いやいや、この作品は「今年の夏」に紹介したかった作品です・・・ギリギリ間に合った(^^;)
ブログを長く読んで頂いる方であれば「遂にですね!」な作品紹介です・・・ただ、そんなに深くはないですよ~
今回は、我らのMUROさんが1997年の夏ごろにリリースしたコンピレーション作品を紹介いたします!
先に指摘しておくと、この作品は
「DJミックス」はしてなく、いわゆる「選曲」だけの作品 になりますが、MUROさんの選曲の良さ・・・特に
「Diggin' Ice」的な世界観やグルーブ が感じられ、かなり良い作品になっています!
では、初めに、この作品がリリースされた経緯を紹介しましょう。
この作品は、日本のHipHopシーンを支え、そしてシーンの拡大に大きく寄与した
音楽雑誌「Front(フロント)」 の企画で作られたと言われる作品です。
当時を知る方だと「懐かしいな~」と思うかと思いますが、シリーズ化もされ、当時としては結構人気があった作品になります。
今となっては、この
音楽雑誌「Front(フロント)」 についても指摘をした方がよさそうですね・・・
この音楽雑誌は、1994年より刊行が始まった雑誌で、おもに
HipHopやR&Bといった「(広い意味での)ブラックミュージック」 を取り扱った雑誌で、
日本においてHipHopやR&Bが大きく広まった「きっかけ」を作った雑誌 になります。
それこそ、インターネットもなかった時代なので、音楽の情報を得ようと思うと専門雑誌の存在は大変大きいわけですが、マイナーだったHipHopやR&Bなどの情報を多角的に、かつFrontにしかない独自の視点で取り上げ、
読者に対して情報の提供と教育を同時に行っていた貴重な雑誌 だったと思います。
特に、90年代中盤~00年代前半は、徐々にHipHopやR&Bが人気を得て、新たに興味を持ったリスナーが増える中、その音楽の「本質」を分かりやすく紹介し続けた点は大きく・・・
日本だけの「Bボーイ」「Bガール」を育てた 点は大変大きいですね!
私自身、このFrontには大変お世話になり、今の自分がいるのは「Front」があったからだと思います・・・
高校生~大学生の頃は、むさぼるように読み続け、HipHopなりR&Bという音楽が心底好きになった他に、この音楽や文化に無くてはならない
「心持ち(こころもち)」 を多く学びました・・・
その心持ちは、なんとも説明しづらい話ではありますが、それこそ
「掘る」 という行為/姿勢がそうだし・・・なによりも、この雑誌の根幹の一人でもある「佐々木士郎(Rhymesterの宇多丸師匠)」さんが提唱した
「Bボーイ魂(イズム)」という考え/姿勢 が重要でしょうね・・・
う~ん、ボーイが「カタカナ」であることがポイントですが、これも説明しづらいですね・・・つまるところ
「決して譲れないぜこの美学、何物にも媚びず己を磨く」 の精神であり・・・私を含め、多くの方が影響を受けたと思います!!
なお、Frontについては、かなり前に以下の記事で、私の熱い思いと共に紹介をしましたので、ご参考にどうぞ!
●
HipHop/R&B専門誌「Front/Blast」について (2009年10月)
●
HipHop/R&B専門誌「Front/Blast」 バックナンバーリスト (2009年10月)
そんなFrontですが、HipHopとR&Bといった「現代的な音楽」を取り扱っていましたが・・・HipHopという音楽が
「サンプリング」という「過去の音楽」を再構築する手法 の元で出来上がった音楽なので、その
「過去の音楽」 についても、かなり詳しく紹介がありました。
その過去の音楽は、それこそサンプリング元となったSoulやFunk、RareGrooveやJazzだったり、HipHopのDJ達がプレイし続ける過去の名曲だったり・・・なかなか分かりづらい内容を詳細に教えてくれ、リスナーに対して有益な知識を与えてくれたと思います。
特に、その過去の音楽が
「アナログ・レコード」 を基準にしている部分があるので、かなり分かりづらい背景がある中、凄い分かりやすくまとめていたのが印象的で・・・このアナログ的な部分は、かなりの方が影響を受けたと思います。
それこそ、写真に上げたような
「ディスクガイド」 はFrontの代名詞で、有名DJ達の紹介がフレッシュで、コレで勉強をし、このリストを片手にレコ屋を回った方も多いはずです・・・
写真は、今回の主役であるMUROさんのリスト(Old School R&B特集)ですが、こんな小さな写真のレコを食い入るように見て、ジャケを覚え、そのレコを探しに行きましたね・・・
なお、脱線しますが、考えてみれば、
私のブログの写真が見づらい(小さい)い のは、このFrontとかでの掲載方法があったからかもしれないですね・・・
Frontでレコ写が小さいのは、雑誌の掲載制約があったのもあるし、何よりも
「掘り師マナー(=簡単には紹介しない)」 があってなんですよね・・・そう、ちゃんと
「自分の手を汚して掘れよ!」という心持ち が含まれているのです・・・ご留意くださいね!
話を戻しましょう・・・
例示したように、Frontはこういった過去の音楽にも強かった訳ですが、その流れで企画されたのが今回の作品だと思います。
イメージとしては、そういった過去の音楽は
当時としては簡単に触れることができなかったので、読者に簡単に触れてもらうために、そういった過去の音楽の「CD」を作った・・・ という感じで作られたようです。
企画自体は、どうやらFrontで活躍をしてた某ライターさんが、このCDの発売元のディレクターもしていたようで、それで実現をしたようですね・・・割と雑誌のタイトルだけ借りて作っただけの作品もある中、この作品は、しっかりと「意味」があって作られたのかな~と思います。
また、この作品自体、結構人気があり、MUROさんは第2弾を担当し、その後、JinさんやDevLargeさん&KZAさんなどが担当し、割と売れていた作品だったと思います。
このCDが出ていた97年~98年ごろは、私自身は知識が追い付かず、こういった「ネタ元」まではフォローしていなかったですが、多くの方は、こういったネタ元などの古い曲を知りたがっていたので、かなり需要があったのだと思います・・・
特に、これは今回聴いてみて感じたのですが、ちゃんとHipHopの「サンプリングの土台」という意義も踏襲しつつ、その担当したDJの切り口も入っているので・・・
聴いてて勉強になるのと、何よりも「聴いてて楽しめる」部分 があり・・・結果的に「内容が良いから売れた」部分があったと思います!
では、前振りが長くなりましたが、MUROさんの作品の紹介です!!
作品としては、DJミックスはされていないので、普通の「コンピレーション作品」になるのですが・・・聴けば聴くほど、
MUROさんの「選曲」が生かされた構成 になっており・・・
もはや「DJミックス」と言っても過言ではない作品 になっています。
まず、作品としては、「Fantasy」「Prestige」「Milestone」といった、Jazz~JazzFunk、RareGroove、Soul、Disco、R&Bといった要素を含むレーベルの70年代に残された曲を利用し、
MUROさんにしかできない「夏選曲」 、つまり
「Diggin' Ice」の世界観 で選曲され、大変気持ちイイ内容になっています!
それこそ、MUROさんが得意とする
「聴いてて涼しくなる選曲」 を、DJミックスはないものの、しっかりと順番を考えて選曲されており・・・かなり「癒される」内容です!
実際に選曲された曲も紹介しておくと、私のレコがFantasy系に偏り、PrestigeのJazz方面が弱いのは恐縮ですが、全体的に
「アルバムの隠れた1曲」 を選曲してきて・・・まず、流石の手腕にヤラれます!
序盤では
「Pleasure / Happiness」 や
「Midnight Star / Follow The Path」 などを選曲しており、この辺のチョイスはMUROさんならではの「深さ」が伺えます。
どうしても、リスナーとしては過去の曲であってもシングル曲などに向かいがちで、こういったアルバムに隠れている曲はどうしてもスルーしてしまいます・・・その点において、MUROさんは、こういう曲を探し、かつ、素敵にプレイするのが素晴らしいですね・・・
なんでしょう、これはレコードを掘ってないと分からないですが、MUROさんのプレイを通してその曲を聴くと「ジャケは知ってるけど、そんなカッコいい曲が入っているのが知らなかった」となるんですね・・・やっぱり
MUROさんの「耳」は昔からブレてなかった ですね!
また、
選曲の流れ も良く、気付いたら何度も聴いてしまいます・・・
導入部では、割とメローなSoulっぽい曲をプレイしつつ、段々とJazz~JazzFunkの中でメローな要素を含む曲をプレイして、グルーブを引き延ばしていきます・・・
そして、中盤から後半にかかる部分では、JazzとSoul~Garageの「かけ橋」として、その当時はJazz系レーベルであるPrestigeに属していたPatrice Rushenの
「Patrice Rushen / Let Your Heart Be Free」 を選曲し、Soul~Garageラインへ軌道変更して行きます・・・
その上で、これもアルバムの隠れた一曲な
「Side Effect / Preivate World」 などの明るい曲をプレイし始め、気持ちよく終わって行きます・・・
うん、聴けば聴くほど
「Diggin' Ice」 なんですよね!
時期的にも、MUROさんがテープで「Diggin' Ice」を作ってたころなので、そういった点は大いに意識して作ったのだと思いますが、
選曲の順番だけで「Diggin' Ice」を表現してくる点は流石 です!
あんまり上手くまとまりませんでしたが、これも立派な「MURO作品」であることは確かです!
今回、夏の間にチョクチョク聴いていましたが、もー、天然のクーラーでした・・・凄く気持ちいいです(^0^)
今でも中古であれば、チョコチョコ探せば見つかるCDだと思いますので、気になる方は探して聴いてみてくださいね!!
<Release Date>
Artists / Title : DJ MURO 「Front Presents diggin' from the vaults - Muro's Summer Vibes」
Genre : Jazz、JazzFunk、RareGroove、Soul、Disco、R&B
Release : 1997年7月
Lebel : ビクターエンタテイメント VICP-60059
Notice : 関連作品について
今回の作品紹介は、このテープが入手できたから紹介をした流れがあります・・・
このテープは、
このCD作品がリリースされた際に、タワーレコードなどの大手CDショップ限定で、CD購入者へ応募ハガキが渡され、そのハガキをレコード会社に応募した人の中から抽選で当たった人に配られた・・・ とされるテープになります。
まあ、いわゆるノベルティーになるのですが、なぜ、これを紹介したかというと・・・
このノベルティーテープは「MUROさんのDJミックス」が施された内容になっている からです!!
DJミックスとしては、CDの収録曲をラフに選曲/ミックスしたような感じで、A面がFantasy寄りのミッド~メローな選曲、B面がPrestige寄りのJazzっぽいメローな選曲になっています。
恐らくですが、MUROさんとしては、Diggin' Iceを作ってた時期なので、最初はDJミックスを想定したCDを作ろうと思い、テストのような形でDJミックスの音源を作ったんでしょうね・・・
ただ、それが結果的に採用されなかったので、プロモのプレゼント用という形で残したのかな・・・真相は分かりませんが、そんな形で作られたのだと思います。
なお、このテープの配布数(100本?)や配布された経緯、そして何よりもMUROさんのミックスであることを考えると、
日本の「ミックステープ」のレアリティーとしては最高峰のテープ だと思います。
この点は、MUROさんとしては、このテープがMUROさんが心をこめて作った訳ではないので、不本意な部分もあると承知しています・・・
ただ、テープ馬鹿として、このテープに出会えたことは「嬉しい」の一言です・・・一生大事にします!!
※入手した時の話は
「この記事の下の方(独り言)」 で紹介しました・・・相当苦労して出会いました(^^;)
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コメント
松野
死ぬまでに聴いてみたいです。。。
あ〜アースのミックスも。。
良い記事をいつもありがとうございます!
2016/09/07 URL 編集
mixtapetroopers
コメント、ありがとうございます!
テープは、MUROファンなら聴きたいと思いますが、個人的にはトータルで考えるとCD盤の方が好きでした(^0^)
う~ん、一生に一度とは言い切れないですが、10年に一度級な出現率かと思いますよ・・・もし、探すのであれば頑張ってくださいね!
なお、探すのなら、アースの方が絶対にヤバいですよ(^0^)
ではでは、今後ともよろしくお願いいたします。
2016/09/07 URL 編集