HipHop,R&B,Soul,Funk,RareGroove,DanceClassics,Garage,House・・・など、私が気に入っているMixTape,MixCD,その他もろもろを紹介するブログです。
Nelson George 「Hip Hop America」
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 また、HipHop歴史本になりますが・・・そんなには読まれてないかな~と思われる1冊です。
 ただ、これも個人的には好きな本で、内容もかなり濃いっす!!


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 筆者のNelson George氏(上記写真の左、右はクインシーです!)は、名前を聞いてパッと思いつく方は少ないかと思いますが、結構有名人で、いろいろな活動をされています。
 ブラックミュージック関係の音楽ライター/ジャーナリストであり、80年代の初期より「ヴィレッジ・ヴォイス」「ビルボード」などで執筆活動をし、1987年に「リズム&ブルースの死」を刊行するなど、未翻訳の書籍は多いですが、結構な数の本をリリースされています。
 また、執筆活動以外にも、映画・TVのプロデュース・脚本執筆なども行い、私も今回調べてみて分かりましたが、「Strictly Business」や「CB4」などの90年代以降のHipHop映画の製作に関わっていたり、Chris RockのTVショーにも参加してたり、後で書きますが、某レコードの企画をしたり、実はHipHop世代もお世話になってるお方です。
 もっと、Nelson氏のことを知りたい方は、ぜひNelson氏の個人サイトへ行ってみてください。 上記の写真などはそこからお借りしましたが、結構ドープな内容ですよ(^0^)
 
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 そんな氏が98年にUSで刊行(上記写真・こっちは新版らしい)したのがこの本で、日本では2002年7月に翻訳されたのがこの本です。
 出版元は渋谷陽一でおなじみの「ロッキング・オン」からで、ロック以外の本も出すんだ・・・と当時は思いました(^^;) 本隊の「ロッキング・オン」でも、この頃ってなぜかEminemを特集してたりしてて・・・Rock誌でもHipHopを取り上げるんだな~とか思ってました。


 んで、中身のご紹介です~♪

 この本では、筆者の変遷とともに成長・変化をした「HipHop」を、筆者の体験や当事者のインタビューなどを交えつつ紹介し、読みやすくするためトピック別に章分けをしています。
 大枠的なところは、他の本とそんなに大差がないのですが、中身の内容の「濃さ」はピカイチです。


 まず、この本で面白いのが、内容が「突っ込んでいる」ところです。
 HipHop業界にライターという立場でいたからこそ書ける内容が多く、読んでて「スゲーよ、あんた!」と驚いてしまうところがたくさんあります。

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 分かりやすいところで「OldSchool期」の記述なんかは他の書籍とは違うスタンスで、この点は他の書籍より興味深い点が多いです。
 他の本では、当時活動していた人物への取材などで記事を構成するものが多いですが、この本に関してはNelson氏自らが当時体験したことを中心に構成しており、ある時期からは「ライター」としてシーンを取材しているので、かなり「突っ込んだ」内容が記載されてます。
 残念ながら70年代初期のブロンクスで産声を上げたHipHopは体験しておらず、70年代末ごろより体験(取材を開始)した形になりますが、Kool Harcの野外JAMを取材し、その時書いた記事(デビュー作の一つらしい)も掲載されてます・・・
 また、よくHipHop歴史本だと「初めてリリースされたレコードがRapper's Delight・・・」みたいな流れがありますが、Nelson氏の記述はホントドープで、当然そのことも触れてますが、Rapper's Delightに触発されて「Kurtis Blow / Christmas Rappin'」を企画したり(!!)、業界の旗役だったSugarhillの本社に取材しに行き、すったもんだがあったり・・・当時のエピソードを交えながら、Nelson氏でないと書けない内容が大変多く、興味を引きます。

 他の章でも、こんな感じで、ファッションの章であれば、Eric B & Rakimの偽グッチジャケットを作ってた店の話とか、90年代初期にQ-Tipがラルフローレンに自身のストリートデザインをラルフローレンにリクエストして断られたとか・・・まあ「小ネタ」が多いといえばそれまでなのですが、事実に即した内容の記載が多く、大変参考になります。
 

 そして、この本が優秀なのが、ある事象に対しての「考察」が大変優れており、各箇所でジャーナリスト的なスタンスが発揮されているところです。
 分かりやすく言うと、ある事柄が起こったことに対しての「理由説明」だったりするのですが、鋭い指摘が多いですよ。

 例示でいくと、個人的には音楽業界の悪しき習慣「パーネント・ビジネス」のくだりは大変勉強になり、鋭い指摘がさく裂しています。
 よく、アーティストがメジャーと契約をし、最初は良かったが、後になって契約面(お金とか権利とか)でこじれて、「レコード会社がムカつく・・・」みたいな話があると思います。
 これって、つまるところは「最初に結んだ契約・関係」だったりが問題で、何も業界を知らないアーティスト(=新人)が業界側の人間に、業界側が有利になるような契約をされていることに気付かず、後になって問題になった・・・ってのが定説だと思います。
 これについて、筆者はその業界側の人間がある種の「中間搾取」に近い内容を盛り込み、固定(=パーマネント)された人物たちが必ず儲かる・・・構造を寓話という形(=恐らく実例でしょう)で紹介しています。
 つまり、業界にいる裏方(レコード会社幹部、会計士、弁護士など)が、売れるアーティストを拾いとり、使うだけ使って、売れなくなったら新しいアーティストを探し同じことを繰り返し、表舞台の人は違えど、裏方はずーっと同じ(=固定)状態のことを指し、問題視しています。
 
 こういった「構造」の話は、ホント分かりやすい例示を交えて紹介をし、勉強になることが多いです。
 特に「業界」に関することは、筆者がその業界内部に精通し、一種の暴露に近い形なのかも知れないですが、問題提起としてだったり、読者側に知恵を授けてくれたり・・・色々と価値がある行為だと思います。

 また、アメリカ社会の「構造」に関しても鋭く、ドラッグのこととか、人種のこと、性別のこと・・・など要所要所で分かりやすい説明がされており、取材や原体験がしっかりと生きた内容になっていると思います。
 ただ、文化論的な見地は、次に紹介する「ヒップホップはアメリカを変えたか?」の方が更に突っ込んだ分析をしていて、社会学的なレベルまで達してないとも思います・・・まあ、逆に社会学的な読み方が必要ない方(私もそうです)にとっては読みやすくなってるのかな~?


 あと・・・この本を「歴史書」と見ると、初心者の方にはちと厳しいかな~とも思います。
 確かに、HipHopの歴史において重要なことは記載されていますが、初心者の方がいきなり読んで理解できる構造・文章には仕上がってなく、初心者の方には注釈が必要な内容・言葉もそのまま進んでいったりします。
 読んでいると、HipHopの歴史を知っている者が更に理解度を深めるため・・・って感じがするので、前回紹介した「Hip Hop Beats」なんかの方を読んで理解した上で、これを読んでいただければいいかな~と思ったりします。


 結論として、ある程度HipHopを理解している方であれば、Nelson氏でないと書けない多様なトピックに反応できるでしょうし、ある事象の構造的な理解もできると思いますので、読んだ方のHipHopに対する更なる理解度を高めるのには最適な本だと思います。
 読んでると・・・唸っちゃうところとか多いと思いますので、未読な方はぜひBoofOffとかで探して読んでみてくださいね~♪

 こういった歴史書って、書いた人のスタンスによって内容が異なり、量を読んだりすると対比できたりして面白いっすよ(^0^)


<Release Date>
Artists / Title : Nelson George 「Hip Hop America」
            訳者 高見 展
Genre : HipHop歴史本
Release : 2002年7月(オリジナルのUS盤は98年)
Lebel : ロッキング・オン ISBN4-86052-006-8

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