HipHop,R&B,Soul,Funk,RareGroove,DanceClassics,Garage,House・・・など、私が気に入っているMixTape,MixCD,その他もろもろを紹介するブログです。
「日本語ラップ」に関する本の紹介
DSC01386.jpg

 Dev Largeさんがお亡くなりになられ、それで考えるところがありまして・・・今回の特集を企画してみました!

 考えてみれば、超久しぶりな「本」の特集です~





『はじめに』

 今回は、タイトルの通り「日本語ラップ」に関する本の紹介をしたいと思います。

 先日、日本語ラップの象徴とも言えるアーティストである「Dev Large」さんが亡くなられ、私の中で「日本語ラップ」という存在を少し考え直した中で、こういう紹介も大切かな?と思い、今回の記事を企画した次第です・・・

 私としては、日本語ラップは青春時代の思い出みたいな部分があり、すべてではないですが、日本語ラップが熱かった時代(90年代中頃~00年代初期ぐらい)はオンタイムで楽しんでいました・・・
 ある時期まではリリースされた曲などは全てチェックしてたし、Front/Blastを代表する専門誌を読みあさったり、ラジオなどで日本語ラップが特集されていれば真剣に聞いたり・・・まあ、熱心なファン(=ヘッズ)でしたね?

 そのため、結構な知識や情報を持ち合わせていると思っています・・・前回のDev Largeさんへの追憶記事もその一端になるのかもしれません。

 ただ、こういうった「日本語ラップに関する知識や情報」って、今となっては実は「集約されていない」状況なのかな~とも思いました・・・
 それこそ、日本語ラップの歴史をしっかりと捕捉している本やディスクガイドがなかったり・・・ネット上では断片的に情報がありますが、それらを分かりやすい形で集約できていない状況と感じました。

 特に、今回の記事を思いついた大きな理由は、Dev Largeさんが亡くなられたことで、Dev Largeさんの「功績」を誰も明確化することが出来ていないことに気づいたのがスタートでした・・・

 Dev Largeさんを日本語ラップという枠のみに当てはめるのには限界がありますが、考えると「日本語ラップ」という文化が実は未整理な部分が多く、特にその「歴史」や「精神」を学ぶ機会が少ないので、Dev Largeさんの功績を、当時からいた人も、そして当時は知らなかった人も、誰も明確に語れていないと思いました。

 そして、私自身も、今まで私が影響を受けた「熱かった日本語ラップの時代」を明確に語れていない状況があり、その点は苦慮をしていました・・・
 言葉にできないぐらい熱かったとすればそれまでですが、そういった事を伝え、日本語ラップを含む我々の文化を進ませていきたい・・・私自身、そういった気持ちはあるけど、上手く語れない状況でした。

 音楽なり文化が、分かりやすい形でアクセスできる状況が絶対に必要かといったら難しいですが、これからその音楽や文化に触れあおうという人には必要だし・・・何よりも、その音楽や文化を風化させない、いや進化させるためには、理解の促進というのは非常に重要かと思います。


 そんな訳で、日本語ラップについて、現状では決定打となる媒体がない状況を踏まえ、過去に発刊された書籍の中で、日本語ラップを知る上で有益な情報を教えてくれる本などをザックリと紹介をしたいと思います!

 特に、私としては「歴史」と「精神」という点を念頭において、本の選定と紹介を行い、ゴールとして私が受けた「熱い日本語ラップ文化」を伝えることを目標にしました。
 
 まあ、この点を理解しようと思ったら、一番有益なのは「HipHop/R&B専門誌 Front/Blast」になるのですが、今回紹介するようなあまり知られていない本にもナイスな情報が掲載されています・・・
 たまたま私が持っていた本などが中心に紹介をしているので、在庫一掃セール的な紹介(aka心の減価償却?)も多分にあったり、内容によっては強引な部分もありますが、どれもそれなりに有用だと思いますのでご参考にしてください。

 では、これらの本を通して、日本語ラップの歴史的な背景や精神・・・つまり「Bボーイ・イズム」を知ってもらえれば幸いです!!





『日本語ラップ - 歴史本』

 まず、最初のカテゴリーは「歴史本」というジャンルでいきましょう。

 ここでは、日本語ラップが「どうやって発展したか?」「どうやって動いていたか?」を教えてくれる内容で、過去を知る上では頼りになる本を紹介したいと思います。

 こういった歴史本は、色々な音楽を知る上で大変参考になり、もはや定番な存在かと思います・・・ただ、日本語ラップにおいては、他の音楽ジャンルに比べて、明らかにその歴史(流れ)を語った本が少ない状況かと思います・・・

 記憶だと、Blastの増刊で出た日本語ラップのディスクガイドぐらいかな~と思いますが、、日本語ラップの全てを明確に追えてなく・・・特に、その音楽・文化が「どのように発展(進化)したのか?」と、その発展の過程で骨子となっていた「スピリット(=こころざし)」が分かりづらいと感じます。
 それは、その音楽が発展するにあたっての理由を知ることや、その音楽を発展させてきた人たちの熱意を知ることで・・・その音楽や文化の根底を知り、更に理解を深める点になり・・・その音楽を理解する上で大変重要だと思います。

 この限りにおいて、私の独断的な紹介にはなりますが、日本語ラップの「歴史」を知る上で、適切と思われる本を以下で紹介したいと思います。

 なお、以下で紹介する各々の本は、日本語ラップなりの「一部分」のみを紹介した内容になりますが、これらを上手く組み合わせると、日本語ラップの歴史がある程度は「一本」で示すことができ、その進化の過程が繋がるかと思います・・・
 特に、割と情報が抜け落ちている「80年代~90年代~さんぴん前後」までを理解する上で適切と思われる本が中心になりますかね・・・結構、強引な部分もありますが・・・(^^;)

 では、毎度の私視点のチョイスなので、それが歴史本かよ!と突っ込まれるのもありますが・・・日本語ラップの歴史を時系列に追う形で紹介をしますね・・・



「Jラップ以前 - ヒップホップ・カルチャーはこうして生まれた」
編者 後藤明夫 1997年8月 Tokyo FM 出版

DSC01378.jpg

 一発目は「80年代末」ぐらいまでの日本語ラップを掘り下げた本で、さながら日本語ラップにおける「オールドスクール期」の情報を取り上げた本になります。

 内容的には、本の表紙にも名前が列挙されていますが、いとうせいこうさんや高木完さんなどの当時の関係者からインタビューを行い、それをまとめた感じの内容で・・・日本語ラップ(Jラップ)と呼称される前の状況が詳細に書かれております。

 この時代の特徴としては、日本の「クラブ黎明期」としてクロスする時期になり、海外の最先端の音楽や文化を取り入れていくみたいな「輸入文化」があり、その中で「HipHop」に興味をもった方々に焦点を合わせたのが、この本になります・・・

 当時の事情が知らない方に説明をすると、HipHopという音楽が「最先端な文化・音楽」として捉えられ・・・それこそ、既存の音楽にはない「サブカルチャー感」を、一部の流行に敏感な文化人やアーティストが取り入れ始め・・・次第に本格的になっていった流れが80年代にはありました。
 流れ的には、パンクやニューウェーブ系の人たちが、既存の音楽にはない「新しさ」や「派手さ」なんかを評価し、借り物的に進んでいった「ものまね文化」な部分もありましたが・・・尖鋭的にHipHopを見抜いた人たちが「音楽」として成立していく試行錯誤がこの本から読みとれます。

 結局、80年代中期以降のサンプリング文化というのが進む前だったり、90年代以降の歌詞の重要性が広まる前の時代だし・・・何よりも、HipHop本来の精神性まで掘り下げられず、表面のみを借りていた感は多少あり・・・今の日本語ラップの歴史からは若干見落とされている時代になると思います。
 分かりやすい表現としては「アンダーグラウンドな精神」がなく、HipHopの「黒さ」を理解していない(表現していない)部分が強いのですが・・・こういった尖鋭的な人がいたから、海外の最新の音楽が輸入されていた点は忘れてはなりませんね。

 ちなみに、文章の最初に「クラブ黎明期」と書きましたが、こういった音楽は黎明期が故に、様々なジャンルが入り混じっており、今となっては「クラブミュージック」という名の元、レゲエとかHouseとかの様々な関係者が入り混じっていた時期になります。
 そのため、この本でもランキンタクシーさんや、児玉和文さんなどのインタビューも掲載されています・・・またファンキーキングとして活動してた中村有志さんや、横山和幸(パンプ横山)さんなど、意外な人選もあり、マニアには堪りません??



「Japanese HipHop History」
1998年7月 千早書房

DSC01371.jpg

 この本は大昔に一回紹介したことがあるようですが、改めて紹介しましょう・・・

 先ほどの「Jラップ以前」が80年代初期から80年代末までの状況としたら、この本は80年代中頃から90年代初期までといった感じですが・・・かなりスタンスが違うのがポイントです。

 この本も、当時の関係者を集め、座談会形式で話をしていくのですが、Jラップが「サブカル」側としたら、こちらは「ストリート」側で、さんぴん前後の日本語ラップに繋がっていく流れが読みとれ、結構貴重な本になります・・・

 座談会の司会を佐々木士郎さん(宇多丸さん!)が行い、DJ Krushさん、Crazy-Aさん、B Fresh(Cake-Kさん、MC Bellさん)が参加をしており、原宿のホコ天で始まったブレイクダンスから発展していった様子を詳しく語っています。
 Crazy-Aさんを始めとするダンサーが集まり、そこにKrushさんが機材を持ち出してDJをしだし、MCも入り・・・80年代中頃から後期にかけてですが、日本でもブロックパーティーからHipHopが発展したことなど・・・かなり貴重な話が多いです。

 特に、先ほどの「Jラップ以前」と比べないといけない事実ですが、HipHopという音楽・文化を考えた時、割と「文化系」な部分もあれば「体育会系」の部分もあり、その両者はそれぞれが魅力ではあるのですが、こちらの本では「体育会系」な側面が読みとれ、かなり面白いです・・・
 それは、黒人文化特有の「マッチョイズム(=黒さ、ストリート感)」をいかに表現するかな部分で、日本でHipHopを成立させる上での苦労話などが上手く掲載されているかと思います。

 この部分や流れがあったからこそ、日本語ラップが現地のHipHopに近付けた部分があり・・・司会をしている士郎さん自体が強く影響を受けている世代の話とあって、士郎さんの活躍が光り、かなり盛り上がったインタビューになり、超貴重な話題が多いかと思います!

 内容の詳細は細かく書けませんが、当時のB-Boyバトルの話や、ホコ天で踊っている時にキース・へリングがやってきて自然発生的にセッションをした(!)話・・・そして、高木完さん達がラップを聴いて、おれたちの方が上手くできると思ってラップをし始める話(B Fresh 結成秘話?)など・・・マニアには感涙な話が多いですね!

 やっぱり、HipHopという音楽は「DIY精神」「俺が一番という精神」が大切で、そういった精神を大切にしてた世代がいて、後輩達が育っていったのかな・・・
 間接的な影響かもしれないですが、さんぴん以降の日本語ラップの影響において、こういったストリート側の影響はかなり大きいので、歴史として知っておく価値は十分あると思います。



「東京ヒップホップガイド」
著者 藤田正 他 1996年1月 太田出版

DSC01384_01.jpg

 ひたすらドマイナーな本を紹介し続けて申し訳ない・・・ただ、ブックオフの100円コーナーには結構な頻度(少なくても数年前までは・・・)であるので、耐えてください(^^;)

 今度の本は「90年代初期から90年代中頃」を紹介しており、さんぴん直前の空気感を紹介しており・・・一番、皆さんが欲しい「空気」が分かる本かと思います??

 この本は、太田出版から「\800円本」シリーズの一つとして発行された本で、この時代らしいっちゃらしい内容の本ですね・・・

 私が高校生ぐらいの時期ですが、アニメだったり、漫画だったり、音楽だったり、アダルトだったり・・・世間一般から外れている文化(=サブカルチャー)を特集・企画した本や雑誌が沢山あり、様々な出版社が色々な内容の本や雑誌を出していました。

 まあ、今となってはネットで簡単に知れる時代ですが、当時はそういったサブカルチャーの情報が簡単に手に入らないので結構色々な本や雑誌が作られていたんですね・・・
 単発の単行本や書籍もありましたが、ひたすらサブカルっぽい内容でシリーズ化し、カラー刷りのムックや、今回の800円本のように単行本にしたのがボチボチあり、私もたまに買ってました・・・特に、高校生~大学生時代は、その時代に発行されてたのをよく掘ってましたね~

 そんな中で、奇跡的に「さんぴん前」に日本語ラップの動きをフォローしているのが、この本になるかと思います。

 まず、本の前半は、ECDさんとEastendのGakuさん、そして荏開津広さん等による座談会になり、80年代中頃から90年代初期ぐらいの回想を行っています。
 先ほどの「Japanese HipHop History」が既にプロ側の視点で語られていたのであれば、こちらは「ファン側」の視点が中心になっており、同じ時期を取り扱った本でも、ちょっと視点が異なっていますかね・・・

 特に、この座談会での90年代の部分に関してはレアな話が多くヤラれます・・・この頃は日本語ラップの「暗黒時代」とも評され、黎明期かつ氷河期(=売れない)ので、情報が少ないんですよね・・・
 一例をあげておくと、日本語ラップマニアならご存知な「Yellow Rap Culture In Your House」は、この盤にも参加しているグッチGさんが、土建会社を騙して(笑)レコを作らせたそうですよ・・・その他、当時のクラブ事情など、かなり貴重な話が多いかな~と思います。
 この点は、最後の方のディスクガイドにも反映されてて、GasboysやZingiなどの今となってはレアどころの解説が異様に細かく、結構参考になります・・・Frontの小林明彦さんや萩谷雄一さんなんかが書いており、間違えないですね!

 そして、ここが最もグッとくるところですが、中盤に代表著者である藤田正さんが当時の関係者をしっかりと取材したルポが掲載されているのですが・・・これが96年ごろの本当に「さんぴん前」を取材していてボムです!

 実際に、さんぴんの広告もあるのですが、先に出たアルバムの広告で、まだライブもビデオも出す前提での広告になっており・・・まさに「さんぴん前」です・・・
 もの凄く記事の量が多い訳ではないのですが、Soul Screamが結成されるきっかけとなった錦糸町のクラブ「Nude」でYouさんのライブを取材してたり、あの鬼だまりを取材してたり・・・日本語ラップ爆発前の感じをリアルに取材されていると思います。

 私も若干は体験しているのかもしれないですが、日本語ラップって、さんぴんでのライブのような「爆発力」があった時期があり・・・恐らく95年ぐらいから97年ぐらいが一番強かったかな?と思います。

 それは、売上的な話ではなく、ラッパーやDJ達が胸を張って飛び跳ね、ファンもそれに連呼して熱狂していた時期で・・・地下でグツグツと煮えたぎってたマグマが爆発した時期です・・・
 ただ、それは、音楽が一般化や人気が出ると、演者側の熱が冷めていくという事実もあり・・・非常に短かった時期だと思います。

 そういった爆発的な熱い「空気」の一部を感じられる部分が藤田さんのルポを含み、この本には多く含まれており・・・日本語ラップの歴史を知る上で、結構参考になると思います!!



「Life At Slits - ライフ・アット・スリッツ」
監修 山下直樹 P-Vine Books 2007年12月 

DSC01385.jpg

 次の本は、知ってる方なら「えっ、コレを日本語ラップ文脈で紹介するの?」と思う本でしょう・・・でも、日本語ラップの当時の状況を知る上では、凄い貴重な情報が入った本だと思います!

 この本は、1988年ごろから1995年ごろまでに下北沢で営業をしていたクラブ「Zoo」「Slits」に関する本で、同店の店長として長期にわたりお店を切り盛りしていた山下直樹さんの監修の元、同店に出入りしてたDJ・MC・ミュージシャンなど130名の回想インタビューを元に、そのお店の歴史を語った本になります。

 このクラブ「Zoo」「Slits」は、日本のクラブ界では結構重要なクラブで、いわゆる小箱なんですが、その後のクラブ系音楽を牽引する人たちが出入りしてたクラブで・・・それこそ、Organ Barのように様々な音楽愛好家が集い、自分たちの音楽を自由に発展させた場所だと思います。
 特に面白いのが、店長の山下直樹さんの存在で、いわゆる「クラブ系ミュージック(=DJ)」と「ミュージシャン(=非DJ)」を境目無しに受け入れ、クラブという枠の中で、DJもバンドマンも、そして様々な音楽の壁を取り除き、みんなを集わした点は大きく・・・以後の渋谷系音楽や、DJ系音楽の発展に寄与したクラブだと思います。

 その中で、日本語ラップですよね・・・かなり重要な「場所」だったと思います。

 この歴史本の流れで行くと、先ほどの「東京ヒップホップガイド」と同じく「90年代初期~中期」のさんぴん前位までの情報が掲載されているのですが・・・日本語ラップも「クラブ」という場所で磨かれたことがわかり、大変貴重な情報が掲載されています。

 特に、日本語ラップ的には2つの重要なイベントがあり、両者ともグッときます!

 一つ目は「スラム・ダンク・ディスコ」というイベントで、あのMUROさんが初めて人前でDJをしたイベントで、結果的にオープンマイクなDJイベントになり、その後の日本語ラップ関係者が集まり、お互いの腕を切磋琢磨したイベントですね・・・
 時期的には90年代初期で、当時としては単発のラップイベントが多少はあったようですが、日本語でラップすることに標準を合わせたイベントはコレが初期で・・・ライムスターや雷勢などが参加してて、お互いのラップスキルを向上させていた・・・と言われております。
 
 そして二つ目は「LBまつり」で、当時から人気だったスチャダラパー関連のラッパー・DJが参加したイベントで、このクラブの看板パーティーの一つといわれています。
 時代的には、やはり同時期で、それこそ世間では「Jラップ」として持て囃され、スチャ以外の参加者としては「かせきさいだー」や「ナオヒロック&スズキスムース」など、LB系の面子が中心で・・・当時、アイドル的な人気だったスチャを象徴するイベントになります。

 ちょっと強引かつ歴史認識に反する可能性があるかも知れませんが、ECDの名曲「マス対コア」の構図が実はこのクラブにはあり、提示した二つのイベントがその構図を代表してているかと思います・・・

 歴史的な話を入れておくと、スチャダラパーの登場で、日本語でラップすることが世間に受け入れられ、それこそ「Jラップ」として人気を博した半面・・・それがリアルなHipHopを体現してなく、セルアウトをしていると思って反対のスタンスをとっていた人達がいたのが90年代の初期になります。
 つまり、スチャのLBは「マス」で、スラムダンクは「コア」として機能をしており、更に強引に持っていくと、マスは「Japanese HipHop History」で提示した「文化系」の流れで、コアは「体育会系」の流れをくんでいるかと思います。
 そして、このコアの流れは、そういったマスへの反発から自分たちの腕と意識を向上させ・・・さんぴん頃の大爆発に繋がっており、日本語ラップを語る上では重要な流れであり、HipHopという反骨心を内包する音楽の良心ともなる部分かと思います。

 ただ、興味深いのは、多少の敵対意識はあったかもしれないですが・・・このクラブの良いところは、両者は実は融合してて、結果的に日本語ラップの推進をしていた点は大変興味深いかと思います。
 
 まあ、実際に「マス対コア」な動きがあったのは、このイベントがやってた頃よりも少し先(95年ごろ)だったのもありますが、クラブの紹介をした時点で「壁がない」点がポイントで・・・多少のスタイルの違いでの相違はあったかもしれないですが、融合はしていたようですね。
 そのため、この潮流の中間的な方々もおり、それこそ四街道ネイチャーやShakazombieあたりはそうなんですよね・・・シャカはLB系の曲を多くリリースしていた「ナチュラル」というレーベルから最初期の曲をリリースしていたので、実は融合をしてた部分もあったと思います・・・

 話を本に戻すと、その対比の部分は書かれていませんが、両者の内容は詳細に書かれており、かなり参考になる情報が多いです。

 日本語ラップのマス対コア問題(?)については、私からの投石であって、この本の意図とは異なるかと思いますが・・・そういった視点をもつと、歴史書としてしっかりと機能をするかと思います。
 また、日本語ラップも、やはり「クラブ」という場で進化していた点が分かる資料として・・・この点も見落とせないです!!



「Legend オブ 日本語ラップ伝説」
著者 サイプレス上野・東京ブロンクス 2011年12月 リットーミュージック

DSC01374.jpg

 歴史本としては、これを最後にしておきましょう・・・これも、知っている方だと「えっ、これって歴史本なの?」と突っ込んでくれるでしょう・・・私にとっては、最高の「歴史の証言」を語ってくれた本です!!

 この本は、いまや日本語ラップ界において一番「日本語ラップ」を体現していえるラッパー「サイプレス上野」さんと、Blastなどでグラフティー関連の記事を執筆していたライター「東京ブロンクス」さんが、タワーレコードのWebマガジンで不定期連載していた内容を一冊にまとめた本になります。
 Webで連載してた時も読んでて、これが本にまとまると知った時は、つい喜んでしまい・・・当時、これの発刊を記念して行われた「トークイベント」にも行きました・・・そしてサインも頂きましたよ(^^;)

 んで、内容的には、日本語ラップの名作アルバムを二人(またはゲストを交えて)で対談をし、その作品の良さを語る・・・みたいな、一般的には「ディスクガイド」的な本になっていますが・・・いや~、素晴らしい内容です!!

 まず、何が素晴らしいかというと、この本で繰り広げられる対談が、そのアルバムの直接的な内容の良さを語っていること以上に、そのアルバムと「どうやって知りあったか?」とか「当時、どう楽しんだか?」などの、対談者が当時に感じたことを多く語っており・・・それが大変貴重な情報になっています!

 つまるところ、対談者達の与太話になるのかもしれないのですが・・・今回の歴史本という観点からすると「ファンサイド側の歴史」を明確に語っており・・・当時の事情を知らない方にとっては格好の材料になると思います!!
 それも、日本語ラップが大変盛り上がっていた90年代中盤~後半の情報は濃密に書いてあり・・・私たちが受けた「あの熱さ」をしっかりと語っている点は、ほんと素晴らしすぎます!!

 繰り返しになっちゃいますが、さんぴんキャンプが行われた1996年以降、日本語ラップの人気と進化は爆発的に進み、そこからの数年間は「ホント熱かった」時期で・・・この時代を生きてきたからこそ、今の自分たちがいると言ってもいいぐらい、大切な時期でした!

 それこそ、UKのHouseムーブメントを象徴する「Second Summer of Love」のように、うまく言葉には出来ないのですが、世間とは関係なく、ストリートでアーティスト側とリスナー側が爆発的に盛り上がっている状況で・・・昭和な表現ですが「熱中時代」といった感じです・・・
 私としては、その時代を体験して、様々なことに刺激と影響を受けましたが・・・アーティスト側もリスナー側も活発に動くことで、自分たちで生み出したモノを自分たちで進歩させている興奮みたいのがあり・・・新しい事を創造していく喜びと気持ち良さが一体になった時期だったな~と思います。

 話をこの本に戻すと、上野さんも、ブロンクスさんも1980年前後の生まれで、私とほぼ同世代で・・・中高生ぐらいの時に「さんぴん~日本語ラップ」の洗礼を受けており・・・私以上に濃い「日本語ラップの道」を進んでおり、あの時代の「熱さ」を私以上に上手く語っているのが大変素晴らしいです。

 実は、今回の特集のテーマの一つにもなるのですが、日本語ラップを「知る」という点においては、それは「アーティスト側」の動きを知るという点が中心にならざるを得ない(そういう本しか発行されてないので)のですが、私としては「ファン側」の心理や動きも凄く大切だと考えていて・・・そういった点も強く伝えたいと思ったので、今回の特集を組んだ経緯もあります。

 日本語ラップは特にそうだったのですが、正直に大手のレコード会社やマスコミのバックアップがない状況で、これだけ日本語ラップが盛り上がった根底として、アーティスト側の熱のある動きを、ファンたちが受け取って、更に熱を込めてサポートしていた・・・という相互影響があって日本語ラップが盛り上がったと思うので、他の一般的な音楽以上に「ファン側の状況」を知ることが凄い大事なんですね・・・
 最初は、私たちが受けた「あの熱病」を知る材料として、この本を捉えていましたが、それを知ることができることに加え、ファンたちがシーンを「どうやって盛り上げたか?」が知れる点はほんと価値があります。

 んで、ここまで、割と固く書いてしまったので、角度を変えて柔らかい視点でも指摘をします・・・

 そういった、ファン側が体験してた「熱」を知る上で凄い大切な対談になっているのですが・・・話自体は爆笑話やレア逸話の連続で・・・やっぱり、この人たちは分かってるな!という感じも素敵です!!

 なんでしょう、これも私たち世代が受けた「佐々木士郎イズム(=Bボーイ・イズム)」かもしれないですが、真面目なことも笑い話も同視点で語っていくことや、多少の苦労をしてるけど、笑いながら前に進んでいく感じがあり・・・私たちが影響を受けた「Bボーイ・イズム」を自然に語っている点も大変イイですね!
 特に、上野さんもブロンクスさんも、当時の「現場」に足繁く通っており、そこからのレア情報とレア物品の数々にヤラれます・・・個人的には鬼だまりのライブに、年上の悪い女からバックパスを買って潜入した話等・・・グッときます!!





『日本語ラップ - クローズアップ本』

 次のカテゴリーは「日本語ラップをクローズアップ」という観点で、日本語ラップに関する本を紹介します。

 先ほどの歴史本が「時代の流れをマクロの視点で見る」ことに対して、ここで紹介するのは「ミクロの視点」で日本語ラップを語っている本を紹介したいと思います。
 つまり、先ほどの歴史本では、様々な角度から「歴史の流れ」を読みとれる本を紹介してて、こちらでは、その流れを「作っていた人たち」や「作った方法」、そして日本語ラップの「根底や精神論」を語っている本の紹介になります。

 こちらも、私視点の強引紹介(?)もありますので、ご容赦ください・・・



「Zeebra自伝 - Hip Hop Love」
著者 Zeebra 2008年11月 ピア株式会社

DSC01375_20150516092428b22.jpg

 一発目は、一番分かりやすい本ですが、いわゆる「自伝本」で、我らのジブさんの自伝を紹介したいと思います!

 どの音楽でも、自分の生きてきた道のりを語る本は多く、それこそ矢沢栄吉さんの「成り上がり」から始まり、どんなジャンルの音楽にも「自伝本」はあるかと思います。
 それは、音楽という存在が「自己表現」の賜物であり、自分が生きてきた道があるからその音楽を作ることが出来るという意味において、その人のバックグラウンドを知ることは重要な訳で・・・自伝本がその人の音楽を「更に深く知ることが出来るツール」として活用されている側面があるかと思います。

 そして、HipHopも割と自伝が多いジャンルの一つで、海外のアーティストも多いですが、日本語ラップもボチボチあり、ここで紹介するジブさんの他にも、K Dub ShineやAnarchyなどが自伝を出してて、ちょうど来月には漢さんの自伝も出るみたいですね・・・

 なんでしょう、日本語ラップを含む「Hip Hop」は、音楽の根底として「這い上がりの精神」があったり「アウトローの精神」があったり・・・何よりも「生活の中から生まれる音楽」なので、音楽感以上に「生き様」や「生活」を知ることが大切なので、自伝が珍重されていると思います。
 まあ、他の音楽に比べて、生きてきた道がストレンジな方々が多く、題材にしやすい(話として盛り上がりやすい)もあるのかもしれないですが・・・ストレンジな道を歩んで来ているからこそ、こういった本でしっかりと語り、自分の生き様や考えを周りに理解してもらう意味では・・・適切なフォーマットだと思います。

 その中で、たまたま持っていたのがジブラさんの本ですが・・・これを読むと、ほんとジブさんのことが信頼できてしまい、自伝としては、かなり内容の良い本だと思います。

 内容としては、ラッパー活動20周年を記念して企画された本のようで、ジブラさんの子供の頃から活動中のことまで、ジブラさんの口調を残しながら真剣に書かれています。
 
 ご存知な方も多いかと思いますが、ジブラさんは昭和の大実業家である横井英樹氏の孫になり、けっこう複雑な家庭環境の中、育ってきたのですが、今の活動にも通ずる「負の要素と立ち向かい、ポジティブな方向に進ませる」生き方が全編で語られており、一人のラッパーであり、一人の人間である「Zeebra」を上手く語った本だと思います。

 なんか、説教じみた話になりますが、私自身、USのHipHopにしろ、日本語ラップにしろ、一番影響を受けた考え方として「自分が良いと思ったことを胸を張ってヤレ!」という考えがあると思います。
 それがあって、このブログをやってたりする訳ですが、ジブさんのこの自伝を読むと、様々な苦労や苦難もありますが、自分の生きる道を楽しみながら、胸を張って「自分」を進ませ続けている姿が描かれており・・・そういった考えを思い返させるとともに、読むことによって励まされたりもします・・・

 この本は、自伝本でもありますが、この文化の根底にある「Bボーイ・イズム」を含む「精神論」を教えてくれる部分もあり、大変素敵な本です!



「ヤングトラウマ - ひろ子、ドカベン、バンバータ」
著者 スチャダラパー 2009年4月 Tokyo FM 出版

DSC01373.jpg

 これも、系統的には「自伝本」になるのでしょうか・・・ただ、自伝本を超えて80年代~90年代の「日本のサブカルチャー」を知る上で、参考になる情報が多く、ヤバいですよ!

 この本は、あのスチャダラパーの面々が、自分たちが影響を受けたテレビ・ラジオ・雑誌・漫画・音楽・ゲームなど・・・80年代~90年代の様々な「文化」を語りあった内容で、スチャダラの「バックボーン」が分かる本になります。

 もう、表紙からワニブックス的な80年代フレイバー満載でヤラれます・・・スチャダラの面々が影響(トラウマ)を受けた80~90年代の様々な文化を、雑談形式で語っているのですが、内容も濃すぎで素晴らしいですね!
 先ほどのジブさんの自伝は、ジブさんの歩いてきた道を語っていたのに対し、スチャの面々は、影響を受けた「文化」を語ることで結果的に「スチャダラパー」になった道を語っており、スチャダラパーを知るのには最適な本かもしれません。

 また、こういった80年代~90年代の文化を「スチャダラパー」というフィルターを通して分かりやすく解説をしている要素もあり、自伝という内容以上に、80年代~90年代の文化を知るための参考書のような役割も含まれているかと思います。
 
 そして、今回、日本語ラップの本として紹介したいのは、スチャダラパーというラップグループを知るための資料として紹介するのではなく・・・これもジブさんの本と同じで「Bボーイ・イズム」を知ることが出来る本として紹介をしたいからになります。

 それは「どんな文化でも壁を作らずに吸収し、自分のモノにしていく」になるかと思います。

 私自身の話で恐縮ですが、この点を高校生ぐらいにFrontで佐々木士郎さんが連載してたコラム「Bボーイ・イズム」で叩き込まれ、今に至っています・・・

 士郎さんの連載でも、士郎さんが「これはBだ!」と思ったモノや事柄を紹介してて、もはやHipHopやラップと全然関係ない事と中心に語られており・・・私自身はメチャクチャ影響を受けました!
 その影響を言葉に表すと「どんな文化でも壁を作らずに吸収し、自分のモノにしていく」になる訳ですが、これってHipHopの原点なんですよね・・・つまり、ジャンルに関係なくドラムブレイクが入っている曲を2枚使いしてビートを作るということで、HipHopの雑食性や自由さの根底を、士郎さんの連載を通して叩き込まれたのだと思います。

 これって凄い大切なことだと思います・・・今でも多少はあるかと思いますが、ある文化に属すると、その文化以外のことは触れてはイケないみたいな不文律があったりしますよね?

 まあ、若い世代に多いのですが、ある音楽のファンになったら、その音楽以外の音楽は聴かないみたいなことで、私が高校生だった90年代中頃においては、HipHop/日本語ラップが好きだった子たちが正にそうで・・・HipHopが好きなのに、HipHopの「根っこ」が理解されていない状況がありました。
 士郎さんの連載においては、その「根っこ」を教える為に、HipHopと関係のない漫画や映画を紹介し、私たちに「HipHopだけに凝り固まるじゃない!」という点を伝え、自分の視点で様々な文化を吸収していきなさい・・・そして掘りなさい・・・ということを教えてくれました・・・

 話をスチャの本に戻すと、正にこういった「文化を自分たちの視点で掘って、自分たちの自己表現に繋げている」のが分かる内容で、ジブさんとは別角度な「Bボーイ・イズム」の精神論を教えてくれる内容だと思います。
 直接的に日本語ラップのことや、日本語ラップに繋がる話は、ほとんどありません(笑)が、HipHopなり日本語ラップが、雑食性に帯びた音楽(文化)であることを教えてくれる内容で・・・日本語ラップの「根底」を理解する上では、是非読んで頂きたい本です!!



「ラップのことば」
2010年4月 P-Vine Books

DSC01372.jpg

 これは、日本語ラップファンなら、読んだことがある方が多いでしょうか? 続編も発刊されており、人気な本ですね!

 この本は、日本語ラップにおける「ラッパー」に焦点を当てた本で、そのラッパー達が吐き出す「リリック(歌詞)」についてをまとめた本で、かなり参考になる本です!
 
 内容的には、ライムスターの宇多丸さんやZeebraさんのようなベテランから、サイプレス上野さんやSeedaさんのような後発勢まで網羅しつつ、各々のラップを始めた経緯等のバイオ的な話から、リリックの書き方等・・・どうやって「日本語ラップが作られるか」が理解できる本だと思います。
 どのアーティストも、笑い話を交えつつも、かなり真剣に話しており、そのアーティストが吐き出す「ことば」の裏が分かる内容で、日本語ラップが好きな方なら一読する価値は十分にあります。

 なんか、先ほどのジブさんやスチャの本は、本来は「自伝」として紹介をしないとイケないのに別視点で紹介をしていましたが・・・ある意味、この本の方が「自伝」的かもしれません。

 それは、自伝という形式が、その人の「中身」を知るための方法であれば、こちらの本は、その中身において「ラップをすること」を第一前提にインタビューが行われているからです。

 この本の中ではZeebraさんも登場をしていますが、先ほどの自伝が「生き様」を紹介するのであれば、こちらでは「ラップをすること」を中心に語られており、両者ともそのアーティストの中身ではありますが、音楽という観点でいくと、やはり「ラップをすること」が重要で、その点を上手くまとめられていると思います。
 自伝的なバックグラウンドの話も多いですが、ラップの歌詞を作る方法、そしてその歌詞を作る心ゆきなど・・・そのアーティストの「中身」を上手く聞き出しており、そのラッパーが吐き出した「ことば」だけでは理解できない部分を分かりやすく書かれていると思います。

 まとめると、日本語ラップの曲やアーティストを理解する上で、かなり参考になる本だと思います・・・また、各アーティストのインタビューからは、それぞれの「Bボーイ・イズム」を知る事もでき、精神論を知る上でも十分機能しています!!



「ヒップホップ・ジャパン」
著者 陣野俊史 2003年10月 河出書房新社
 
DSC01377.jpg

 次は、先ほどの「ラップのことば」の流れで、そのアーティストの「中身」を知るためのインタビューを行った本を紹介しましょう・・・ただ、これは知られていない本だと思います?

 この本は、フランス文学の学者・大学講師である陣野俊史さんという方が、特定のラッパーが吐き出す「ラップ」に関心を持ち、その言葉がなぜ生まれたか等をインタビューをし、1冊にまとめた本で・・・日本語ラップの本というよりも、文化論や学術論としての「ことば」の観点で書かれた本になります。

 知られていないのは、まさにコレが理由で、本屋さんでの並びでいけば、音楽コーナーではなく、学術関係のコーナーにおかれてそうな内容なので、発刊当時のあまり話題になった記憶がありません・・・
 ただ、学術書と書くと「固い」イメージもありますが、著者の陣野さん自体、フランス文学の他にサッカーや音楽に造詣が深く、ラップであればフランスでのラップ文化についての本を出したり、もはや伝説のロックバンド「じゃがたら」の自伝を書くなどの活動をしており・・・割とソフトな内容で書かれていると思います。

 この本では、陣野さん自身が歌やラップで表現される「ことば」に学識的見地から興味をもち、誰にも比類しない歌詞を書くラッパー4名に対してロングインタビューを行っています。

 正直、言葉が悪いですが、学者さん視点なので人選と聴きどころがずれている部分もあり、ECDさんとShigo2さんの他に、ロックバンドのナンバーガール・Zazen Boysのボーカルである向井秀徳さんにもインタビューをしています・・・個人的には向井さん自体をチョイスしてる時点で「分かってるな~」と思いましたが・・・

 ただ、この本をお勧めする理由があります・・・なんと、インタビュー対象者の一人にByddha Brandの「Nipps」さんが入っています!!
 この事実だけで、日本語ラップファンは反応するでしょう・・・よくNippsをインタビューに引き込みましたね!

 陣野さんとしてはNippsが吐き出す特異的な歌詞が、どうやって生まれたのかを知りたかったようで・・・この本の骨子になる、ラップというリズム感を伴う歌詞において、一部の特異的で強烈な印象を伴う歌詞が「なぜ生まれるのか」を解析することが主眼点にするのであれば・・・Nippsの言葉は気になりますよね。
 我々の言葉でいえばイルマティックなライムを書かせたら最高峰なNippsですよ・・・川俣軍●がラップの歌詞になる人ですから・・・やっぱり学識見地としても気になる存在になのには、ちょっと笑ってしまいました(^^;)

 そして、Nippsとのインタビュー自体は、予想通りにあまり成功していない感じ(笑)で、陣野さんもNippsの謎を解き明かすことが出来なかったようです・・・というか、Nipps自身が、あまり考えずにラップをしていると思われるので、Nippsの中身を引き出すに引き出せなかったのかな??

 ただ、先ほどの「ラップのことば」と比べると、ラップの歌詞を「ポエトリー」と考え、その言葉を聞いた人に影響を与える行為と捉えている点は、興味深いかと思います・・・
 なんでしょう、他の世界の方が書いたからこそ、気づかなかった部分の指摘や、違った考え方が提示できるので、その意味では斬新かな~と思いました。

 ちなみに、素敵な話として、Nippsの人間発電所のバースは、本著によると15分ぐらいで書いたそうです・・・やっぱりスゲーな!!



「日本のヒップホップ - 文化グローバリゼーションの<現場>」
著者 イアン・コンドリー 2009年4月 NTT出版

DSC01370.jpg

 このセクションの最後は、学術書つながりで紹介をしたいと思います。

 この本は、イアン・コンドリーさんというアメリカ人の学者さんが書いた本で、元々は博士号申請論文として書かれたものを、増強して出版化されたもので・・・いわゆる「学術書」になると思います。

 イアンさん自体、専門は日本文化のようで、特にポップカルチャー、メディア、言語、グローバリゼーション等に焦点を当てているそうで・・・こういった単語を聞くと、学問の匂いがして敬遠しちゃいますよね・・・

 ただ、イアンさん自体、80年代半ばにNYでHipHopにハマり、研究の過程で日本に長く滞在し、日本語ラップのシーンも1994年ごろから追っているようで・・・先ほどの陣野さん以上に「HipHop」をしっかりと理解している側面があるので、こちらとしては入りやすい部分があると思います。
 実際に、この本が出た際、以前から親交があり、この本でも多大な協力をしたライムスターの宇多丸さんから「もっとも信頼に足る日本語ラップ研究が、ようやく日本語になった!」と謝辞が送られるぐらい、日本語ラップシーンに精通した上で書かれているので、内容的にも凄い濃い内容になっています。

 実際の内容としては、文化論のスタンスとして、HipHopという音楽がアメリカを離れ日本に辿りつき、それが独自の文化として開花していく流れを追いつつ、文化という存在のグローバリゼーション(国際化)を考える内容になっていると思います。

 正直、書かれている内容は、日本のHipHopを「学者さん視点の考察」で書いているので、結構難しい書き方をしており、読むのには結構苦労をすると思います。

 ただ、素晴らしいのは、しっかりと日本のHipHopシーンの現場に出向いたり、アーティストにしっかりと取材をしたり・・・90年代中頃から00年代初期ぐらいの日本のHipHopシーンを明確に捉えている点は素晴らしいと思います。
 この点は、歴史書の意義と重なる部分もあるのですが、当時のシーンを確実に捉えつつ、イイ意味での学者視点が働き、当時のシーンを詳細に分析しているのが素晴らしく・・・士郎さんが贈った謝辞は間違えがないな~と思いました。

 取材対象でいけば、ライムスターやDaboといったアーティスト勢から始まり、裏方的な人も捉えており、日本のHipHopシーンで女性として成功した例として「Rikoさん」をするなど、かなり詳細な取材をしており・・・当時を知る上での資料としてかなり価値があります。
 Rikoさんを例にとるのは失礼かもしれないですが、場合によってはかなりパーソナルな話まで聴いており・・・文化というモノが、参加している人たちのバックグラウンドまでも理解をしないと、明確に分析できないことを踏まえて書かれている点が、この本の詳細さの裏付けになるかと思います。

 日本語ラップ(日本のHipHop)を知る上では、端的な資料として役立つ他に、その優れた考察が、この文化の構造を理解する上で役立ち、大変参考になる本だと思います・・・





『最後に』

DSC01388.jpg

 いや~、今回に関しては「日本語ラップ」というカテゴリーで本を紹介をすることはスグに思いつき、在庫の中から本を探し、準備は割と早く出来ましたが・・・肝心な内容は文章を書きながら紹介の方向性を考えていったので、自転車操業的な作業をしていました・・・(^^;)
 でも、なんとか無事にまとめることが出来たかな?

 最後になりますが、今回の本の紹介とは異なることですが、書いておきたいことがあります。

 Dev Largeさんからは色々な影響を受けた中で、個人的には「掘る」というHipHop文化の基礎となる部分を教えてくれた存在だと思います。
 無論、掘ると言う行為は、Dev Largeさん以外の人からも間接的に教わってきたことですが、Dev Largeさんに関しては、かなり早い時期から掘ることの重要性を説いていた一人だと思います。

 私の中では「掘る」という行為は大きく分けると二つに分かれると考えています。

 一つはお目当てのモノを探し当てることで、言葉としては「掘り当てる」になると思います。
 
 そしてもう一つは、その文化の中で、誰もやっていないことを独自の視点と発想で作り上げていくことで、言葉としては「掘り進める」が近いかと思います。

 掘るという言葉は、一般的には一つ目の「掘り当てる」が中心で、私自身、そのことを楽しみながら日々を過ごしています。
 ただ、Dev Largeさん達のようなオリジナルの世代からは、ただ掘るのではなく、しっかりと目的意識を持って、誰もやってないことをクリエイトすることも大事である・・・そんな「掘りの精神」を同時に頂いていたと思います。

 二つ目の掘りについては、一番ピンポイントなのがサンプリングをしてトラックメイクをする人に対してのメッセージとしてDev Largeさんが結構言ってたことで、かなり早い時期から和物ネタを使ってた点など、人とは違うこと、そしてそれを具体化することの大切さを説いてたと思います。
 それは、実は「HipHop」の創造性や雑食性、そして自由さの中では「当たり前」のことで・・・自分が良いと思ったモノは、胸を張って作っていけばイイ・・・そんな意味かもしれません。

 今回、記事を書いてる途中で、この二つ目の掘りのことが頭に浮かび、今回の記事だったり、このブログ自体が正にそうなのかな~と思いました。

 特に、今回の記事、あまり注目されていない本が多く、下手したらブックオフの100円コーナーで簡単に抜ける本も多いと思います・・・それだけ、注目されていない本が中心になるかと思います。
 私としては、それらの本に書かれている「日本語ラップとして重要な点」を抜き出して紹介をしただけではありますが・・・Dev Largeさんが伝えたかった「本当の掘り」を実践出来たのかな?と思うと、なんか、やっと恩返しが出来たかな~とも思いました・・・

 掘りは掘りで返す・・・掘り師として最大級のお返しが出来たかな? Dev Largeさん、本当にありがとうございます!!


 

 ではでは、久しぶりのネタ企画でしたが、これで終わりです~
 昔みたく、割と短いスパンでネタ企画を出すことが出来なくなってしまいましたが、これからもタイミングをみて投下していきますね・・・決して、ネタが尽きてきた訳ではないので、気長にお待ちくださいね(^0^)






スポンサーサイト
コメント
この記事へのコメント
MTTさんの熱意が伝わる記事でした!

初めて知ったタイトルも多いです。
サ上さんの本は、ディスクガイドのつもりで買いましたが、予想の斜め上を行く内容でとても面白かったですね!

ジブさんの本も読みましたね。
実はオレが人生で初めて買ったhip hopがジブさんの2nd albumでして、当時のオレにとってはアイコンやメンターのような存在でした。
ジブさんの歴史を遡る事でrhyme animal、ソロ以前のキングギドラ、そしてさんピンに辿り着きました。その流れでライムスターやブッダも知りました。
個人的にはhip hopのマッチョイズムやボーストをもっとも自然に体現できる人だと思っています。
ご存知の通り、ジブさんはKRS oneやchuck Dをリアルタイムで(確か現地で)体験している人で、そこがポイントの一つなのかなと思ったりします。

オレも一時は日本語ラップは結構ハマってたので、今回の記事は興味深く読めました!
文化を掘り、文章として遺す・・・素晴らしいと思います(^o^)v
誰かがやらないと!

PS: MUROさん、最高でした!長くなるので、報告は別の機会に。
ただ、1つだけ・・・地元のDJ陣がブッダのクラシックをけっこうプレイしていてグッときましたよ!
2015/05/17(日) 19:06:47 | URL | kyk #-[ 編集]
自分にとって初めての日本語ラップに触れた本は、bounceでした。レビューや、特集が載ってたと思います。自分は、そこで、サイプレス上野とロベルト吉野の見た目を知り、初めて会ったときに、その中のスチャダラパーとNO.1 SOUL SETとの広告にサインしてもらいました。いきなり、bounce出してくるなんて、ヤバいねと言われた覚えがあります。その前には、ステージに上げられて、観客の前で、ステージで使った新聞のピンク記事を読む羽目になったりしました。妙な経験でした。そのおかげで、話しかけやすくはなりましたが。
2015/05/17(日) 19:51:25 | URL | baba #-[ 編集]
Re: 連名で失礼します
>kykさん

コメント、ありがとうございます!

今回の記事、本文では書かなかったのですが、私としては「日本語ラップに対する恩返し」みたいな意味があり、書く内容以上に、責任感みたいなプレッシャーが大きく、どうまとまるかな~と心配はしてましたが・・・なんとかまとまってくれてよかったです。

日本語ラップって、どの音楽もそうでしょうが、好きになった時期がそれぞれ異なるので、どこかに「一本柱」が欲しい(=それが、本等でまとめるという意味なのかな?)と思っていました。
それこそ、kykさんもそうでしょうが、HouseやGarageのラインでLarryがいるように、何か中心になる存在が欲しかったんですね・・・
私の記事は、決して中心になるとは思いませんが、そういった動きが生まれればいいな~と思いました。

そして、MUROさんの件、かなり気になっていましたよ(^0^)
是非、時間のある時にお聞かせくださいね!!

ではでは、今後とも、宜しくお願いいたします!!
(追伸)今年も、大きな仕事が月末にあるので、Body&Soulはキャンセルでした・・・というか、野外でやる限り、コンクリの上で踊らないとイケず、膝が壊れそうになるので行けないよ・・・そろそろ、屋内でオールナイトでやって欲しいです・・・でも、そうすると、お客さんが集まらないんでしょうね・・・



>babaさん

コメント、ありがとうございます!!
もー、相変わらず、くそ熱いことしてますね・・・サ上氏の話は最高ですね!!
今回の本文でも、これに近い話を書きましたが、HipHopのいい所は、演者と聴く側が割とフラットな位置にいることで、それによって「何かが生まれる」ことがあると思います。
それこそ、babaさんの話はイイですね・・・また、サ上さんの対応もいいな・・・かなりグッときました!

やっぱり、机上の理論ではなく、実際に行動をすること(行動を起こすこと)は大切ですね・・・
私自身は、あまり行動的なこと(?)をしていませんが、ブログを通しては、ヤリつづけたいと思います・・・

ではでは、今後とも宜しくお願いいたします!




2015/05/17(日) 21:17:18 | URL | mixtapetroopers #EK3m6DHM[ 編集]
再コメント失礼します!
一応、報告を

Muroさんは7インチオンリーのセットでした。と言うわけで、とにかく展開が速い!
実はクラブ側の粋な(?)計らいで、プロジェクターでmuroさんの手もとを写していたんですが、超絶でした!(>_<)
オレ、あんなに速くタンテとミキサーを操作する人を初めて見ました。

全編通して2枚使いが炸裂していました!
ブレイクを引き伸ばすのは当然として、曲の盛り上がる部分を執拗にリピートするんですよ!
圧巻だったのが、jackson sistersのI believe in miraclesで、ボーカルに入る直前のあのフレーズを延々と繰り返すんですよ!
マジで凄かったし、盛り上がった!

あとは、元ネタつなぎ ですね!
例を挙げれば、ビギーのhipnotizeからherb alpertのriseとかやってましたが・・・ネタ掛けのパイオニアだけあって説得力やかっこよさが違いましたね(^o^)v
さすがキングって感じです。

前半はdisco breaksみたいなスタイルで、踊らせる感じだったんですが、後半はみんなが好きなハッピーな曲で場を一つにして歌わせる感じでした♪
ジャンルもrap、njs、disco、P funk、houseその他と、幅広かったです。
2時間そこそこのセットでしたが、前述の通り、展開が速く、かなり多くの曲を、しかもオイシイ部分だけをプレイしてたので、充実感や密度がハンパ無かったです!

最後に、いわゆるメッセージプレイ的なのも結構多く、saturday つながりでデラソウルからテルマ ヒューストン(分かるでしょう)とか、いろいろありました。ラストの曲がesther williamsのlast night changed it allってのが個人的にウルッときましたね~

以上報告です!長文失礼しました。
やっぱりmuroさんはキングでした!
2015/05/18(月) 18:41:43 | URL | kyk #-[ 編集]
Re: 再コメント失礼します!
>kykさん

コメント(報告?)、ありがとうございます!

最近、MUROさんの現場のプレイはあまり聴く機会がないのでアレですが、そのセットは強力ですね!!
MUROさん、なんか45をプレイし始めるようになって、いわゆる「クラシック」な曲をプレイし直すようになったように思えます・・・凄い、MUROさんの現場にいってた訳ではないですが、MUROさんのクラシックセット(それもワンマンロングセットで!)でヤラれた身分としては、今回、kykさんが楽しんだプレイは絶対にツボですね(^0^)

私の方は、今年はなるべくクラブに行って踊りたい・・・みたいな目標があるので、出来る限り頑張りたいと思います・・・
夏は異様に汗をかく(当たり前か?)時期なので、体力勝負もありますが、頑張りたいと思います。

ではでは、今後とも宜しくお願いいたします!!


2015/05/18(月) 23:49:08 | URL | mixtapetroopers #EK3m6DHM[ 編集]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック