HipHop,R&B,Soul,Funk,RareGroove,DanceClassics,Garage,House・・・など、私が気に入っているMixTape,MixCD,その他もろもろを紹介するブログです。
S. Craig Watkins 「ヒップホップはアメリカを変えたか?」
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 HipHop歴史本シリーズの最後のご紹介です~♪
 これは最近出たやつで、宣伝もほとんどしてないようなので、あまり知られてない・・・ですが、結構面白い1冊ですよ(^0^)

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 作者のS. Craig Watkins氏はいわゆる学者さんで、アメリカ・テキサス大学のラジオ-TV-フィルム学部で准教授をされているそうです。
 専門は、社会学、アフリカン・アメリカン文化を対象にしてるそうで、まあ、HipHopもこの範疇に入る・・・と思われます。
 大学のホームページなどにヒットはしますが、詳細がほとんど分からない・・・です(^^;)

 んで、この本は、2005年にUSで刊行された書物で、原題は「Hip Hop Matters」です。
 日本語版では、おそらくこの本の主旨などを受け「ヒップホップはアメリカを変えたか?」にしたと思います・・・この点は、このまま私が書いた文章を読んでいくと何となく分かると思います。


 では、この本のご紹介です~♪
 
 まず、この本を執筆するにあたって筆者はHipHopを好む者・共感する者にとって「なぜHipHopは重要なのか?」「その者たちにとってのHipHopとは何か?」を疑問点として掲げ、この点から出発し、研究を進め、この本の出版に行きついたようです。
 確かに、この本が出版された2005年ごろまでには、HipHopがPopカルチャーの一つとして定着し、社会に完全に溶け込み、人種を問わずCDが売れ、産業として十分に成り立ち・・・いわゆる「一文化」として成立し、社会学的な見地からは注目に値するでしょう。
 しかし、文化として考えた時、HipHopは文化的にも経済的にも成功はしたが、社会的・政治的な実証は確立しておらず、この書籍では、その社会的・政治的な実証を行い、HipHopというものが、どういう効果があるのかを考えてみよう・・・ってのが出発点だと思います。

 頭をひねって書きましたが・・・なんか小難しそうですね(^^;)
 しかし、この本が面白いのが、2部構成をとっていて、前半はHipHopが知らない方でもわかるように、しっかりと歴史などを紹介し、文化的・経済的な成功を確認し、後半では、そのHipHopが社会的・政治的にはどういうものなのかを、実例を交え検証を重ね・・・みたいな感じになっており、意外と読みやすい所はいいですね。
 きっと、HipHopを知らない方にでも理解ができるように、綺麗にまとめ、学術書として誰でも分かるようにしたのかな~と思います。


 では、まず前半の「歴史書」的な部分をご紹介します。
 この本では「現代におけるHipHop」を研究にしているので、HipHopの歴史における細かい部分までの紹介はないのですが、逆に初心者にとっては分かりやすい内容になってると思います。
 イントロとしてザクっとOldSchoolな話をまとめ、話がいきなり現代的な内容に飛ぶのですが、主眼点が「ポップカルチャーにおけるHipHop」にフォーカスされており、現在進行形のHipHopを聞いてる・体感してる者には分かりやすいのかな~と思います。
 細かく紹介すると、エミネムのこととか、Jay-Zのこととか、現在のHipHopに繋がるところが多く、流れとしては「コア」だったHipHopが、90年代初頭より大衆に受け入れられ、「マス・カルチャー=ポップ・カルチャー」に変化していく過程を紹介しています。
 それに付随して、90年代の事象に関しては、割と突っ込んで書いており、歴史書としても十分成り立つ内容になっていますね・・・前回紹介した「Hip Hop Beats」が90年代初期までの歴史書としたら、こっちはそれ以降の歴史書として考えてもいいかも知れないですね。


 んで、本題は後半ですね・・・
 後半では「政治運動におけるヒップホップの闘い」とし、私達が考えてる音楽・ファッションなどの文化レベルのHipHopが、実生活である「社会」において、どのように作用・機能してるのかを考えます。
 なんか、難しそうな紹介ですが、読んでみると大変読みやすく、アメリカでの実情を知らない私たちにとっては大変参考になるところが多いです。

 実例の一つとして、カリフォルニア州での「刑務所新設問題」を上げています。
 実際は青少年更生施設のようなんですが、噛み砕いて説明すると、実際には若者の更生の助けになってない施設を、お上が作った悪法(提案21)のせいで、もっと施設が必要になる・・・という理由で新設する計画に、市民の反対運動の中に「HipHop」が生かされた・・・という流れを紹介しています。
 この件に関しては、細かい背景・詳細までしっかりと分析し、アメリカにおける人種・世代・クラスの格差問題として提示し、かなり分かりやすく紹介しています。
 んで、結論としては、普段は政治的な主張をしない(出来ない)HipHop世代の若者たちが立ち上がり「HipHopらしい主張」を行ったことで、この新設問題に一定の改善策を盛り込ませたそうです・・・

 上記はこの本での一例ですが、他にもラッセル・シモンズと政治とか、男社会であるHipHopにおける女の子の存在とか、トピックとしては興味を引き、かつ分かりやすい内容を筆者は提示しています。
 最終的には、社会的・政治的な見地として、HipHopがもたらす効果は、結論づけることは避けていますが、効果があると筆者は考えているようです。

 筆者の主張をまとめると、HipHopというものは「固定観念にはまらず、何者と違う存在であり続け(=オリジナリティーがある)、若者の想像力や活動の源であったり、希望やインスピレーションを与える存在」と考えてるようで、若者にとっての「自己主張」や「柔軟な発想」、「団結力」なんかの発信元と考えているようです。
 確かに、私もこの本から上記の内容を抽出し、書き出してみると、膝を打つ点が多く、自分の生活の中で考え方や行動に関して合致するところもあるな・・・と思いました。

 そして、筆者は、こういった行動形態が、実社会には生かされていなく、もっと活用していかなくては・・・と考えているようです。
 その点があったので、後半で事例を交えて紹介を繰り返し、考察をしたと思われます。
 おそらく、ユースカルチャーの可能性を考えた上で、HipHopが当然その機能を担い、保守的・非行動的な大人社会を変えていこう・・・みたいな意識が見受けられ、その可能性を感じていたので、HipHopを紹介したのだと思います。

 著者の主張は、私がまとめた(感じた)限りだとこんな感じで、個人的には肯定できる部分も多いですが、主張としては実証が少ないので、まとめきれなかった・・・と思います。
 ただ、問題提起という意味では価値があるし、既にHipHopに属している者にとっては存在確認みたいな効果が得られると思います。


 んな感じで、まとめてみましたが、興味がない人には辛い文章になっちゃったな~(^^;)
 まあ、その人にとっての「HipHop」って色々とあると思いますが、その価値を真剣に考えた時に、参考になる良い著作だと思いますので、読んでみる価値はあると思いますよ。
 当然、答え(=その人にとってのHipHop)は違うかも知れないですが、私も柔軟な考え方や発想をHIpHopから学び、楽しみの存在、精神的な拠り所としてHipHopを愛していますので、筆者の考え方(もっと社会に使っていこう)は賛成ですね!

 また、私はこの本の主張的な部分にフォーカスをしましたが、単純な歴史書としての役割もありますし、アメリカ社会の構造を知る役割としても分かりやすく書かれているので、お勧めが出来ます。
 初心者でも読めると思いますし、中級者以上の方には、歴史や考え方を見返すという意味で、大変価値があると思います。


 今回は文章ばっかりになりましたが、歴史書シリーズはこれで終わり・・・また面白い本があったら紹介しますね~♪


<Release Date>
Artists / Title : S. Craig Watkins 「ヒップホップはアメリカを変えたか?」
            訳者 菊池 淳子
            原題 : Hip Hop Matters
Genre : HipHop歴史本+文化論
Release : 2008年12月(オリジナルのUS盤は2005年)
Lebel : フィルムアート社 ISBN978-4-8459-0824-0


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