性があると思います。
 つまり、Balearicが本来持つ「オープンマインド」の感覚を、UKでの活動(=Harvyとの活動)を通して、肉体的に知ってるお方だと思います・・・

 ちなみに、池田さんも90年代初期はUKに住んでおられ、Harveyとかと接点があったのかな~とも思います??


 あと、もう一個重要なのは「音にこだわってる」点で、これもマニア泣かせです・・・

 Tokyo Balearicでは、通常の音楽再生が必要としない「ピッチダウン」のプレイが当たり前なので、それに耐えうる機材が必要になりますよね・・・

 その限りのおいて、定番のテクニクスはピッチを下げると音が安定しないそうで、このパーティーでは市場では不人気なタンテで、場合によっては投げ売りされてる「Vestax PDT 6000」という機種を使ってるそうです。
 この機種だと、ピッチ幅が広かったり、ピッチを下げても安定的に再生が出来るそうで・・・実際のプレイでは更に改造をして使ってるそうですよ・・・中古屋で売られてても誰も買わない機種なのに、こういった意味があって「あえて」使ってる辺りがフレッシュですね!!


   ↓訂正(2010年10月28日)

 その限りにおいて、定番のテクニクスはピッチを下げると音が安定しないそうで、このパーティーではVestax社が作ったあまり知られていないターンテーブル「Vestax PDT 6000」という機種を使用しているそうです。
 この機種は、当時のベスタ社長企画の世界限定100台の高音質DJターンテーブルだそうで、ピッチ幅が広い(+-13%)ので、ピッチダウンをしても大丈夫だそうです・・・テクニクスがスタンダードな業界において、自分たちの拘りを出している辺りは素敵ですね!!
 ただ、音質向上の為、改造をしたり、カードリッジの針圧を1g(!)でプレイしたりするので、扱いが非常に難しいようです・・・

 また、実際にプレイされる「音」もメチャクチャこだわってるようで、ミキサーはUREIを改造したモデルに、ハイエンドなアンプとスピーカーを独自にくみ上げ、中低域を増幅し、高域をできる限りカットをすることで、ボトムを増やし、House的な音に近付けたようです・・・
 詳しくは、上の方で貼ったフライヤー裏の説明文か、そのフライヤーの内容を転記したMarboさんのブログで確認してね・・・こだわりがハンパないっす!!

 自分も音響的なところはそんなに詳しくはないですが、クラブで普段踊ってる立場とすると、音響がいい方が踊りやすい・・・というか、悪いと気になって踊れないので、こういう努力をしてる点も感動で、ダンスミュージックとしてしっかりと考えられてるんだな~と痛感しました!!


R-996616.jpg R-944330.jpg

 まあ~、必要以上に長い説明になりましたね・・・すみませんね(^^;)

 以上が、この作品を楽しむ上での予備情報になりますが・・・そんなことを知らなくっても感じられる「不思議な気持ちよさ」が素晴らしい作品になっています!!
 んでは、実際の作品の紹介に行ってみましょう~♪

 
 まず、作品の帯とかにはキャッチコピーで「BPM120のトランシー・ハウス」と記載があるように、他のハウスの形容詞(deepとか、Progressiveとか)にない世界が繰り広げられています。
 あえて形容するのであれば、もう「Tokyo Balearic」としか言いようがないジャンルで、聞いてると大変気持ちよい作品に仕上がっています。

 肝心の楽曲は、馴染みのないTranceの曲がメインなので、知らない曲が大半なのですが、BPMを落とすことで不思議な気持ち良さがあるHouseになっており・・・何も知らなくっても気持ち良くさせてくれます。
 4つ打ち本来の心地よさが感じられ、まるで母体の中で赤ちゃんが感じてる母親の心臓の音・・・みたいなビートの刻みが感じられるHouseになっており、ホント不思議な気持ち良さです・・・


 一応、このブログは「マニア印」がトレードマークなので、ピッチを落とすとどんな感じになるかを指摘しておきましょう・・・

『Guy J / Amsterdam』(原曲)
    ↓

『Guy J / Amsterdam』(本作品でのピッチダウンバージョン)

 それぞれ、適当に検索をして見つけた某サイトに繋がりますので、適当に聞いて聴き比べてみてください・・・その曲の同じ場所を再生してないので分かりづらいですが・・・同じ曲だとは思えないでしょ!!
 一応、この作品の1曲目の曲(上の12inchの左)になり、原曲はバリバリの欧州Tranceですが、池田さんのミックスにかかると、気持ちいいHouseになってるのがビックリですね!!

 全ての曲をチェックしてないのでアレですが、雰囲気的には、例示で張ったピッチダウンバージョンの曲の雰囲気が続き、長く聞いてるとホント気持ちよくなりますね・・・


 そしてDJミックスに関しては、音質を考慮してアナログ一発録りのようで、割とスマートなミックスをしており、音のグルーブにただ身を任せるだけのような・・・装飾が無いDJミックスが素晴らしいですね!!
 Houseでありがちなアイソレーターとかエフェクターは音質が悪くなるのでクラブプレイでは使用していない(!)らしいのですが、この作品でも、ピッチを落とした「その曲」の良さだけを純粋に引き出すセットの元、気持ちいいグルーブをDJミックスにありがちな装飾を全くせずに、ひたすらプレイしている辺りは、この気持ちいいグルーブを更に増幅させる効果があると思います(^0^)

 この辺は、きっと「クラブ」を知ってないと出来ないプレーで、盛り上げる選曲と言うよりも「踊らせる選曲」に近い感じで、個人的にはJoe Claussellがプレイしてる感じに似てますね・・・
 クラブであれば、目をつぶって、ひたすら音の波に体を委ねるように踊る・・・みたいな感じもあり、気持ちよさ以上にダンスミュージックとして成立させてる点もポイントですね!!


 あと、作品においては、キーワードである「Balearic感」を出すため、全編に「波の音」がSEとしてミックスされている部分があります。
 こっちのSE使いの方が、普段のDJで使用する人の方が少ないのですが、これがメチャクチャイイですね!!

 まるで月の光が照らす夜の浜辺で、波を見つめながら・・・ただ鳴っている波の音を聞いてる・・・みたいな・・・そんな気持ち良さがあり、このSEは最高によいです!!
 また、個人的には、エバのエンディング映像みたいな感じ(月の光が差し込む海の中で漂ってる・・・)もして、気持ちいいっすね・・・







 馬鹿みたく長い説明になりましたが、この作品はコレだけ語るところがあり、聞けば聞くほど虜になる・・・そんな作品だと思います。
 
 普通に聞いても気持ちイイわけですが、作品が成立してる背景なんかを理解すると、DJカルチャーの素晴らしさが如実に表れた作品になっており、是非ジャンル外の方に聞いてもらいたい作品だと思います。


 特に、この作品とは縁遠いであろう「HipHopのリスナー」には是非聞いてもらいたい作品だと思います!!

 この作品で提示された「ピッチを落とす」って行為は、House界においては明らかに本流でなく、それこそ「Wild Pitchスタイル」や「Progressive」など、ピッチが速くなったり、音色が派手に・攻撃的になったりする歴史がある中で、ある意味「逆行」的な手段を選んでいて・・・その点は興味深いですよね。 
 でも、それってHipHop的な考え方だと、45回転の7inchを33回転で再生(33→45も同じ意)しちゃうことと同じですよね・・・

 そう、これはまさに「価値観の逆転」であり、HouseなりHipHopなりで絶対に忘れてはいけない姿勢だと思います。

 事実、価値観の逆転的なことでHouseやHipHopが進化した部分は大きいはずで、その中では、技術面・金銭面でのアドバンテージをいかに「アイデア」で補うか・・・という部分が立脚点になると思います。
 その限りにおいては、マスな価値観を覆す行為・行動は恐れてはいけないと思います!!

 自分は、曲を作ったり、DJしたり、対外的に音楽を通して「活動」は行っていないですが、このCDを聞いて、改めてこのことの重要性に気付きました。 
 ぜひ、クリエーターの皆さん、DJの皆さん、そしてHipHopファンの皆さん・・・こういった気持ちを忘れることなく進んでいきましょう!!


 最後は親父の小言になりましたが、興味があったら聞いてみてくださいね~♪






<Release Date>
Artists / Title : Masanori Ikeda 「New Balearic House」
Genre : BalearicHouse
Release : 2008
Lebel : Flower Records FLRC-057





ps 今日は、仕事の付き合いで、普段はいかない横浜に行き、帰りにレコード屋を数件除きましたが、久しぶりに行ったので、いい感じに在庫が変わり、爆釣&お買い得でした(^0^) テープも結構買えたので、そのうち紹介します~ でも、いつ聴けるんだろうww




--------------------------------------------------

<編集情報>2009年1月26日
読みづらかったので、改行&強調を行いました。


<編集情報>2010年9月14日
勢い余って、気合の大改造をしてみました・・・長い文章だこと・・・(^^;)




<編集情報>2010年10月26日、28日

なんと、この作品の首謀者(?)である「DJ Marbo」氏から、氏のブログで紹介を頂き、同時に文章の訂正(Vestax PDT6000について)を頂きました!!

また、Marbo氏の関係者(?)である「Sendai Balearic」さんのブログでも紹介を頂き、PDTに関するもっと細かい情報もアップされていたので、訂正個所に斜線を引き、文章の訂正を行いました。

あと、Marboさんのブログで、このパーティーの詳細記事(転載)がありましたので、リンクだけ貼っておきます。
• 1st & 2nd Tokyo Balearic Party @Liquid Loft on 22 Sep 2007 (10/27)

情報を頂き、ありがとうございます!!



スポンサーサイト
コメント
この記事へのコメント
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2010/10/20(水) 17:58:45 | | #[ 編集]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック