HipHop,R&B,Soul,Funk,RareGroove,DanceClassics,Garage,House・・・など、私が気に入っているMixTape,MixCD,その他もろもろを紹介するブログです。
DJ Spinbad 「That's My Sh??!!」(改定版)
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 え~、遂に重い腰を上げて、書き直してみました!!

 私の中では「これを超えるHipHop黄金期ミックスはなし!」と考えているテープで、このブログを始めた極初期にも紹介したテープです・・・

 ただ、当時の知識が浅はかで、事実誤認をしていた部分もあり、この作品の良さを全て紹介出来ていないと考えていて・・・だいぶ時間がかかってしまいましたが、改めて紹介し直したいと思います。
 紹介するに当たり、収録曲を掘り、かなり研究した上での紹介になり、久しぶりの気合の入った紹介になります・・・やっぱりレコを買わないと分からないことが多く、レコを買う度にSpinbadのヤバさを痛感していました・・・

 また、今回の記事においては、DJミックスが「ただ曲を繋いでいるだけ」の行為ではなく、そのDJの「技術」と「アイデア」と「センス」が融合することで生まれる「音楽」であることを伝えたく、かなり細かく紹介をしたいと思います。
 久しぶりの分析モードで文字数が多くなっておりますが、耳から聞いただけでは分からないことを中心に解説し、Spinbadの良さに加え、DJミックスの素晴らしさを語りたいと思います。

 では、いつも以上に気合の入った紹介したいと思います!!



(1)DJ Spinbadについて

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 では、書き直しなので、Spinbadの紹介から始めます・・・

 Spinbad(スピンバッド)はNYのクイーンズ出身のHipHop系DJで、今現在はアメリカでの活動をベースにしつつ、世界各国を飛び回るDJです。
 持ち味であるスクラッチ&2枚使いを駆使し、HipHopをベースにしながら様々な音楽をプレイし、聞く人を確実にロックできるDJの一人かと思います。

 DJに関しては80年代中頃、彼が少年時代にJazzy JeffやCash Moneyのプレイを聞き、DJに興味を持ったようで、インタビューによると「Jazzy Jeff & Fresh Prience / Live at the Union Square」を初めて聞いたとき、自分の道(=スクラッチャー)が決まった・・・そうです。

 そして、練習の日々を繰り返し、HipHopの黄金期をしっかりと体験し、90年代中ごろより、各種ミックス作品のリリースで名を上げ、ヘッズから信頼を得た流れがあります。
 Battle系の大会などにはほとんど出てなかったようですが、バトルDJ顔負けのスクラッチ&2枚使いと、アイデア満載の選曲とミックスが出来る数少ないDJで、彼のミックステープを通して、日本にもファンが大変多かったと思います。

 また、ヘッズ以上に業界からの信頼も厚く、一時期はNYの「POWER 105.1 FM」で帯番組を担当したり、TV番組に出演したりもしてて、ガッツリと「DJ」で仕事をしてるお方でもあります。
 ここ最近、日本にいるとSpinbadの評判を聴かなかったりしますが、恐ろしいぐらい海外の各国でプレイをしてて、それだけ信頼があるお方なのかと思います・・・


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 そんなSpinbad大先生においては、彼が製作した「ミックステープ」の存在が大変大きく、SpinbadのDJ活動自体を後押しになったのは明白で・・・ほんと重要な存在だと思います!!

 まず、彼のキャリアとしては、90年代中ごろに所属していた「Cold Cutz Crew」の一員として何本もミックステープを発表し、着実に知名度をあげていった経緯があり、これらのテープにヤラれた方は本当に多いかと思います・・・

 印象的な作品だと、確実に見捨てられていた80'sの曲のみを使用してコスリ倒した「The 80's Megamix」が有名で、これでシーンに「Spinbadのテープはヤバイ!」という評判を与え、そこから彼の名声が始まったと思います。

 80'sなんかは正にそうで、Spinbadに関しては、ミックスの内容のアイデアだったり、テープの構成力だったり、他のDJよりも結果としてイルなんだけど秀でている部分が大きく、かなり意識を持って「ミックステープ」を作っていた部分があり、それが作品のヤバさに繋がっていたっと思います。
 それは、ミックステープという存在を「DJの作品」であることを意識して作っていた点が大きく、単なる消費物ではない存在として作っていた点が大きいです・・・彼の言葉を借りれば「This is the DJ Tape, Not a Compilation」に繋がるかと思います!!

 そして、当然ながら、そのイルなテープは日本にも渡り、耳の早いリスナーや尖鋭的なお店のプッシュなどがあり、着実にファンを増やした経緯があります・・・

 特に、80's Megamixは、メチャクチャ重要で、HipHopブームが始まった90年代中頃にリリースされ、HipHopじゃない曲でもHipHopに仕上げることが出来、それがメチャクチャカッコよくなることを教えてくれ・・・HipHopの本来の自由さを教えてくれた一本だと思います。
 私個人も、80'sを高校生~大学生の頃に聞いて、ユニオンで確実に100円で売っているダメレコで、ここまでカッコよくテープを作ることに衝撃を受け、HipHopの本来の自由さと、その人のアイデア次第でカッコ良くなることを知り・・・ミックステープの魅力に気づかされた経緯もありました!

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 んで、今回紹介するテープは、その日本での人気に裏打ちされて作られたテープと言ってもイイかも知れません。

 今回のテープは、あの渋谷Manhattan Recordsが企画したミックステープで、通称「2000本三部作」の最初の一本になります。

 99年4月にリリースされた作品で、既に一部では知られた存在だったSpinbadのテープとあって、2000本という恐ろしい本数ですが、飛ぶように売れ、割と早いタイミングで売り切れたテープだったと思います・・・

 ミックステープって、DJ側が主導になって作っているイメージがありますが、当時は国内でリリースする人は少なく、かつ内容が良い作品を作れるDJが少なかったので、レコ屋さん主導で作るテープも少なくはありませんでした・・・
 それこそ、同じ渋谷の名物店の一つであったCisco Recordsのノベルティーテープなんかもそうですが、お店側が積極的にプッシュや企画をして、シーンを盛り上げていた流れがあり、Spinbadもそういった流れで紹介されていたかと思います。

 んで、この作品が評判だったことから、その後もR&Bモノの「Needle to the Groove」、ダンクラモノの「The Classics」とリリースが続き・・・既にスピ中毒だった私は、どのテープも発売直後に購入し、悶絶していました・・・(^^;)

 その中で、今回の第1作は死ぬほど聞いたテープで、このテープがあったからこそ、私が今でも「ミックステープ」を愛している理由になるかと思います!!

 なぜ、この作品が良いかは、以下で可能な限り紹介をしますが・・・本当に影響を受けたテープです・・・

 このテープがリリースした頃は、大学生になりたてで、実家から遠くにあった大学の校舎に向かうのに良く聴いてたり、当時、家で飼っていた犬を散歩させるときに聞いてて・・・気づいたらその良さに気づかされたテープだったと思います。

 個人的には、この犬の散歩が重要で、ウチの犬は死ぬほど散歩を生きがいにしてたので、夜に散歩をしながら聞いてた訳ですが・・・散歩の時にミックスを聴いていると、そのミックスの世界に入りやすく、良いテープはその魅力に取りつかれてしまいます・・・
 その中で、Spinbadのこの作品は、HipHopという意外とストーリー作りが難しい題材で、内容のノリの良さをキープしつつ、心をひきつけるストーリー性が最高で・・・気づいたら、そのミックスのグルーブに乗せられ、犬も困るぐらいにノリノリになっていました(^^;)


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 そんな訳で、以下ではこの作品の良さを多角的に紹介したいと思います!!

 ただ、この作品のヤバさを紹介しようとなると、実際に聞きながらでないと分からない部分も多く、今回、私が紹介したいと思う部分の大半が、その「ミックス」を聞きながらでないと理解することが出来ない部分が多いと思います・・・

 このブログのポリシーとして、そのミックスの良さを「言葉で表現したい」という考えがあり、この時代にあり得ないぐらい音源引用をしていませんでした・・・これは、収録曲の紹介の際になるべくオリジナル盤のレコードの写真を載せていることもそうで、私の中で「掘る」という行為にリスペクトがあるので、守っていたことの一つになります・・・
 ただ、今回ばかりは、テクニカルな部分を中心に説明をしたいので、音を聴かないと厳しいな・・・と書いてて思いました・・・

 そんな訳で、今回は音源を聞きながらの紹介の方が良いと思い、自分の中の禁止事項を破って、このテープの音源をフルでアップしてみました!!

 裏の説明としては、Spinbadのサイトに、割と昔のミックステープの音源がアップされているのに、コレだけはなぜかアップされてなく、そういった流れがあれば上げてもイイかな~と思い、数年前にMP3化したデータをアップしてみました。
 今回は、初めてMixcloudに登録し、以下で紹介する説明も、そのアップした音源の時間に合わせて紹介をしたいと思いますので、聞きながら私の紹介を読んで頂ければ幸いです・・・

 なお、音源に関しては、真面目にMP3化(?)してないので、お聞き苦しい部分があると思います・・・その辺はご容赦ください。


『Side A』

DJ Spinbad / That's My Sh??!! Side:A by Mixtapetroopers on Mixcloud


01 Das EFX / Mic Checka (Remix)
02 A Tribe Called Quest / Bonita Applebum
03 Redman / Tonite's Da Nite
04 Common Sence / Soul By The Pound
05 Lords of the Underground / Chief Rocka
06 Black Sheep / Flavor of the Month
07 Poor Righteous Teachers / Rock Dis Funky Joint
08 Poor Righteous Teachers / Shakiyla
09 D-Nice / Call Me D-Nice
10 Lords of the Underground / Funky Child
11 Akinyele / Ak Ha Ha! Ak Hoo Hoo?
12 Off & On / Trends of Culture
13 Das EFX / They Want EFX
14 Marley Marl feat Craig G / Droppin' Science
15 Special ED / I Got It Made
16 Black Sheep / The Choice Is Yours
17 Mark the 45 king / 900 Number
18 A Tribe Called Quest / Scenario
19 Naughty by Nature / O.P.P.
20 Naughty by Nature / Hip Hop Hooray
21 Boogie Down Productions / Duck Down
22 Nice & Smooth / Hip Hop Junkies
23 Cypress Hill / How I Could Just Kill A Man
24 Redman / Time 4 Sum Akshun

『Side B』

DJ Spinbad / That's My Sh??!! Side:B by Mixtapetroopers on Mixcloud


01 Nice & Smooth / Funky 4 You
02 Gang Starr feat Nice & Smooth / DWYCK
03 Run DMC / Down With The King
04 Leaders Of The New School / Case Of The P.T.A. (Remix)
05 Zhigge / Toss It Up
06 Run DMC / Beats to the Rhyme
07 Boogie Down Productions / I'm Still #1
08 Ultramagnetic MC'S / Ease Back
09 Showbiz & AG / Soul Clap
10 LL Cool J / Mama Said Knock You Out
11 Public Enemy / Bring the Noise
12 Special ED / Come On Let's Move It
13 Eric B. & Rakim / I Know You Got Soul
14 Rob Base & EZ Rock / It Takes Two
15 Super Lover Cee & Casanova Rud / Romeo
16 Slick Rick / I Shouldn't Have Done It (Blend)
17 Big Daddy Kane / RAW (RAW '91)
18 Eric B. & Rakim / Let the Rhythm Hit'em
19 LL Cool J / Jingling Baby
20 EPMD feat LL Cool J / Rampage
21 Leaders Of The New School / Sound of the Zeekers
22 Slick Rick / Mona Lisa
23 Biz Markie / This Is Something For The Radio
24 Public Enemy / Welcome To The Terrordome
25 Showbiz & AG / Party Groove
26 Pete Rock & C.L.Smooth / Creator
27 Big Daddy Kane / Warm It Up, Kane
28 Chubb Rock / Treat 'em Right
29 De La Soul / Saturdays
30 Black Sheep / Strobelite Honeys





(2)作品について

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 では、作品の紹介にいってみましょう!

 とりあえず、A面から聞き始めると、最初にザラザラとしたノイズが入ったり、最初のDas EfxからATCQへのミックスで、ありえないぐらい音質が変わったりしてますね・・・
 一応、補足をすると、ノイズは私の録音のせい(音量の調整をマニュアルでしていた)で、後半はSpinbad先生のイルマティックなセンス(?)の賜物でしょうか・・・以下、Spinbadのイルな部分を中心に、深く話をしていきたいと思います!!

 この作品は、先ほども触れたように、HipHopの黄金期と呼ばれる「80年代末~90年代初期」の曲で選曲をした作品で、人によっては「HipHopクラシックミックス」「黄金期ミックス」と呼ばれる作品になります。

 多分、今となってはこの点も指摘しないといけないと思うので、この点から紹介しましょう・・・

 黄金期という言葉を説くと、その文化や音楽が「一番栄えていた」時期をさす言葉になり、HipHopにおいては80年代末~90年代初期の楽曲を指すことが多いです。
 事実に即すると、売上的には00年代初期とかの方があるのですが、HipHopという音楽が持つ「ノリの良さ」が一番色濃く出た時期の曲がこの時期に該当し・・・何年経過してもその曲の魅力が古びない、いや古びないどころかその魅力に勝てない曲達が多いので、敬意を表して黄金期と呼んでいる流れがあります。

 それこそ、上の写真に上げた「Shobiz & AG / Party Groove」「The 45 King / 900 Number」のような曲は、未だに聞けば、即座に電気が走って首を振ってしまうような曲が多く・・・こういった曲を中心に選曲をした作品になります。
 
 もうちょっと深く説明すると、この時期のHipHopは「サンプリング」を中心に楽曲製作をされた内容で、サンプリングという行為が進化してた途中ぐらいの時期なので、とにかくノレて、インパクトのある使い方をすることが多く・・・他の時期のサンプリングしたHipHopよりも「ノリの良さ」や「黒さ」が目立つ楽曲が多いかと思います。
 つまり、70年代とかのファンキーなブラックミュージックの良さを、サンプリングという形で引き継いだ時期の曲とも言え・・・難しいことを考えずに、体が反応してしまう曲が多い時期かな~と思います。

 そんな曲達をSpinbad先生がミックスし、とてつもないグルーブに仕上げているのがこの作品になります。

 いつもの紹介に従って、先に「選曲的」な話をしておくと、先ほども紹介したShowbizや45kingのようなド定番をプレイしつつ、全体的には「割と渋い曲」を多く使って、ドファンキーなミックスに仕上げているのが、この作品の特徴になると思います。

 それこそ、トラックリストを見ただけで、HipHopに詳しい方であれば「渋いな~」と思うでしょう・・・律儀にA面から聞き始めてた方なら、聞こえてきたであろう「Lords of the Underground / Chief Rocka」「Brack Sheep / Flavor of the Month」などは選曲的に「いいところを突いてくるな~」と思う内容ですよね?
 この手の黄金期ミックスを作る時、その作るDJの趣味とかによって大きく左右される部分が多いのですが、この作品においては、とにかく「ノリの良い曲」を有名無名を問わず選曲をしている感があり、結果的にこういった渋い選曲になっているのかな~と思います。

 ただ、今回においては、選曲面の話は実は二の次で、以下で紹介する「スクラッチと2枚使いで奏でるグルーブ」「オリジナリティーに富んだミックスのアイデア」、そして「選曲のグルーブの高め方」が、単純なんだけど複雑に織りなし、結果として生まれる「作品のストーリー性」が重要になってくると考えます・・・

 そのため、選曲の話は、かなり渋いところを突いているのですが、今回は深く追求する必要がないかもしれません・・・
 むしろ、使用する楽曲の「使い方」と「配置の仕方」が絶妙で、これがSpinbadのセンスの良さになってくると思います!

 以下では、それらの点をもっと深く掘り下げていきたいと思います。



①スクラッチと2枚使いで奏でるグルーブ

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 A面から律儀に聞き始めた方なら、既にスクラッチや2枚使いが半端無いことに感じつつあるかと思います・・・
 ただ、一聴しただけでは理解できない部分があると思うので、詳しく紹介をして行きたいと思います。

 Spinbadに関しては、いわゆるターンテーブリスト出身と言っても過言ではないぐらいスクラッチ系のスキルがあるDJで、その上でアイデアと選曲力に優れているという説明が一番分かりやすいかと思います。
 なので、説明をしていくにあたり、A面(Side A)を例にとってスクラッチ系の技の解説をしていきたいと思います。

 では、例示としてA面13:40ぐらいから始まる「Lords of the Underground / Funky Child」から「Akinyele / Ak Ha Ha ! Ak Hoo Hoo ?」の流れを紹介しましょう・・・ある程度、スクラッチとかが分かる人なら「ヤバい・・・」と思うラインでしょう!

 まず、前曲の「D-Nice / Call Me D-Nice」でも展開良く2枚を行い、ラップが上手く切れてインストになった部分から、Funky Childの華とも言えるイントロホーンを華麗に擦り、そのグルーブとテンションを引き継ぎつつ、Funky Childに流れていく流れは、いつ聴いても悶絶です・・・

 個人的には、Spinbadのスクラッチは、まるでチャンバラ映画で、大人数の悪役を斬って斬って斬りまくっていくような、リズミカルでありつつ、聴いていると次第に引き込まれ、結果として大変気持ちいいグルーブを出せるDJだと思っています。
 なんでしょう、擦っているだけで、擦っている音に「表情が生まれている」感じで・・・まるで、ジャズミュージシャンのインプロゼーション・ソロを聴いているような擦りで・・・ほんと引き込まれます!

 ちなみに、この部分、深い話を入れておくと、あえてインストのホーンイントロで擦って、そこから直ぐにラップが入っている本編にスクラッチカットインで繋いでおり、最高です・・・楽曲の方だと、ホーンイントロにラップが入っていて、この流れだと合わないので、インストから擦ったと思われます。


 また、次の曲のAkinyeleも、繋いだ瞬間から勢いを止めずに始まるスクラッチ込みの2枚使いの激熱さといったら・・・最高ですね!!

 Funky Childから、確実にノリをキープしつつタイミング良くカットインしてくる部分もヤバいですが、この2枚使いスクラッチの「キレキレ感」もSpinbadの魅力の一つだと思います。
 先ほども指摘した、スクラッチに多彩な表情がありつつ、とにかくスピーティーに斬っていく様は気持ちいいですね・・・これも、チャンバラ映画に例えると、何十人もの敵役が襲ってくるシーンで、敵の攻撃を冷静に交わしつつ、スピーディーに斬っていく感じですね・・・
 その上で、Funky Childから続く、ファンキーなグルーブを一切落とさないどころか、Akinyeleに繋いで擦ることで、更にグルーブのスピード感を増やしている辺りも流石です!!

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 そして、今度は、話の流れから「2枚使い」をもう少し深く掘り下げたいと思います。

 先ほど、スクラッチに「表情がある」みたいな表現をしましたが、2枚使いにも該当し、表情があるどころか、2枚使いをすることでプレイした曲の印象が良い方向で変わる2枚使いが多く、ヤラれます!!

 例えば、先ほど説明したFunky Childの前の曲である「D-Nice / Call Me D-Nice」であれば、前曲からノリをキープしつつ、スパッとカットインし、そのまま2枚使いでグルーブを高めています・・・
 また、13:20のところで「♪Taking out you suckers and you don't know how I did it♪」というラインでもの凄い2枚使いを簡単に決めてます・・・

 また、D-Niceはかなりマイナーな曲なので、少しメジャーな曲であれば、23:45から始まるMarly Marl全盛期のクラシック「Marley Marl feat Craig G / Droppin' Science」であれば、ド頭の「ゲ、ゲ」という擦りフレーズを巧みに2枚とスクラッチを交えて、昇華させていきます・・・
 「ゲ」の2枚使いのスピードの速さもさることながら、スクラッチの強弱とタイミング、そして素晴らしいアイデアでメロディーのようなグルーブを作り、 Droppin' Scienceのブレイクの良さを光らせています!

 では、少し解説をしましょう・・・

 まず、Spinbadの2枚使いに関しては、スクラッチと同様にバトルDJ顔負けなスキルがあり、相当上手いと思います・・・特に、D-Niceの2枚使いは、早いジャグリングをしつつ、2枚使いをするポイントをずらしていき、曲のラップとドラムを効果的に出しているプレイが凄すぎです!

 恐らく、こういった技の部分って、聴く側がスクラッチなり2枚使いが出来ないと理解できず、分からない人だと「なんか凄いな~」で終わってしまいますよね・・・私も凄いスクラッチなどが出来るわけではないですが、Spinbadに関してはかなり上手いと思います。

 ただ、ここで指摘したいのが、その「上手い」部分を超えて、Spinbadの2枚使いはDJミックスにおいて「プレイした曲を光らせるために効果的に使われている」点だと思います。

 2枚使いって、結局はプレイする曲の元々の構成を「改ざん」する行為で、それが2枚使いの醍醐味なんだと思いますが・・・プレイの仕方によっては、元々の曲を良くすることも悪くすることも内包した行為だと思います。
 まあ、単純に2枚使いが下手だったら悪くなることの方が多いかと思いますが、スクラッチや2枚使いに自信のあるDJ程、その技の精度に注目が集まりがちで、プレイする原曲の存在感を消してしまうこともあり・・・上手ければ良いとは言い切れない行為かな~とも思います。

 その限りにおいて、Spinbadの2枚使いは、プレイする曲との「融合っぷり」が半端無く、2枚使いをするだけでプレイした曲が良くなる部分が大変多いと思います!

 その一例としてD-Niceの曲を例にした訳ですが・・・先ほど指摘した2枚使いをズーッと聴き続けると、元々の曲に入っているかのような融合っぷりで・・・逆に原曲を聴いて違和感を覚えるほどの融合っぷりだと思います!
 また、 Droppin' Scienceにおいては、頭のブレイクだけで1曲を作り上げて別の曲(原曲を更にカッコよくさせるリコンストラクトの意味で)に仕上げており、融合どころか進化までさせてしまっています!!

 DJプレイの醍醐味は、プレイの仕方やスクラッチ&2枚使いをすることで、プレイした曲がカッコ良くなるのが重要で、その有機的な実例の一つだと思います・・・D-Niceがこんなにも光るとは思わないですよね!!



②独創性に満ち溢れたアイデアの数々

 Spinbadに関しては、パッと聴くと「もの凄いスキルがある人だな~」と思う方が多いかと思います・・・

 それも間違えではないのですが、そのスキルの裏側にはSpinbad独自の「アイデア」が多彩で、これがあることでミックスを更に深めています!
 難解な部分もありますが、総じて「実はシンプル」な部分も多く、Spinbadが「スキルのDJ」ではなく「アイデアがある上でスキルがあるDJ」であることを紹介したいと思います!!

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 まず、比較的分かりやすいアイデアから行きましょう!

 引き続きA面で、「Black Sheep / The Choice Is Yours」をスピーディーに2枚使いを入れながらガンガン盛り上げ、定番の3バース目に入る直前(28:25~♪Pick it up、Pick it up・・・のところ)で谷を作ってスクラッチカットインを入れてくるのが「Mark the 45 king / 900 Number」です!
 Black Sheepで作ったグルーブを更に引っ張る展開の作り方が上手く、900に入った瞬間の「首の振らせ方」は上手いですね・・・これはグルーブを繋いで行くための「繋ぎのアイデア」でしょうか?

 ただ、個人的には、この次の繋ぎの方がグッときます・・・

 「A Tribe Called Quest / Scenario」に繋いでいくのですが、900が4小節経過したところでScenarioの「♪Here we go Yo~」をカットし、段々と擦りを増やしながらこのフレーズを足していき、最終的には900を切って、そのフレーズのトランスフォーマーでScenarioに流れるという展開です。

 まず、この部分は、実は意外とプレイするのが難しい900 Numberを生かす措置だと思います・・・900って、カットインなどでボムらせると速攻性のある曲ですが、ダラダラとプレイすると途端にグルーブが萎れてしまう曲だと思います。
 その意味で、早い段階でScenarioのフレーズを擦ることでバウンスするグルーブを維持しているかと思います・・・これは「曲を生かす為のアイデア」ですね。

 また、Scenarioのプレイの仕方も上手く、これも「曲を生かす為のアイデア」が光っています・・・

 Scenarioって、意外とプレイするのが難しい曲で、頭のメロディーフレーズからブっこむのなら、先ほどの900と同じように、グルーブに谷を作ってブっこむしかないですよね・・・
 また、Spinbadのように「♪Here we go~」の部分から入れていくのであれば、カットインにしろ、ミックスにしろ、合わせる曲のグルーブとメロディーが合わないと、意外と入っていかない曲だと思います。
 その中で、Spinbadは後者の方法を取った訳ですが、先ほども触れた900の良さを光らせる措置を取りながら、Scenarioに効果的に繋げるようにし、さらに繋げたScenarioも頭からバウンスするように設計されたのが、この繋ぎになると思います!

 この一連の流れ、僅か1分30秒の間(!)なのですが、プレイした「曲を生かすアイデア」も、そしてその橋渡しとしての「繋ぎのアイデア」も溢れた部分で、とにかくグルーブを落とさないプレイが分かると思います。

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 ではでは、他のアイデアも説明しましょう・・・ずーっとA面ばかり説明してたので、そろそろB面でも紹介をしましょう!!

 Spinbadって「言葉使い」が異常に上手いのもポイントで、これもアイデアに溢れている部分かと思います。

 分かりやすい例として、上の「LL Cool J / Jingling Baby」から「EPMD feat LL Cool J / Rampage」への繋ぎで紹介してみましょう・・・タイムコードはB面の29:05あたりです・・・
 
 まず、結果的にどう繋いでいくかというと、それぞれのサビを上手く活用した繋ぎで、LLの「♪jinglin baby, Go 'head baby」とEPMDの「♪~~slow down baby」において、LLの「(Go 'head) baby」の部分を、EPMDの「(slow down) baby」に差し替えて、サビ終わりにEPMDに流れるという展開です!
 
 こうしたラップなりサビなりで、同じ言葉や語感が近い言葉を利用して次の曲に繋ぐ術は、このB面で強く爆発しており、個人的にはこのLL→EPMDの部分が最強だと思います!!
 この部分は、更に付け加えると、EPMDに曲が変わったら、LLのバース(2バース目)に繋がっているのにもグッときますが、結果的には「言葉を使ったアイデア」に加えて、先ほど説明した「曲を生かすアイデア」「繋ぎのアイデア」も含まれており、最強です!!

 理由を説明すると、まず、Rampageの繋ぎの悪さを、いかにプラスに持っていくかがあると思います・・・

 Rampageって、先ほどのScenarioと同様に、イントロに印象的なフレーズがあり、それで突っ込むのは上手くやれば容易いが、ビートから繋ぐのが意外と難しい曲だと思います・・・また、DJ Scratchの最強な擦りから繋げるのも難しいですね。
 これはEPMDの殆どの曲に言えるのですが、私の考えだと、ラジオやライブなどで頭から曲をプレイする前提で作られているため、意外とDJで繋ぎにくい曲が多いと思います・・・EPMDのヒット曲であれば、Crossoverはまだプレイされますが、このRampageやHeadbangerって意外とプレイされないのは、EPMDの繋ぎの悪さがあるからだと思います。

 その中で、いかにグルーブを繋げるかという課題に、Rampageのイントロを使わずに、先ほど説明した「サビの言葉」で繋ぐ方法で対処しているのですが、奥深く聴くと細かい技が分かり、結果的にグルーブを生かした繋ぎを行っています。

 例えば、Rampageのサビと言えば、DJ Scratchの最高な擦り(フック擦りの最高峰ですよね!)がある訳ですが、それを上手く避けて「~(slow down) baby」の部分を使ってるのにはビビりました・・・実はグルーブを繋げるという意味では、Scratchの擦りは「壁」になってしまい、それを上手く避けてミックスしています。
 また、LL側も配慮があり、あのサビの部分だけ上ネタがなく、ビートのみになっているので「グルーブの谷」が出来てるんですよね・・・おそらく、上ネタがあるところで同じことをしても、音がぶつかってしまうのもあるし、一度グルーブを落として、Rampageに繋いだ時の爆発力を生かす為に行っていると思います。

 アイデア的な話は以上にしますが、最後にもう一つ指摘を・・・

 説明をした900→Scenarioも、LL→EPMDも、文章の量だけみれば「複雑なのかな~」と思いますが、実はかなりシンプルな技ではあるかもしれません。
 Scenarioの擦りは真似が出来ませんが、発想したアイデアは意外と単純です・・・Spinbadの場合、以前力説した80's MegamixでのManeater2枚使いもそうですが、意外とシンプルな方法なんだけど、それが最高に光り輝くようなDJプレイをしています・・・この点もSpinbadを語る上では外せません!!

 なお、言葉遊び的な部分だけだと、更にありますね・・・それは、次の話してちょこっと入れておきます。



③グルーブの作り方の上手さ

 次は①と②でも断片的に紹介をしていましたが、Spinbadに関しては曲を繋いでいくことで生まれる「グルーブの良さ」が異常に良いのが素晴らしすぎます!

 ①と②の説明において、曲と曲を「繋ぐ」という部分では、必ず前の曲のグルーブを繋いだり、次の曲のグルーブを引き延ばす為の措置が取られていると説明しました。
 そして、この観点で数曲を流れで聴いてみると・・・全てが繋がっており、曲と曲をかけ合わせることで生まれる効果を最大限に発揮していると思います。

 以下では、①と②の説明で足りなかったことを捕捉しつつ、そういった曲をミックスしたことで生まれる「グルーブの良さ」を紹介します。

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 それでは、この話はB面で行いましょう・・・ちょうど、ド頭からの部分なので、一番分かりやすいかと思います。

 僅か5分ぐらいの流れなので、とりあえずB面の頭から聴いてみてください・・・

 どうですか、かなり早い展開で曲が進んでいきますが、とにかく「ノセられちゃう展開」になっていますよね・・・
 
 多分、このテープが好きな方だと、この部分の展開の良さが印象的だと思う方が多いですよね!

 実質的に写真の4曲だけで構成していく流れなのですが、気づいたらSpinbadの流れ(グルーブ)に乗せられちゃう展開は素晴らしく、Spinbadの良さが分かる部分かと思います!!
 ほんと、気づいたらその流れに乗せられてしまう部分で、細かいことを気にしないでも楽しめるミックスになっていますが・・・背景には相当スキルとアイデアがつまっていますので、その点も加味しながら紹介をしたいと思います。

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 まず、1曲目は「Nice & Smooth / Funky 4 You」から軽快にスタートするのですが、ド頭から渋い事をしてます!!

 曲の後半にあるSmooth Bのパートである「♪His cuts ~」という言葉から軽く擦り、その部分からミックスしはじめ、頃合いをみて勢いのあるGrag Niceのパート(1バース)に戻し、曲を走らせます・・・

 ここの部分から、Spinbadのアイデアが炸裂してて、「♪His cuts ~」の部分を擦ったり、その直後の歌詞で「♪Teddy Tedd is gonna make it real funky for you」のTeddy Tedd(Awesome 2の一人/お目付役でもあり、バックDJを担当してた人)の部分を「Spinbad」という言葉に差し替え、そのままGreg Niceのパートになだれ込みます。

 まず、言葉遊び的な指摘だと、「♪His cuts ~」の部分を擦っている時点で「ヤツが擦る」みたいな意味にしており、そのまま、Greg Niceのパートになる前の部分も、その部分を受けて「Spinbadはお前に本当のファンキーを与えてやる!」みたいなライムに変化させ、本編に流れ込む構成を取っています。

 ミックステープの父であるKid Capriもそうでしたが、Spinbadもこういった「言葉づかい」はホント上手く、ヤラれます・・・

 「♪His Cuts」の部分もそうですが、強調したい言葉をあえて擦ったり、自分の名前を入れて、歌詞の意味を自分に手繰り寄せたり・・・歌詞が分かる英語圏のDJだからこそ出来る業であり、聴いている人を意味だけで引き込んじゃう部分もあり、間違えないです!!
 
 そして、そいうった言葉の意味を出しつつ、実は「スピード感」をつける為の構成になっているのも注目です。

 この曲のオリジナルを聴くと、じつはイントロからGreg Niceのファーストバースまでがあまりシマリのない展開で、Spinbadとしては、最初っからトップギアで行きたいので、最初に「♪His Cut~」の部分を持って来て、そこからGreg Niceのパートに戻す構成にしたのだと思います。
 つまり、実質的にビートレスなイントロを利用せず、最初っからノレる展開を用意して、Greg Niceのパートでトップギアに入るように「曲の構成」を変えているのが、この部分です。

 この作品においては、そのスピード感(=グルーブ)を増す為に、2枚使いやスクラッチを入れたりしてるのですが、この「構成変更」も多用してて、メチャクチャ効果が発揮されています。
 ①のスクラッチの部分で紹介したFunky Childの入り方もインストからオリに入ってきたりしてましたが、その曲を良くするための「構成変更」は多用してて、これもSpinbadの魅力になっています。


 んで、Greg Niceのバースが終わらない所で、大胆に「Gang Starr feat Nice & Smooth / DWYCK」にカットインし、Greg Niceのパートに繋ぎ、スピード感を維持したまま、ミックスが進みます!

 まず、Greg Niceのパートで繋いでくるアイデアもありますが、カットインの時点で渋くって、DWYCKにおいてPremierがGreg Niceの名前を擦ってる部分の元ネタからカットイン・・・まるで、カットインした後に、終わった曲の方で擦っている感じもあり、構成的に上手いですね。
 
 また、ここでもイントロブレイクを使った2枚使いを披露するのですが、表情の付け方が絶妙ですね・・・僅か15秒ぐらいの間に計3回の2枚使いをしていますが、全て違う部分で擦ってて、スピード感を増し方が上手すぎです。
 特に、2回目のスネアでの入り方が予期せぬタイミングで入れてくるので、聴いてる人の背筋を伸ばすような効果があり、2枚使いで聴く人を引き付けちゃうあたりは上手すぎです・・・

 ここまで、僅か2分(!)ぐらいの間でしたが、これほどまでに技とアイデアが詰まっています・・・そして、その技とアイデアが、選曲のスピード感(グルーブ)を増す為の措置であったことが分かります。
 なんでしょう、最初っから「首を振らす」為の展開にしてるんですよね・・・そう、ガン上げする為ではなく、首を振らして次への展開を考えた構成だと思います・・・

spinbad_tms_028.jpg spinbad_tms_030.jpg

 そして、説明はこんなに長いのに、経過は約3分、やっと3曲目です・・・

 Greg Niceのバースの最後の「♪Peace out Premier take me out with the fader」の「Peace out Premier」の部分を「Hey Yo ! Spinbad」に差し替えて、次の曲の「Run DMC / Down With The King」にカットイン・・・ここの展開も素晴らしいですね!
 
 まず、言葉的には「よう!Spinbad!(ミキサーの)フェーダーを切って、次の曲にいこーぜ!」みたいな言葉にしたと同時にカットインして次のRun DMCにいってるのが渋いっすね・・・ほんと、言葉の使い方が上手いです!
 ここで指摘するのも変なタイミングですが、A面は後編集はほぼなしのガチンコミックスですが、B面はオンタイムのミックスで出来ない事のみオーバーダビングしてて、こういった声乗せは後処理です・・・でも、そのセンスの良さと融合っぷりが比類しません!!

 そして、グルーブ的な話も重要で、DWYCKで散々首を振らせておいて、そのグルーブを維持しながら、ProduceをしたPete Rockらしい首の振らせ方にシフトアップさせているのも上手いですね・・・

 最初の2曲は、ほぼベースラインやドラムラインで引っ張ってた曲ですが、3曲目ではベーストラックは同様の引っ張り方を含みつつ、上ネタのホーンが引っ張りをプラスにし、もっとグルーブを引っ張る展開に急シフトさせてて上手いと思います。
 淡々と首を振らせてたのが、この曲でカットインするだけで、盛り上がりのグルーブをステップさせており、ここはSpinbadの「選曲の組み立ての上手さ」が出ていると思います!!

 この項では「グルーブの良さ」として説明をしていますが、その根幹にあるのがSpinbadの「選曲の組み立ての上手さ」になります。

 Spinbadのミックスは、プレイしている曲を2枚使いやスクラッチで彩ったり、次の曲にミックスする際の繋ぎ方だったりで、曲単位でノリの良さをキープしている感が強いのですが、実は、それにプラスしして、戦略的に曲を選曲して、それを組み合わせていくことで、ミックスのグルーブを高めている部分が非常に強いです。
 分かりやすい表現だと、HouseのDJのように、数曲単位で流れを作っていく方法論ですね・・・例えば、ある曲を盛り上げる為に、その数曲前から盛り上げる為の「階段」みたいのを仕込んでいく選曲で、曲と曲を繋ぎ合わせることで生まれるグルーブを生かしたミックスになるかと思います。

 この点、結構面白い点なので、もう少し説明を加えましょう・・・

 HipHopって、クラブプレーとミックス作品とではDJの方法論が多少異なりますが、割と「ブっ込み」な盛り上げ方が主になるのかな~と思います。
 例えば、ある盛り上がる曲をプレイする際に、ある程度グルーブを落とし、お客さんを焦らした上で盛りがる曲をブっ込むみたいなことはしてて、それは先ほど説明したHouse的な盛り上げ方とほぼ大差はないですが、その「階段」の勾配の差には開きがあると思います。
 つまり、Houseは割と緩やかな勾配とすれば、HipHopはかなり急な勾配のようなイメージで、その点においてはHipHopのミックスは選曲の積み重ねで勾配を作ることはあまりない(意識していない)かと思います。

 話をSpinbadに戻すと、そういったHipHop的な階段の登り方も当然しているのですが、House的な階段の登り方も同時にしており、これがSpinbadの魅力です!!

 その上で、このB面序盤のミックスに話を戻すと、グルーブを一段高める意味で選曲したRun DMCの後は「Leaders Of The New School / Case Of The P.T.A. (Remix)」をプレイするのですが、コレを光らせる為の選曲であったと思われます。

 プレイとしては、Run DMCの2バース目で、ProをしたPete RockがSucker MC'Sの名文句をライムしたあと、Suckerのインストにスイッチし、後のせのスクラッチをかぶせつつ、早い展開でLeadersにミックスしてますが・・・この展開でLeadersを聴くと、思わず踊ってしまう展開が仕込まれており、大変上手いです!!
 事実として、このLeadersは長めにプレーし、その後にプレイする「Zhigge / Toss It Up」も同じグルーブで繋いでいき・・・いわゆる「ダンサー大喜び」な状況を作っており、この展開に持ち込みたい為に、選曲を戦略的に組み合わせていたと思われます。
 
 この項で紹介している選曲の結論になりますが、この僅か4曲のミックスは、ミックスのスタートから、どうやってシフトアップをして、短時間でピークに近い状態に持っていくか?を実践したラインだと私は考えています。

 さーっと、聴くと流れてしまうかもしれないですが、スクラッチや2枚使い、そして曲の構成変更などのアイデアを駆使し、最初からスタートダッシュさせてピークに近い状態にもっていき、Leadersあたりで完全に引き込んで踊らしちゃう感じになっており・・・こういったグルーブの作り方はホント上手いと思います。
 その限りにおいて、実は「選曲」というのが重要になっており、曲を戦略的にかみ合わせていくことで生まれるグルーブを、最大限に活用しているのがSpinbadの良さで、これがSpinbadの「グルーブ」づくりの骨子にあることが分かるかと思います。

 なお、この作品、深く聴くと「Fu*k」などのカオスワードは消されてて、実はラジオ等でプレイする前提で作られたと思われる節もあり、Spinbadの売り込み用のテープだったとも思われるので、相当「作り込んだ」感もあります。
 特にB面はオーバーダビングでスクラッチやブレンドをやっていて、かなり作り込んでいるのが分かったり、このB面最初も営業用の引き込みルーティーンとも思える部分があり、かなり完成されたものではあると思いますが、Spinbadが「スキル」の人ではなく、「スキルと選曲が出来る人」であることが分かる部分として理解がしやすいラインだと思います。




④ストーリー性の素晴らしさ

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 では、最後に、この作品の総括をこめて、Spinbadの「ストーリー性の素晴らしさ」を説明したいと思います・・・場所としてはA面の最後あたりで、34:00辺りからの紹介です。

 とりあえず、ザーッと聴いてみると、HipHopが好きな人なら、絶対にヤラれる流れだと思います・・・特にRedmanの入り方はヤバすぎで、首フリまくりですね!!
 実際には、上記の写真のような曲がプレイされ、このテープが好きな方だとこのラインが好きな方も多いと思います・・・私は、この部分が聴きたい為に、何度も遠回りして家に帰ったことがあるぐらい好きなラインです!!

 まず、おさらいになりますが、Spinbadに関しては、①では超絶なスクラッチと2枚使いを駆使してプレイした楽曲の良さを光らせ、②では多彩なアイデアを駆使してグルーブを維持したままグルーブを繋ぐことを指摘しました。
 そして、その①と②を駆使しつつ、③では選曲を戦略的に立ててグルーブを引っ張っていく上手さを指摘しました・・・最後の④では、その③の発展的な話になります。

 ミックステープ時代のSpinbadの作品は「This is the DJ Tape , Not a Compilation」と標榜しており、ミックステープという存在が「DJの作品」であることを強く意識していて、作品としての完成度が異様に高いのが多いです。

 それは、作品のアイデアだったり、スクラッチや2枚使いの素晴らしさが如実に出ているのですが、Spinbadにおいては「作品のストーリー性」の作り方が大きいと思います。
 全てのSpinbad作品には該当がしませんが、③で指摘した選曲の組み立てを全体で行っているようなもので、まるで「一本の映画」を見たいるような感じがあります・・・つまり、選曲にメリハリがありつつ、印象的な流れをつくり、聴く人を飽きさせない展開を作っています。

 この「ストーリー性」ですが、なかなか表現が難しく、私が書いている作品紹介でも上手く伝えられない部分かもしれないですが・・・DJミックスにおいては一番大切なことだと考えています。

 なぜかというと、DJミックスという行為は、ただ順番に曲をプレイすることでは生まれないマジックを施す行為であり、選曲の進め方やプレイの仕方で「プレイした曲を更に輝かせる」行為だと思うからです。
 特にストーリー性という視点は、知らない曲でもその流れで聴くと良く聞こえるみたいな効果があったり、段々と気分を高揚させて爆発させたり・・・正に映画のような展開を作り、普通にその曲だけを聴いていただけでは感じられない事を聴かせてくれる方法だと思うので、凄い大切です・・・

 その中で、このSpinbadのこの作品では、ミックスの流れとして最高潮なオーラスとして見事なまでに大爆発をさせており、最高に盛り上がります!!

 ①~③の技術が上手く活用されつつ、戦略的に選曲をし、とにかく盛り上がる展開に落とし込んだストーリーが絶品で、こういうストーリーを描くことが出来るSpinbadの非凡さが出た内容になっています。
 特に、この部分は深く聴くと細かいギミックを多く含んでいるので、その部分を解説しつつ、素敵なストーリー性の演出の仕方を解説していきたいと思います・・・

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 まず、はじめに、A面の全体的な流れを紹介しましょう・・・

 A面は立ち上がりは割とユックリと進みますが、段々とグルーブを上げ、①で紹介した「Lords of the Underground / Funky Child」や②で紹介した「Mark the 45 king / 900 Number」あたりなどで軽いピークをつくり、聴いている人を引き込みつつ、小出しにピークを作り、飽きさせない展開になっています。
 いわゆる「山と谷」の展開を織り交ぜ、段々と山を登っていくストーリーにしており、こういうのは聴いてて飽きないし、プレイした曲に知識がなくてもノセられちゃいます・・・実際、A面は渋い曲でグルーブをキープしつつ、盛り上がる有名曲でガツっとピークを作っていて、大変上手いですね!!

 その上で、A面最後の部分を説明をしましょう・・・説明は34:00位から始まる「Boogie Down Productions / Duck Down」→「Nice & Smooth / Hip Hop Junkies」の辺りから始めます。

 まず、Duck Downに繋げていく背景として、900 Number→Scenarioに展開し、割とドラムやベースラインが男臭い展開にして「マッドに踊らす」流れになっているのがポイントです。
 Scenario自体を長くプレーし、そういったグルーブに路線変更しつつ、カットインで「Naughty by Nature / O.P.P.」→「Naughty by Nature / Hip Hop Hooray」と繋ぎ、首も体も動かされる展開にしています。

 その上でDuck Down→Hip Hop Junkiesをプレイしていくのですが、ピークを作る布石として大変上手い配置だと思います!

 先に結論を書いちゃいますが、いかにして最後の「Redman / Time 4 Sum Akshun」をボムらせるか?を選曲とミックスでこなしていく中で、この辺りではピークを作るために「谷」を作っていると思われます。
 Naughtyメドレーは、プレイされればヘッズは大盛り上がりですが、このまま盛り上がり続けると、Redmanが爆発しないので、ノリはキープしつつ、ちょっとマイナーな曲を入れて、ストーリーとして「小さなブレイクダウン」を作っています。

 ただ、このDuck Down→Hip Hop Junkiesの部分、相当な「技」が光っています!!

 まず、Duck Downであれば、ノリをキープするためHip Hop Hoorayからビートミックスで繋げ、本編に流れていくのですが、サビ部分での処理が渋すぎです!!

 1バース目をそのままプレイし、1バース目のサビに入ったらKRSが「♪Duck!」とラップしている部分で2枚使いをしていますが、ここでは、次を見据えた「構成変更」を実は行っています・・・原曲を知らない人だと全く気付かない構成変更です。
 サビの2枚使いは、1バース目のサビではなく、2バース目のサビ前の「♪Don't Stop the Criss・・・」の部分を使っての2枚使いをしています・・・これは、2バース目のサビ終わりが長めのインストになり、これにHip Hop Junkiesのアカペラブレンドを仕掛ける為の構成変更になっています!!

 話的には「Hip Hop Junkies」のアカペラブレンドを基軸に指摘すべきですが、これはDuck Donwのアイデアがないと成立しません・・・

 私もDuck Downのレコを買うまで、この部分はインストにスイッチしてブレンドをしてたのかな?と思っていた(以前の紹介を参照)のですが、コレにはヤラれました・・・原曲の構成を見抜いた上での処理にビビります・・・

 Spinbadの構成変更は、ミックスのグルーブを高めるために行っているのですが、それと同時にSpinbadの楽曲の良い部分を見抜く耳の確かさも重要なんですよね・・・そこを見抜いた上で、Nice & Smoothをかぶせて、ピーク前の谷にしてきているのが上手すぎです!!
 また、Hip Hop Junkiesの原曲とかけ離れた感じのブレンドになっていますが、それが意外性もありつつ、Greg Niceのラップにガッツリかみ合ってて、この辺のセンスもイイですね・・・ブレンドに関してはB面で炸裂してて、オーバーダビング処理のブレンドではありますが、かみ合わせのセンスは抜群です!!

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 そして、ブレンドの話がまだ続きます・・・

 「Hip Hop Junkies」のアカペラブレンドの話から続けると、1バース目のサビの直前で、Duck Donwのインストを切り、タイミング良く「Cypress Hill / How I Could Just Kill A Man」のインストを入れていきます・・・引き続きブレンドをしてくるわけですね!!

 これはラッキーなのが、「Hip Hop Junkies」のアカペラが純粋なアカペラではなく、スナップ音が入ったアカペラなので、Duck DownのインストをからCypressに変えても、そのスナップ音が「つなぎ」になってグルーブが落ちなかったり、サビ直前にGreg Niceのカッコいいパンチラインがあるので、それに合わせてスクラッチカットインが出来・・・恐ろしいまでの融合っぷりですね!
 もちろん、Duck DownのビートとCypressのビートのグルーブが近いことや、Spinbadのレコードチェンジが異様に早い(僅か2拍!)点もポイントですが、ミックスの流れを一切切らない形で、こういうアイデアをブチ込んでくる点は凄いです・・・それも、実は結構単純なアイデアなのにもヤラれますね!!

 また、この後に「Cypress Hill / How I Could Just Kill A Man」の本編(ラップしている曲)に行くのですが、その進ませ方も上手いですね!

 まず、ブレンドはHip Hop Junkiesの2バース目でも行われていますが、Smooth Bのラップの部分は、Cypressのビートにおける基本的なループトラックでブレンドしてきます・・・これは、Smooth Bのラップを生かすためでもありながら、あえて「Cypressのサビ」を聴かせない為の措置だと思われます。
 実際に、Smooth Bのラップの中盤ぐらいでインストを切ってますが、これはサビのビートが始まっちゃうぐらいインストをプレイしてたので、ビートを戻す為に切ったんですね・・・ここではラップを聴かせることが主になっているので、その限りではCypressのサビのビートは不必要になるからです。

 そして、Smooth Bのラップが終わった直後に、Cypressのサビのトラックが流れるようにインストを設定しているのも渋いですね・・・ここの部分も凄い大切です!

 このブレンドの部分は、割と流れ/グルーブを重視してブレンドしてるので、とにかくスムースな流れを求めている部分です・・・それは、実はピークに持っていくために、盛り上がっちゃう部分をあえてカットするための作業で、いわゆる「タメ」を作るための措置だと思います。

 そのため、Cypressのサビが想定される部分をカットしつつ、Cypressの本編に繋ぐために一番良いタイミングでサビに流れ、そこからの本編へのスクラッチカットインに繋がり・・・この構成力とアイデアはヤバすぎですね!!
 この辺の構成力の高さは③で紹介した話に繋がりますが、ピークになりかねないCypressのビートを、その躍動的なグルーブは利用しつつ、ブレンド部分ではあえてサビのビートを出さないことで、本編に繋いだ後にグルーブが上向きになるように設定されているのが上手いですね!

 実際に、Cypressにスクラッチカットインしたあと、首を振り始めている自分がおり・・・こういう細かい配慮が上手いな~と思います。

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 そして、Cypressの本編に流れていき、結果的にはド定番な2バース目の「♪Time 4 Sum Akshun」のラップ部分からカットインで「Redman / Time 4 Sum Akshun」に行くのですが・・・ここで「選曲のストーリ性」が発揮され、大爆発を引き起こしています!

 まず、指摘しないといけないのが、この部分においては「お約束」に近いCypress→Redmanの繋ぎをしています・・・

 少し脱線をして「お約束」の意味合い的な話を入れておくと、Aという曲の後は必ずBという曲に繋ぐという意味で、その繋ぎが定番化したが故に、聴いているリスナー側も「その展開」を待っているという意味になります。
 例えば、Kid Capriにおける「Maze / Before I Let Go」からの「Fatback Band / I Found Lovin'」とかがそうですね。

 このCypress→Redmanの部分も、ある程度HipHopを聴いている人だと鉄板なお約束で、Cypressの2バース目にあるラップが、Redmanの曲のサビネタになっているので、プレイの仕方を間違えがなければ必ず盛り上がります。
 
 この限りにおいて、Spinbadが取った手法は、このお約束を利用しつつ、他のDJ達が真似できない爆発をさせるにはどうしたらいいか?という点を、Spinbadがもつスキルとアイデアを活用し、ここの部分で説明したい「ストーリ性」を駆使して、大爆発を起こさせています!

 そのストーリー性の大まかな流れは、Duck Down以降はひたすらグルーブを引き延ばすプレイをし、あえて「上げない」ストーリーを作り、Redmanというボムが爆発するように仕掛けられた演出になります・・・
 つまり、Redmanで爆発するように、選曲の流れやミックスを調整して、ストーリーとして「タメ」の時間を作っていたんですね・・・

 これこそがDJミックスや選曲の腕の見せ所になりますが、誰しもが盛り上がれる曲をポンとプレイするよりも、聴いている人を焦らしたり、沸々と盛り上げていった上でプレイした方が絶対に盛り上がります・・・
 それは、変な表現ですが、散々仕事を頑張った後に飲むビールが、普通に飲むよりも美味しいのに近い発想だと思います。

 ただ、単純に「上げない」ストーリーかと言ったら、そうではなくて、Spinbadのこのラインには「効果的に上げない」ストーリーが埋め込められていると思います・・・

 それこそ、ブレンドを交えてストーリー作りをしている点が一つですが、私としては「期待感」の存在が大きいと思います!!

 その意味を紹介するために、以下で流れのおさらいをしましょう・・・

 まず、選曲的にも若干マイナーなDuck DownとHip Hop Junkiesを入れて、ストーリーの谷を作りつつ、完全にグルーブを繋げたミックスや、ブレンドという聴いている人を驚かせるミックスで、聴いている人を離さない展開にしています。
 この流れを飛行機の離陸に重ねると、飛行機が飛び立つ滑走路まで移動している感じですね・・・何度も飛行機に乗っている人には面倒な時間になりますが、飛び立つ予感を感じて結構ドキドキする時間ですよね・・・

 そして、ブレンドの後はCypressの本編にスクラッチカットインをしますが、流れ的にはRedmanに繋ぐ過程に向けて「ギアが入った」展開にしています。
 それは、まるで飛行機が滑走路に入り、離陸に向けて急加速していく感じでしょうか・・・そして、加速がマックスになった瞬間にRedmanに行くという展開になっています。

 そう、このCypressの本編に入って「ギア」が入る感じが凄く効果的で、それが「期待感」の表れになっています!

 Cypressは、結果的にブレンドという形でインストを使い、そこからグルーブを一切切らずに本編に進んでいく2段構造になっていますが、これが凄いポイントになっています。

 まず、ブレンドの部分はDuck Downから続いているビートのグルーブを使ってノリの維持だけをしていると書きましたが、実は「Spinbadのグルーブに引き込んでいる効果」があったと思います。
 知識があるリスナーなら「おおっ、ブレンドだ!」となってミックスに注視をするだろうし、このブレンド自体が完成度の高さと、グルーブの繋がりっぷりが半端無く、ブレンドと気づかなくってもミックスのグルーブに引き込まれています・・・実は、ミックスとしては上げないミックスではなく「グルーブに集中させる」為の措置としてブレンドを使ってた部分があります。

 そして、Cypressの本編にミックスし、ラップが始まるとお約束に進むことを「期待させる」ストーリーに仕向けていると思います・・・先ほどの表現でいくと「滑走路に入り急加速した」という意味合いになります。

 この背景において、ブレンドの部分でサビのビートをあえて使わなかったのは、こういった「期待感」を効果的に引き出す為の措置で、ラップが入ってからのミックスに更に引き込まれてしまう感じはヤバいですね・・・
 そこには何かが始まるみたいな期待感があり、更にSpinbadのグルーブに引き込まれてしまい、気づいたら首を振りながらラップしてしまい・・・Redmanに繋いだ瞬間の「キタキタ感」はヤバいです!
 また、この部分は曲を知っている人ならモチロンですが、曲を知らない人でも「何かが始まる」みたいなグルーブを出してて、それがオーラスに向けた緊張感みたいのも伴ってて・・・更にRedmanの良さを引き出しています!


 Redmanにカットインしてからは、2枚使い祭りを駆使して超ハイテンションなグルーブが続きます・・・この「爆発」を説明するために、コレだけの文字数を使いました・・・

 論旨をまとめると、この部分では一定のノリをキープしつつ、グルーブの谷を作ることで、Redmanが爆発するための下地を作っているのが表層で、その中にはお約束の繋ぎを爆発させるためにグルーブに集中させ、かつその流れで期待感をも生みだすストーリーを作っており・・・最高です!!

 はっきり言って、私が書いた説明がなくっても、聴いてるだけで「ヤバい!」と思う部分ですが、Spinbadの技術とセンスの先にある「ストーリー作り」が有機的に作られていることが伝われば良いと思います・・・

 そして、本当はこれも説明すべきですが、約45分のミックスの中で、この「ストーリ作り」が生かされており、通しで聴くとSpinbadのミックスの世界に引き込まれてしまう感じ唯一無二で、Spinbadが「ミックステープの魔術師」であることが分かるかと思います!!



 
⑤まとめ

spinbad_tms_004.jpg

 いや~、長ったらしい説明になりましたが、どうでしょうか??

 今回の作品紹介においては、これ以上に紹介したい箇所がありましたが、これ以上説明を増やすと分かりにくくなってしまうので、あえて紹介をしなかった部分も多いです・・・
 なので、なるべく論旨だけをまとめるようにしましたが・・・ちゃんと伝わったでしょうか??

 おさらいじゃないですが、SpinbadのDJを形容すると以下の点に集約されます。

 ①超絶なスクラッチ&2枚使い
 ②実はシンプルなんだけど効果的なアイデア
 ③曲と曲を繋げることで生まれるグルーブの良さ
 ④そのグルーブの良さで生み出すストーリー性の素晴らしさ


 抽象的な表現もありますが、こんな素養があり、SpinbadのDJがヤバいんだと思います。

 今回、紹介文を書くにあたり、昨年ぐらいから収録曲のレコ集めを始め、それを元にミックスの内容と照らし合わせていく作業の繰り返し・・・気づいたら「研究」という作業を行っていました。
 そういった過程があったので、今回の詳細な説明が出来たと思います・・・ミックステープを真剣に語ろうと思うと、語る側も掘らないといけないな~と痛感させられた作品でした・・・

 そして、今回の作業を通して、大きな声で伝えたいことが一つあります。

 それは、この作品は「アナログ」で作られていることです。

 結果的に、B面はMTRを使ったオーバーダビングをしていますが、基本的に「アナログ」的な手法で作られた作品になっています。

 これは、今の時代だから伝えることですが、セラートがない時代に、アナログのみでここまで高度なミックスが作れ・・・比類出来ないミックスに仕上がっていることは、今の時代の反省材料の一つになる思います。
 例えば、④で説明したブレンドなどは、今の時代においては、ある程度は苦労せずに出来ちゃう内容ですが、Spinbadが試行錯誤を繰り返しながら、作り出したあのブレンドの「厚さ」は真似できないと思います・・・つまり、苦労をしたが故に生まれた「グルーブ」なんだと思います!

 あんまり、この点を深く追求するのは意味がないのでアレですが、アナログだけでこんなにも深いミックスが作っていた事実・・・これは今の時代だからこそ忘れては行けない事実だと思います!!

 
 最後に、入手状況について補足です・・・テープ自体は2000本もプレスされているので、結構探しやすいテープだと思います・・・
 ほんと、このミックスだけは「神」級のレベルの高さなので、是非、テープで聴いてヤラれてくださいね!!



<Release Date>
Artists / Title : DJ Spinbad 「That's My Sh?? !!」
Genre : HipHop
Release : 1999年4月
Lebel : Cold Cutz Crew No Number


Notice : 旧記事について

 この作品紹介は、以下の記事で一度紹介をした作品になります。ただ、以下の記事では作品紹介において事実誤認があった部分もあり、今回、新たに書き直しましたが、作品紹介において参考となる部分はあったので、一部訂正を入れながら、そのまま記事を残しておきます。気になる方はご参照ください。

 DJ Spinbad 「That's My Sh?? !!」(旧記事)




----------------------------------------------------------
<追伸>
 今回、記事の性質上、独り言を入れると記事がブレるので、今回は独り言は無しです・・・
 ただ、収録曲の大半のレコを買いましたが、使ったレコは1/6位で、何のためにレコを買ったんだろう・・・う~ん、きっとSpinbad愛の為なんでしょうね(^^;)






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コメント
この記事へのコメント
いや~、すごいですね。片面聞けちゃうぐらいの文字数に、途中で一旦、インターバルを取ってしまいました。今回、上げていただいた音源を聞かせていただきましたが、イントロの部分からして、これはヤバい感がすごいですね。あと、普通に曲を続けてかけるだけでは出来ないつなぎもヤバいですね。スクラッチでごまかしてなんてのは、ちょいちょいありますが、このやり方で、ここまで違和感がないのはすごいです。あと、上手い人でも、たまに、アレっ?てなるようなつなぎがあったりすることがありますが、それが全くないのもすごいですね。900 numberは、自分の一番好きな曲ですが、その前後の流れも最高ですね。あと、これは、自分がなんとなく感じたことですが、たぶん、音源がアップされてないのは、Spinbad自身が、MIX中の細かい部分で納得がいかない部分があったからじゃないかと思います。もちろん、出すからには、最高に突き詰めた上で出したとは思いますが、spinbadは、音源をアップする前に、改めて音源を聞きなおしていかねないので、そういった理由でアップしていないというのもありえるんではないかと思います。おそらく、相当ストイックで、自分(のミックスやプレイ)に厳しい人ではないかと思うので。このテープは、初めてテープを掘った時に、80s、The Classicsと共にジャケットが見えるように陳列されていて、シリアルナンバーの若さに引かれて、買おうかどうか、しばらく悩んだテープでした。結果的には、一旦置いといて、どんなテープなのか調べてみようと思い、既読スルーしてしまいました。その調べる過程で行き着いたのが、MTTさんでした。さすがに、その時、全部読んだわけではありませんが、これはヤバそうだなと感じ、店に戻ったところ、きれいに、3本とも無くなっていました。あれは、本当に悔しかったです。結局、いまだに、手に入れられていませんが、どうせなら、若いものか、キレイ目なものを見つけてやろうかと思います。本当に、長時間の執筆、お疲れさまでした。では、今後ともよろしくどうぞ。
2015/04/06(月) 15:45:33 | URL | baba #-[ 編集]
Re: タイトルなし
>babaさん

コメント、そして長い文章を読んで頂き、ありがとうございます!
1日たって、冷静な状態で私も読みましたが・・・いや~、なんでこんなに長いんでしょうね(^^;)
もうちょっとコンパクトにも書けたはずなのですが、Spinbadのマニアックな技解説に文字数が割かれてしまいましたね・・・すみませんでした(^^;)
ただ、たまにはこういう解説をしないと、DJミックスを作る「苦労」や「発想」が評価されないので、今回のに関してはかなり頑張りました・・・特に、今回の記事は、私のような「DJをしない人」ではなく、現在「DJをしている人」にどれだけ訴えられるかが勝負と考えて書いてみました・・・つまり、DJやっている人でも気づかない「技」を私がどれだけ説明出来るかを試したかった部分もあります・・・
まあ、かなり強引な説明(④のストーリーとか)もありましたが、私が15年近く聴いても飽きないことを実証すべく、結構な難題の壁を多少は越えられたかな~と思います・・・去年ぐらいから聴きこみ&プレイした曲で実験(!)をした成果がでたと思います??

ではでは、今後とも宜しくお願い致します!
あと、Twitterの方もありがとうございました(^0^)





2015/04/06(月) 23:47:43 | URL | mixtapetroopers #EK3m6DHM[ 編集]
MTTさんの分析力、作品に対する思い入れの凄まじさに改めて脱帽です!
1つのmix作品をここまで掘り下げて研究し、活字にしたのは、恐らく国内だとMTTさん以外居ないのでは?
オレもmix作品の分析を割とやる方ですが、MTTさんには到底及びませんね(^_^;)

MTTさんも本記事で指摘してましたが、hip hopでストーリーや明確なピークを演出するのは、やっぱり難しいと思います。
ハウスやディスコみたいに数曲前から伏線を張る、みたいな事がやりにくいかと。
基本的にサンプリングのワンループにバースとフックが乗ってるだけっていうシンプルな構成ですからね。
だから単調になったり、飽きが来たりしないようにクイックでつないだり、2枚使いや擦りでアクセントをつけてるのかなと。
そこで必要になってくるのが、MTTさんが記事で解説したアイデアだったり、スキルだったりすると思うんですよね。
そういった点でspinbadはヤバ過ぎですね!!
ここまでストーリーやDJの個性・スキルを 明確に伝えられる作品って、無いですね!
さすがMTTさんが猛pushしてるだけあります!

オレはMTTさんブログで初めてspinbadを知りました。
今後もmix作品史に残る「遺産」を紹介してください!
お疲れさまでしたm(__)m
2015/04/10(金) 23:04:14 | URL | kyk #-[ 編集]
Re: タイトルなし
>kykさん

コメント・・・今回の記事には、コメントを頂き、ホントありがとうございます!!

書いた後、普段以上にコメントが入らないので、自分でも難しく書いちゃったかな~と思い、凄い心配していたましたが、kykさんのように反応があると、凄い嬉しいです!!
今回のSpinbadに関しては、今となっては忘れ去られた存在になりつつあり、例え評価されても「あのスクラッチが上手い人でしょ?」みたいな評価しかないと思い、かなり力を入れて書いた次第です。
正直、あまり上手く書けたとは思えないのですが、スキルとアイデアのイルさの一端は伝わったかな・・・こういうDJスタイルは、ほんと形骸化してしまったので、その点の良さは伝えたいと思いました。
また、私がHouseとかに流れたのには、Spinbadのミックスを聴いてたのがあるかもしれません・・・ストーリーのあるミックスで奏でるグルーブに心地よさがあることを知ったのはSpinbadの作品で、この点も書けたかな~と思います。

ではでは、今後とも宜しくお願い致します!

そして、今日書いたDiscoも、きっとコメントを頂けると思って書きましたので、宜しくお願いいたします!!




2015/04/12(日) 21:02:25 | URL | mixtapetroopers #EK3m6DHM[ 編集]
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